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ハイレスポンスかつ操作性を重視した老舗の調律術
各部を尖らせないマインズ流のセットアップ
“マインズ”のマシンコンセプトは明快だ。シンプルに基本性能を向上させ、オールマイティに使いやすいこと。もちろんスタイリッシュさは欠かせない。それらはマインズチューンドの矜持に近く、この2011年モデルのR35GT-Rにも色濃く反映されている。
カーボンカバーに覆われ、部分的に結晶塗装が施されたVR38DETTエンジン内部は軽量の鍛造ピストンと高価なチタンコンロッドを組み合わせ、ハイリフトのカム(IN256度10.2mmリフト/EX264度10.5mmリフト)で滑らかでパワフルな出力特性を描く。タービンもオリジナルのハイブリッドだ。
なお、どちらかというとセッティングはピークパワーよりもピックアップの良さを追求しており、最高出力は最大ブースト1.5キロ時に750psを発揮する。
吸気系は、スロットル径を2.5mm拡大したハイフロースロットルやチタン製のサクションパイプ&インタークーラーパイプを投入している。
排気系は、高回転でのブーストダウン対策に効果的なアウトレットと触媒ストレートを核としたSpec-X6.0キットに、海外向けのフルパワー設計としているレーシングコンペティションマフラーの組み合わせ。甲高くて乾いたエキゾーストサウンドがドライバーを昂ぶらせてくれる。
サスペンションには、レッドを基調にした別タンク式のエスタフルスペックIIIをインストール。減衰特性を走りに合わせて3WAYで細かくセットアップすることが可能なハイエンド車高調だ。スプリングには定評のあるハイパコ(F19.65kg/mm R12.50kg/mm)を組み合わせて動く足を追求した。
ナッパレザーとアルカンターラが巻かれたステアリング以外は、オリジナルを踏襲するシンプルなインテリア。シートはレカロのSP-Aをチョイスすることでハードな走行にも対応させながら車両インフォメーションを効果的に得る。なお、ミッションは独自の強化タイプとし、クラッチもプレートを増やして強化済みだ。
フロントに10J、リヤに11JのボルクレーシングG27に、前後純正サイズのポテンザRE-71Rをセット。数多くのサーキットテストを繰り返した結果、新倉さんがベストと判断したサイズ設定となっている。
外観も「ザ・マインズ」。フロント周りは拡大タイプのアンダースポイラーとカナード、ボンネットなどを装着。リヤにはムーンクラフトとコラボしたウイングカバーをセットし、あくまでもストリートを意識しながら、ワンランク上の空力性能を得られるエアロパーツで構成している。
フレームを残しながらルーフを切断して、プリプレグのドライカーボンを特殊な接着剤で強固に張り合わせる。軽量化だけでなくカーボンによる強度もアップさせることでボディ側の補強にも繋がるポイントだ。
このチューンドRに試乗したレーシングドライバーの飯田章選手は「ビギナーから上級者まで誰にでも扱いやすく、乗りやすいセットアップがこのR35の一番の特徴だね。レスポンスやピックアップの良さもそうだし、パワーの出方もスムーズで急激なトルク変動もない。苦にならないで楽しめる速さがある。高速コーナーでもバランスが良いから踏んでいけるし、遅い車両がいても不安なくパスできる余裕がある。とにかくバランスが良くて楽しいセットアップだよ」と絶賛。
「うちのやり方は昔から変わらず、R35に関してもアプローチは一緒。エンジンはアクセルに追従するレスポンスが重要なファクターだし、もちろんボディを十分に加速させるパワーもないとね。足に関してもサスペンションをしっかりと動かして、ジオメトリーの良いポイントを使いながらトラクション性能を高めることを追求している。あと、マインズのエッセンスを組み込んだボディパーツは自信作だよ」とはマインズ新倉代表。
プロドライバーが唸るほどの完成度の高さを見せるマインズ流のセットアップ術。それは、R35の尖った部分をなくして誰が乗っても楽しめることを徹底追及した、究極の調律術に他ならない。
●取材協力:マインズ 神奈川県横須賀市林5-7-25 TEL:046-857-3313
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