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ユーザーの指針となるリフレッシュ&アップデート
コムテック流のS2000令和モデル!
モデルデビューから20年以上が経過し、著しくコンディションが低下した車両も増えてきたS2000。そうした状況をどのように打開していけば良いのかをユーザーへ示すべく、あえて22万キロオーバーのAP1をベースにリフレッシュ&アップデートを図ってきたのが広島県の“コムテック”だ。
車両製作にあたって熊谷代表が追求したのは、走り込んだユーザーにとって手本となる扱いやすさと高いコストパフォーマンスの両立、そしてライバルに差を付ける速さを手に入れるというもの。S2000は多彩なパーツやチューニングノウハウが揃っているが、キチンとしたプラン立てを行わないと予算ばかりが増大してしまいがち。そうなると、完成度は高くなるかもしれないが、それと引き換えにユーザーの手が届かない1台となってしまうだろう。
そこで、このデモカーは走りとスタイルアップの両方に厳選したノウハウやパーツを注ぎ込んでのチューニングを敢行。いわばコムテック流の令和版S2000、または“エスニ”の2022年モデルとも呼べる仕上がりとなっているのだ。
エンジンはオーバーホール時に戸田レーシングのキャパシティアップ2350キットを投入し、低中速トルクを強化した2.3Lの300psに仕上げられた。ハイカムなどを投入して煮詰めていけばモアパワーも望めるが、ステージ問わずの扱いやすさと耐久性、コストパフォーマンス重視でカムはノーマルのままとしている。オーバーホールでコンディションを取り戻したミッションと合わせて、余裕ある走りを引き出すのが狙いだ。
もちろん、こうした配慮はボディ補強やフットワークへも細やかに及ぶ。製作時にはフルストリップ状態までバラしているため、突き詰めたボディ補強やジオメトリー変更も可能だったが、あえてそこには手を付けずにファインチューン。フロントはアッパーアームのボディ側へガセット追加などといった弱点対策を行いつつ、積極ストロークでマイルドかつコントローラブルなハンドリングを目指した。
車高調はオーリンズで、スプリングにはハイパコ(F17.9kg/mm R19.6kg/mm)を採用。リヤのサブフレームはAP2用ベースでコムテックがさらに補強したものへと交換するなど、多くのユーザーが取り入れやすい手法でアプローチしている。
扱いやすさに拘ったオールラウンダー仕様だからこそ、走りの安定感を引き出すことは至上命題。ソリッドローターがネックとなるリヤブレーキは、FD3Sの17インチローターとRX-8純正キャリパーのコンビネーションで対処しつつ、オリジナルのブレーキダクトでフロント同様にフレッシュエアを導いていく。
ハイセンスなエクステリアアレンジも見逃せない。色褪せてしまっていたボディを、光の加減で発色が変化するロードスター純正セラミックメタリックでオールペンしただけでなく、開口部やボトムは漆黒感が強いトヨタ純正202ブラックで塗り分け。フル後期仕様としたレンズ類やバンパーと相まって、走行22万kmオーバーの個体とは思えない、まさに2022年モデルと呼ぶに相応しいアダルトスポーティな1台へと大変身を遂げている。
タイプS純正バンパーには、フロントブレーキへフレッシュエアを送るオリジナルのカーボンエアダクトをプラスしている。
メカニカルグリップ向上の手段としてワイドボディ化は有効だが、コムテックはあえてユーザーライクなナローボディをキープ。フェンダーのツメ折りすら施さず、9.5J×18+63のボルクレーシングTE37サーガへ265サイズのアドバンA052をマッチングした。
ボディに関しては、ロールケージやスポット溶接増し等の大掛かりな補強は行っていないが、S2000CR(北米の限定モデル)に与えられていた補強バーを流用。メーカーの剛性アップ手段をそのまま活用したというわけだ。
NSXタイプRのホーンボタンやシフトノブを与え、ノーマル然とした佇まいで洗練したインテリア。レースパックのダッシュデータロガーや追加メーターが走りを意識させるが、エクステリア同様にノーマルとの一体感へ配慮したインストールとする。
S2000を熟知するからこそのメニュー設定は、さすがコムテック。コンディション低下へ悩まされているなら、コムテック流のリフレッシュで新車時以上の魅力を引き出してみてはどうだろうか。
●取材協力:コムテック 広島県福山市神村町2107-2 TEL:084-939-5780