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もしかして真面目に作りすぎた? そこまで差別化しなくても・・・
グレードとミッションがもたらす走りの違い
コンビニの駐車場に停まった2台に思わず自分の目を疑った。シャッターを押す指が小刻みに震えて仕方がない。あぁ、なんて言うことだ…21世紀はまだ80年くらい残っているのに、あろうことか、ファミリアNEOとレーザーが並んでしまうとは、すでに世紀末の様相を呈しているではないか!
ファミリアNEOもレーザーも1994年に発売。取材車両はファミリアNEOがLSの5速MT、レーザーがSの4速ATだ。搭載されるエンジンは、どちらも1.5L直4のZ5-DE型(97ps/13.5kgm)。当時、マツダにあった2種類の1.5Lエンジンのうち、パワーが低い方だったりする。
Z5-DE型エンジン。ファミリアNEOもレーザーも97ps/13.5kgmというカタログスペックに変わりはないが、インマニ形状やエアコン配管の取り回しなどに大きな違いが見られ、エンジンルームの印象はかなり異なる。また、もうひとつの1.5L直4DOHCであるB5-ZE型はRSというグレードに搭載された。
レーザーのエンジンルーム。当時マツダは2種類の1.5L直4DOHCエンジンを持っていた。取材車両に搭載されるロングストローク(φ75.3×83.6mm)のZ5-DE型と、ほぼスクエアストローク(φ78.0×78.4mm)のB5-DE型だ。これは、レーザーではひとつ上のグレードだが同じ“S”を名乗る(実に紛らわしい…)モデルに搭載。5速MT仕様では125ps/7000rpm、13.2kgm/6000rpmを発揮した。
ちなみに、ファミリアNEO LSは下から2番目のグレード、レーザーSは一番下のグレード。ただ、そもそもレーザーにはファミリアNEOで言うLSと、最廉価ビジネスグレードのESに相当するモデルがなく、取材したSでさえ、ファミリアNEOでいえばLSのひとつ上のRSに匹敵。つまり、レーザーには上位機種しかなく、それに対してファミリアNEOは下にラインナップを拡大していたわけだ。
ファミリアNEOの外装。取材車両はまさかのフェンダーミラー車で、当然ミラー面の調整は手動式だ。ちなみに、LSグレードはドアミラーでも同様だったりする。そんなフェンダーミラーとともに、ブラックアウトされたアウタードアハンドルが男らしい。
一方、レーザーは廉価グレードのSでもドアミラーはボディ同色となるところが、そもそもの車格がファミリアNEOよりも上であるという証拠だ。ただし、ミラー面の電動調整機能は付くけど格納は手動式となる。また、アウタードアハンドルもカラードでサイドビューをすっきりさせている。
ファミリアNEOの内装。エアコン吹き出し口の形状やセンタークラスター上部の配列など、実際に見比べてみるとダッシュパネルの造形はレーザーとかなり違っている。LSは廉価グレードらしくタコメーターレス。スピードメーターの右側に燃料計、左側に水温計が配置される。
1DINオーディオ下の小物入れが化粧パネルで塞がれるだけでなく、ドリンクホルダーまで省略されているLS。当然、コストダウンのためだろうが、専用パネルを作ったらかえってコストがかかるのではないかと心配だ。
RS以上のグレードでは後席の背もたれが6:4分割タイプになるが、LS以下では一体式。3名乗車で大きな荷物を載せるといったシチュエーションには対応できないが、実際のところ使い勝手はかなり見劣りしそうだ。
レーザーの内装。エアバッグ内蔵ステアリングホイールはセンターパッド全体がホーンボタンとして機能するタイプ。上のスポークの左右に独立してボタンが設けられるファミリアNEOとは、そもそもデザインが異なっている。メーターは、スピードメーターを中心として左側にタコメーターが、右側に水温計と燃料計が上下に並べられる。
センタークラスターは、上からデジタル式時計、エアコン吹き出し口、エアコン操作パネル、1DINオーディオ、小物入れときて、引き出し式のドリンクホルダーが備わる。その下にはシガーライターと灰皿が用意されている。
ラゲッジルームは深さがあるから容量的には十分。開口部面積が大きいハッチバック車なら、荷物の積み降ろしも楽にできる。後席の背もたれは6:4の分割可倒式で、背もたれ左右上部のボタンを押し込むだけで簡単に前倒しできる。
細かく見ていくとかなり作り分けされるという、同じエンジンを載せたバッジ違いのモデル。ミッションだけでなくタイヤサイズの差で走りがどれくらい変わるのか? その辺りを探っていこう。
タイヤは、ファミリアNEOが155/70R13サイズのブリヂストンスニーカー、レーザーが標準175/70R13サイズのトーヨーテオプラスを装着。足回りは走行わずか1万3000kmのレーザーがまだまだシャキッとしているのに対して、8万km弱のファミリアNEOは、ややお疲れ気味な感じだ。
ステアリングを切った瞬間から、シャープに鼻先が向きを変えていくレーザーの走りはスポーツコンパクトそのもの。
一方のファミリアNEOはロールが大きく、少し頑張ってコーナーに進入するとタイヤが細いからスキール音も盛大に出る。
しかし、不安定な挙動を見せることもなければ、接地感が希薄になるようなこともない。むしろ、動きに軽快感があるという点では175幅のタイヤを履くレーザーよりも印象が良かったというのは本当だ。
あとは車重。ファミリアNEOの1040kgに対してレーザーは1080kg。1トン弱のクルマだけに40kgの差はかなり大きく、ミッションと装着タイヤの違いも含めて、ワインディングを走らせて楽しかったのは断然ファミリアNEOだった。
■ファミリアNEO LS
車両型式:BHALS
全長×全幅×全高:4030×1695×1405mm
ホイールベース:2505mm
トレッド:FR1460mm
車両重量:1040kg
エンジン型式:Z5-DE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ75.3×83.6mm
排気量:1489cc 圧縮比:9.4:1
最高出力:97ps/5500rpm
最大トルク:13.5kgm/4000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR155SR13
■フォードレーザーS
車両型式:BHALSF
全長×全幅×全高:4125×1695×1405mm
ホイールベース:2505mm
トレッド:FR1460mm
車両重量:1080kg
エンジン型式:Z5-DE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ75.3×83.6mm
排気量:1489cc 圧縮比:9.4:1
最高出力:97ps/5500rpm
最大トルク:13.5kgm/4000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR175/70R13
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)