「このランエボX、なんか短くない?」クイックな挙動を目指してボディを短縮加工!?

ヤリスWRカー並みのホイールベース2500mm設定!

心臓部は4B11改2.2L+GTIIIタービンで500馬力

全日本ダートトライアル選手権のJD1クラス(旧Dクラス=改造無制限クラス)で暴れ回っている、“ベストモータースポーツ”の『ベストDLランサーDS1』が今回の主役だ。

パッと見はチューンドベースとしてもお馴染みのランサーエボリューションX(CZ4A)なのだが「なにか変だぞ」と感じたアナタはなかなか鋭い。このマシンの最大の特徴はボディで、なんと大胆にボディをカットして150mmのショートホイールベース化を図っているのだ。

「2017年まではエボIXベースで参戦し、2018年からこのエボXベースのマシンにスイッチしました。製作のきっかけはD車らしいクルマを作りたかったから。そこで近年のWRカーの主流となっている、ホイールベース2500mmクラスのマシンを目指すことにしました。言うなれば、ランエボXのエボリューションモデルってところでしょうかね(笑)」と亀山さんは説明してくれた。

知り合いのボディショップで2ヵ月以上かけたというショートボディ化は、Bピラー直後でボディをカットして150mmスライス、ルーフラインの調整とリヤドア加工を行っている。リヤドアは溶接止めにすれば楽なのだが、整備性を考えて開閉できることに拘った。

企画段階では、前後オーバーハング部もショート化を図ったランエボXの完全縮小版を考えていたが「そんなことをしたら開幕には間に合わない」ということで現在のパッケージになったそうだ。

石跳ねによるダメージを防ぐためにガートで覆われている下回り。マフラーはワンオフ品で、レギュレーションに合わせて触媒も内蔵している。ボディカット=ショートホイールベース化による駆動系の帳尻を合わせるために、プロペラシャフトも短縮加工。低重心化を狙ってバッテリーは左リヤタイヤ付近、右側にはACDのポンプが移設されているのもポイントだ。

4B11エンジンはHKSのキットにより2.2L化され、ヘッドはハイカムやビッグバルブ化などを組み込んだフルチューン仕様。タービンにはHKS製のGTIIIをセットし、インタークーラーはノーマルコアでパイピングをアルミ製に変更している。カーボンインテークはカンサイサービス製だ。エンジン制御はECU書き換えで、最高出力は約500psを発揮。パワー的には十分だが、今後さらなるレスポンスアップを図りたいとのこと。

エンジンルームのパネルはスポット増しで強度アップを狙いつつ、軽量化のための穴開け加工が随所に行われている点にも注目したい。

ラジエターは重量バランスの向上を狙ってリヤに移設。冷却用エアの取り入れ口はルーフに設けられているが、開口部のサイズや形状などが重要とのこと。ベストモータースが過去に手がけたパイクスピーク参戦マシンや、サーキットタイムアタック車両製作の経験が生かされている。

車高調整式のサスペンションは、サブタンク付きのオーリンズTTX/TPX、ラリーグラベル用をベースに、ダートラ用のスペシャルセッティングを施している。スプリングレートは前後とも3.5kg/mm~4kg/mmのものを、コースに合わせて組み合わせている。

ブレーキはフロントがAP製の4ポットキャリパーで、リヤがスカイラインGT-R(R33/34)純正ブレンボを流用。ホイールサイズとの兼ね合いで、ローターは前後とも300mmとしている。ホイール内に見える赤い樹脂パーツは、石や岩の侵入を防ぐスクレーパーと呼ばれるものだ。

徹底的に無駄を排除した戦うためのインテリア。メーター周りは純正の各種電子デバイスを生かすためにノーマルを採用。シーケンシャルミッションはリトアニアのサムソナス製5速タイプをチョイス。

ロールケージはショートボディに合わせたオクヤマ製のワンオフ品だ。しっかり機能するリヤドアは、まるでRX-8のようなサイズ。純正をカットして鈑金したボディショップの力作で、モール類も純正をカットして繋ぎ合わせている。

ダートラ界で“丸和オートランドの主”の異名を持つのがベストモータースポーツの亀山代表。作って走るメカドライバーとして、長年ラリーやダートラなどに参戦しているベテランだ。

デビューイヤーの2018年シーズンは2位が2回、2019年シーズンは開幕戦で優勝、2020年〜2021年シーズンはコロナ禍の影響でスポット参戦となり、2022年シーズンは3位を2回獲得している。ショートボディのエボXはかなりセッティングがシビアとのことだが、今後の活躍をますます期待したいところだ。

PHOTO:小竹充(Mitsuru KOTAKE)/TEXT:川崎英俊(Hidetoshi KAWASAKI)

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