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2JZ-GTE+G40タービンでオーバー1000馬力を達成
扱いやすさを徹底重視した各部のメイキング
D1グランプリ開幕戦(富士)で、GR86旋風が吹き荒れた。GR86ベースのニューマシンを投入した川畑選手&藤野選手が、いきなり単走優勝(藤野選手)、追走ワンスリーフィニッシュ(優勝:川畑選手/3位:藤野選手)という快挙を成し遂げたのである。
GR86でのウェット走行は富士戦が初だったにも関わらず、素晴らしい走りを連発していた両選手。車両製作は藤野選手が経営する“ウィステリア”が担当しており、レーシングパーツを多用するのではなく、基本に忠実で、必要にして最小限のマシンメイクに注力。そう、トラブルフリーで扱いやすい特性を求めて開発されたのが、TEAM TOYO TIRES DRIFT GR86なのだ。
「GR86は先代86よりも乗りやすい。このベースの良さを活かして作れば戦闘力のあるマシンになると思ったんです」と藤野選手。
エクステリアは、どちらの車両もパンデムのワイドボディキットにウィステリアのボンネット&ドアパネル&トランクという構成。違いはゼッケンや各所のスポンサーステッカーのみだ。
パワートレインの造作はドゥーラックが担当。他に漏れず、HKSの3.4Lキャパシティアップグレードキットが組み込まれた2JZ-GTEに載せ替えられている。ラジエターはリヤに移設されているため、インタークーラーへのパイピングは最短経路。コア類は全てHPI製だ。
タービンはGCGの新作G40-1150。HKSのF-CON Vプロにて制御され、設定ブースト圧は1.4キロ。オーバー1000psを楽に狙えるポテンシャルはあるものの「レスポンスが欲しいので実際にはそこまで使ってない」と、900ps程度で常用しているそうだ。
駆動系は、ORCの1000Fクラッチ→サムソナスの6速シーケンシャルドグミッション→SIKKYのクイックチェンジデフという構成だ。電動ファンの手前に確認できるタンクはラジエター冷却用のウォータースプレー。スタビライザーはクイックチェンジデフ装着車用に開発したウィステリアのオリジナル品だ。
車高調はウィステリアのキックブルー(F11kg/mm R6kg/mm)で、アームはワイズファブの新作をフル投入。これにより、驚異的な切れ角を実現している。スクラブ半径を最適化させるためのアッパーマウントも、ワイズファブのパーツとのこと。
アームキットの投入によって、ステアリングラックはフロントサスメンバーの前方へと移設。逆関節症状(タイロッドとナックルが一直線になってステアリングが戻らなくなる現象)の防止策まで盛り込まれた、ドリフトに特化したレイアウトと言えるだろう。
ブレーキはウィステリアのロゴが入ったウィンマックス製のモノブロックキャリパーを軸に構築。フロントは4ポット、リヤは油圧サイドブレーキ用に独立した経路を持つツインキャリパー仕様としている。ローターは前後370mm仕様だ。
ホイールはグラムライツ57CR(F9.5J+38 R10.5J+12)で、タイヤはトーヨータイヤのプロクセスR888R(F255/35-18 R286/35-19)を組み合わせる。「もっと軽くできるけど、レギュレーション的に285幅のタイヤが履けなくなるから軽量化はほどほどにしている」と、車重は1240kgに留められている。
室内は競技仕様として作り込まれているものの、純正のダッシュボードは残されている。ペダルは「レーシングカーに憧れてマスターバックレスのオルガン式を採用していた時期もありますが、普通の吊り下げ式が扱いやすい」との理由から、あえてノーマルとしている。
ロールケージはサイトウロールケージのカスタムメイド。室内もほぼ同じパーツ構成の2台だが、藤野号はレナウンの330mm、川畑号はトラストの340mmと、好みのステアリングハンドルを使っているのが相違点だ。
なお、メーターはAIM、サイドブレーキレバーはウィルウッド、シートはブリッドのZERO、レーシングハーネスはHPI製を装着している。
レースでは、準決勝で藤野選手vs川畑選手のGR86対決が実現。加速区間でやや離された藤野選手が破れる結果となったが、ギャラリーコーナーとなるヘアピンでは息の合った華麗なハイスピードツインドリフトを披露。詰めかけた観客を沸かせたのだ。
開幕戦を終え、単走ポイントを加算したシリーズランキングは、川畑選手が首位で藤野選手が2位という状況。このままGR86のポテンシャルを活かしてシリーズを独走するのか、6月に開催される奥伊吹戦に注目したいところだ。
TEXT&PHOTO:Daisuke YAMAMOTO(山本 大介)
【関連サイト】
D1公式ウェブサイト
https://d1gp.co.jp