「ジェットエンジンに4ターボ・・・」かつてチューニング業界を騒がせた魔改造シルビアを振り返る

3.1L+4ターボ仕様で1000馬力を突破!

おかしい。明らかにフォルムがおかしい。エンジンルームもおかしい。大型タービンが沢山…。このシルビアは栃木県のチューニングショップ“キャロラインレーシング”の渡辺拓郎代表が2015年に作り上げた超大作、男なら誰もが憧れるであろうオーバー1000馬力の夢を、信じられない手法で成し遂げてしまった渾身のスーパーチューンドなのである。(1&2JZ Technical Handbook and DVD Vol.2より抜粋)

インジェクター総量は7500cc・・・だと!?

この「CIRCUIT &DREAMS CLR SILVIA」と名付けられた魔改造シルビアのコア技術は、やはりターボレイアウトだろう。3.1L仕様のフルチューン2JZにT88-34DとTD06-17Cをそれぞれ2機ずつマウント、つまりは4ターボ仕様なのである!

分かりやすく解説すると、これは3気筒ごとの直列ツインターボで、それぞれの排気はEXマニ→TD06→T88、吸気はT88→TD06→インタークーラー…という経路を辿る。大きいタービンから小さいタービンに吸気されることを考えると、高回転で詰まるのでは!? と思ってしまうが、このシステムは理屈的にそうはならない。

T88の過給が立ち上がってきてゼロブーストに達すると、TD06をアシストするようになる。つまり1次排圧が下がる=高回転域でブースト圧がタレにくくなる理論なのだ。とはいえ、それはあくまで机上の空論にすぎず、実際に6発の直列4ターボを製作したチューナーなどこの世にいない(?)ため、走らせるまでフィーリングやパワー感は未知数だったわけだが…。

改めて細部をチェックしていく。心臓部の2JZは、ワイセコの87φ鍛造ピストン&タイタンコンロッドで3.1L化した腰下に、ナプレックのハイレスポンスレースヘッドを組み合わせたフルチューンスペックとなる。

燃料系も凄まじく、メイン650cc×6+サブ600cc×6のツインインジェクションとし、それぞれのインジェクターを2基のモーテックM4で独立制御している。

ブースト圧はローブースト領域をプロフェックBで、2.5キロのハイブーストを機械式のVVCでそれぞれ制御。最高出力は推定1200ps。ミッションは暫定でJZA80のゲトラグ6速を組む。

インタークーラー&ラジエターにはN2O噴射用のシャワー式ノズルを設置。噴射制御はモーテックM4が担い、吸気温度や水温、速度など細かな条件が設定されている。NOSでコアを凍らせるというわけだが、これはドラッグマシンの発想だ。

インテークパイプに確認できるノズルは、ウォーターメタノールインジェクション(水50:メタノール50)の噴射口。効果はほぼNOSと同等なのだが、NOSよりも安価に導入することが可能とのこと。

複雑なレイアウトのEXマニはもちろんキャロラインレーシングのワンオフメイド。あまりに重いため(タービン付きだと一人では持てないレベル…)、様々な箇所に当て板補強&ダンパーが設けられている。

重量配分を考慮し、ラジエターはリヤに設置。大型のFRPリヤカウルに設けられた4つのインレットダクトからフレッシュエアを取り込み、コア背面の電動ファン(引き抜き用)で後方へと強制排出する仕組みだ。

マフラーは特注のメイン114φモデル。通常はリヤ2本出しのテールから排気されるが、高回転領域になると中間に設けられたバルブが開いてサイド出しマフラーも解放される。

25kgのダンベルを使ったトラクションシステムも見どころの一つ。設置位置は3段階の調整が可能で、その位置によって簡易的にトラクションを変化させることができる。恐ろしいアイディアである。

車高調はファンクションベースのオリジナルでスプリングはスウィフト(F18kg/mm R6kg/mm)。ナックルとロアアームはどちらもキャロラインレーシングスペシャルだ。ブレーキはグリップ時代からの名残で、前後にアルコンのキットを組んでいる。

大パワーを想定し、リヤには13JのワークエキップにATRスポーツの305/30-18を装着。ちなみにフロントタイヤはヴェンタスR-3Sの265/35-18だ。

追加メーターがズラリと並ぶレーシーなインテリア。ブーストメーターは工業用の機械式だ。ペダル類はチルトンのオルガン式がセットされる。リヤにはNOSのタンクとウォーターメタノール用のタンクが設置され、さらにオリジナルの燃料ラインが通る。

この「CIRCUIT &DREAMS CLR SILVIA」は車両完成後も継続的にアップデートを続け、最終的にはラジコンヘリ用のジェットエンジンを天に向けて噴射するという、独自のジェットトラクションシステムまで搭載。全てが規格外。キャロラインレーシングというチューニングショップのコンセプトや考え方がよく分かるデモカーと言える。

【関連リンク】
キャロラインレーシング
https://www.facebook.com/takuro.clr

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