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タイムを上げる鍵はコーナリングフォースとトラクション性能
FR化で得られた高い回頭性能が大きな武器に!
筑波サーキットを中心に、激しいチューニング合戦が繰り広げられているタイムアタックウォーズ。ほぼ改造無制限ということもあり、各アタックマシンのメイキングは信じられない速度で進化を続けている。
その中で、第二世代GT-R最速のタイムをマークしているのが今回紹介するBNR32(seyamaxADMIX・GTR)だ。元々、ドリフト仕様だったという経緯もあるが、GT-Rの代名詞とも言うべきアテーサE-TS(4WD機構)をキャンセルし、FR駆動で戦い続けているのが大きなポイントだ。
このFR化は想像以上に効果的だったようで、フロント先端にあるデフを撤去することで前後重量バランスを改善し、さらに車重も1120kgまで削り込むことに成功。ライバルになる4WDのGT−Rはどんなに軽量化を進めても1250kg前後で行き詰まる。しかも、その大部分がフロントオーバーハング周辺の軽量化なので、回頭性を中心とした運動性が大幅に高められたそうだ。
エンジンは、2021年シーズン前に海外製のアルミブロックを利用したRB26改2.8L仕様から、純正の鋳鉄ブロックにBCのストローカーキットを組み合わせた2.9L仕様へとシフト。そこにGTX3584RSタービンをセットして全域トルク型の特性を手にしている。
制御系はLINKフルコン(サンダー)を使用し、追加メーターはモーテックC187を組み合わせる。なお、純正ダッシュボードなど内装の重量物を取り除き、カーボンパネルで成型することで車重は1120kgまでシェイプ。ミッションはホリンジャーのシーケンシャルドグだ。
足回りはアドミクスオリジナルのダンパーをベースに構築。アーム類やアライメントなども、FR化に合わせてアドミクスで最適化されている。
タイヤは295サイズのアドバンA050から335サイズのフュージャーH7へと変更。幅が40mmも太くなるため、それに伴ってフェンダーのデザインもリメイク済みだ。タイヤの性能が上がったことによって、トラクション性能、コーナリング性能ともに大きく高まっているという。
ブレーキはフロントにAPレーシングの6ポッド、リヤに4ポッドを装着。ワイドボディに合わせてスペーサーを装着して対応している。
また、これまで部分的に行なっていた空力チューンだったが、2019年シーズン前に総仕上げとしてリヤディフューザー形状などを変更し、フロアもフラットボトム化を敢行。当初は空力バランスの最適化に相当苦労したそうだが、ボルテックス中島代表とともに煮詰めていった結果、現在は“大いなる武器”になっているそうだ。
軽量化による回頭性の改善に、タイヤの性能アップやサスの仕様変更によるトラクション性能のアップなど、FR化との歯車が見事に噛み合った2019〜2022年シーズン。現在のベストタイムは53秒915。来シーズンに向けてはタービン交換やNOSの導入なども含め、さらなるアップデートを検討しているというから楽しみだ。
REPORT:渡辺大輔