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アメリカでは貴重なSR20をVEヘッド化し搭載!
現地のコミュニティもざわつくモンスターマシンに変貌
メキシコ出身のルイス・チャベスは、「仕事で使うクルマならこれ!」と、日産のD21型ピックアップトラック(ハードボディ)を指名買いした日本車好きだ。同じメキシコ生まれの友人で“Tepa Swaps(テパ・スワップス)”という屋号でプライベートビルダーをしているエドゥアルド・ゴンザレスと、いつもクルマいじりを楽しんでいる。
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メキシコ系が好むトラックのカスタマイズと言えば、車高を極限まで下げ、ド派手にペイントする「トラッキン」が有名だが、ルイスが興味をそそられたのはドラッグレースだった。仕事用のつもりで買ったはずが、SOHCのKA24E型直4のチューニングとレースにのめり込んでいった。
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そしてある時、エドゥアルドから「SRスワップに挑戦しないか」と思いがけない提案を受ける。日本ではチューニング用エンジンとしてメジャーなSR20DE/DET型だが、アメリカでは搭載車種が存在しなかったため、エンジン自体が極めてレア。しかも、V8が容易に手に入る環境なのに「俺たちは4気筒ターボで同じパワーを出すんだ!」と、小が大を食うことに2人とも美学を見出してしまったものだから、もう止められない。
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まずエンジンの受け皿となるボディ側は、コアサポートの代わりとなる鋼管をフレーム前端に溶接。それがバルクヘッドをして室内のロールケージにも溶接され、さらに後方へと伸びて荷台を経由してリヤフレームにも溶接されるという剛結ボディを実現してある。
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SR20エンジンは、シリンダーヘッドを可変バルブタイミングリフト機構のNEO-VVLが備わるVEヘッドに換装。NEO-VVLを駆動する油圧ソレノイドを新規に取り回し、ロッカー飛びの心配がなく、高回転まで淀みなく回るエンジン特性を手に入れた。アメリカのSRスペシャリストとして有名なMazworxによるポート加工を受け、ステージ2のカムやその他強化パーツを使った、いわゆるSR20VET仕様を実現した。
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タービンはギャレットのGTX3582Rを搭載。燃料系はインジェクターの増量とE85も使用できるフレックスフューエル化も行い、大風量でも適正な空燃比を実現。ECUはAEMのシリーズ2を使用し、アメリカの旧車ドラッグシーンで名を馳せるエリックスレーシングでチューニングが施されている。
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タービンからの排ガスは、ダウンパイプを通じて左フェンダーから直接アウトレットされている。風を逃がすためのテールゲートの穴開け加工やドラッグシュートも勇ましい。
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リヤのアクスルはマスタングのホーシングをナロー化して、275幅の極太ドラッグタイヤを駆動。アンチロールバーの役割を果たすパイプを左右フレームに溶接し、とにかくトラクションを逃さず、真っ直ぐ走る足回りを構築した。リヤタイヤとは逆で6インチという細めの設定とされたフロントタイヤもドラッグレーサーの証だ。
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ジェリコの4速シーケンシフターが備わるスパルタンなコクピットながら、敢えてスパルコのバケットシートを2脚置いてストリートトラックであることも意思表示。AEMのCD-7デジタルダッシュの他、各種追加メーターも備わる。
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高圧縮、高ブースト、高回転を許容するエンジンが絞り出す最高出力は780hp。1/8マイルで6秒40のパーソナルベストを記録しているが、現在はジェリコの4速シーケンシャルにアップデートされているので、目標の5秒台も視野に入る。
仕事用のワークホースからド迫力のSR20スワップドラッガーに華麗なる変身を遂げたD21トラック。だが、ルイスは「必要な時はこれで学校まで娘を迎えに行くんだよ(笑)」と涼しい顔でニッコリ。家族を愛するメキシカンパワー、恐るべし!
Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI