目次
スタリオン2600GSR-VRに一目惚れ!
自らの手で組み上げた独創的エンジンも見どころ
1982年にデビューしたスタリオンは、普通車としては三菱最後のFRスポーツモデル。車名は英語の“種馬”ではなく、“STAR(星)”とギリシャ神話の英雄ヘラクレスの愛馬“ARION”を合わせた造語だったのだ。
そんなスタリオンの日本一のマニアとして、同好の士はもちろん、今やディーラーやショップからも頼られる存在となっているのが布田万寿夫さん。スタリオンにはまった経緯は高校時代にもらったカタログだそうで、「VRのブリスターフェンダーに一目惚れでした。フロントだけ、リヤだけカッコ良いクルマは他にもありますが、どの角度から見ても完璧なスタイルは僕にとってこのスタリオンVRしかないんですよね」と言う。
最初に乗ったのは23歳の時に友人から譲り受けた2.0Lモデル。ところが、これが何とも非力だったため、パワーを求めて独学でチューニングを開始。ブーストアップやタービン交換などを経て、ついにはエンジンからドライブトレイン、サスペンション、ブレーキまで、全てを自らの手でメイキングするようになってしまったというから恐れ入る。
布田さんの秘密基地は、10年前に自宅建設用に購入した土地に元々あったプレハブ。エンジンパーツや工具がずらりと並び、内部の様子は完全にチューニングショップだ。
布田さんが現在所有しているのは、実動の2.0Lと2.6LのGSR-VRの他に、GX改ワイドボディを製作中。部品調達も兼ねたベース車として、3台のスタリオンをストックしている。
ワイドボディの2000GSR-VR(A184A)は、1987年に限定50台で発売し、実際には約70台が生産されたレアモデル。純正搭載のG63B(170ps)に代わり搭載されているのは、ギャランVR-4のDOHCヘッドや大型タービンを装着した365ps仕様。コンディションは抜群だ。
工場で製作が進められるスタリオンは、初期の1年しか生産されなかった幻のNAグレード2000GXがベース。110ps/16.7kgmのG63Bキャブ仕様を搭載し、リヤサスが4リンクリジッド式となる珍種だ。ボディは2600GSR-VRの部品取り(!!)からフェンダーを移植してワイド化を実施。エンジンはG63B改4G63ヘッドのソレックスツインキャブ仕様を予定しているそうな。
また、布田さんにとってスタリオンと並ぶ魅力的な存在が、同じくFRレイアウトのA17系のランサーだ。所有車の中でも古株なのが、この1986年型後期A175A。こちらのエンジンも布田さんならではのノウハウが満載で、クランク角センサーを加工して4バルブヘッドを流用。サージタンクはFE700系キャンター用で、タービンもTD06とTF06ハイブリッドのトラック用を使っている。
もう一台の黒いランタボは、ドイツ仕様(左ハンドル)のA176Aがベース。シングルカムの4G63エンジンを搭載する国内では未設定の2.0Lターボモデルで、国際ラリー参戦用のベースとして逆輸入された53台のうちの1台だという。
まだ製作中の段階だが、軽自動車の電動パワステやエアコンも装備の快適仕様で、エンジンはVR-4ヘッドにTD06改タービン仕様を予定しているそうだ。
AMGロゴが輝くエンジンは、知り合いから製作を依頼されたギャランAMGの自然吸気4G63。注目すべきは装着されている4-1タイプのEXマニホールドで、なんとトラックのキャンター用! こんなぶっ飛びの流用も布田さんの得意技だ。
「作ったエンジンを載せるボディを集めるところからスタートして、気がついたらこんなことになっちゃいました(笑)」とは布田さん。現在製作中のマシンが完成した暁には、改めて詳細をレポートさせてもらうつもりなので、期待していてほしい。
REPORT:川崎英俊