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モチーフは2022トヨタ・GR GT3コンセプト
パイプフレームでフロント350mm延長!
魔改造レベルのカスタム車両が多数展示されていた日本自動車大学校(NATS)ブースの中でも、とりわけ目立っていたのが、この『NATS GR STANCE』と名付けられたZN6型86ベースの作品。
テーマは「公道走行可能なGT風マシン」。東京オートサロン2022にトヨタが出展した、GR GT3コンセプトというモデルのロードバージョンとして、そのシルエットをオマージュしたのだ。
ロングノーズシルエットを作り出すために、フロント部はパイプフレーム化して350mmストレッチ。それに伴った配管やハーネス延長など苦労の連続だったという。細部を見ていく。
パイプフレーム化されたエンジンルームは美しいの一言。バルクヘッド前方のフレームを潔くカットし、サスタワー〜コアサポートまでを再構築している。
エンジン搭載位置はGTマシンらしくフロントミッドに…というのが理想だったが、ステアリングラックからブロック下側を通るステアリングシャフトの移設が現実的ではなかったため断念したそうな。
ボンネットの裏側を見るとストレッチの度合いが理解できるはず。バーリング加工されたアルミの部分が延長幅だ。
なお、ストラットタワーはパイプワークで完全に作り直されているが、サスペンションの配置&レイアウト等はZN6の純正を踏襲。つまり、足回りのパーツは市販品を無加工で装着できるのである。実際に、この車両はTディメンド製アームやエアサスを無加工で収めている。
一方のFA20エンジン本体は、トラストのT518Zボルトオンターボキットで過給機チューニングを敢行。これもGTマシンらしさを求めた結果のメイキングだ。
フロントフェイスはトヨタのMIRAI純正ヘッドライトを軸に構築。フェンダー、ボンネット、フロントバンパーはライト形状に合わせて加工し、バンパーもGR GT3コンセプトをモチーフにベース車両の面影を全く感じさせないレベルまで整形済みだ。
存在感抜群のワークスフェンダーを始めとする多くのボディパーツ類は、FRPではなく学生達がアルミ素材を叩き出して仕上げたというワンオフメイド。
ホイールはSSRプロフェッサーSPXで、サイズはフロント10.5J-23のリヤ12.5J-25(共に18インチ)。そこに40mmのワイドトレッドスペーサーをインストールし、絶妙なツラウチ感を演出している。
アルミ製のサイドステップは、バーリングによるデザインを加えてメカニカルに演出。ステッカーによるカラーパターンに見える部分も、カーボン柄シートの素材感を残すために薄く慎重に塗装したそうだ。
リヤセクションの造形も凄まじい。80系ハリアーの社外テールランプを組み込みつつ、MIRAIのフロントグリルをダクトとして流用することでレーシングフォルム化。4本出しエキゾーストマフラーと大型ディフューザーも大迫力だ。
室内は後部座席にエアサスのコンプレッサーおよびタンクを美しくマウント。配管はホースではなく、アルミのプロライナーとしている点も見逃せない。
極低車高でもストローク量を確保するために、リヤのタイヤハウスはサイクルフェンダー加工を実施。ハリボテのショーカーなどではなく、コンセプト通りの実走可能なカスタムカーであることがよく伝わってくるポイントだ。
市販車をベースに自分たちが理想とするストリートコンセプトカーを作り上げてしまうという、これぞまさに『カスタムカー』な1台。NATS学生達の想像力と技術力の高さには、ただただ感服だ。
PHOTO&TEXT:長谷川実路
取材協力:日本自動車大学校 千葉県成田市桜田296-38(成田キャンパス)/千葉県袖ケ浦市長浦580-258(袖ヶ浦キャンパス) TEL:0476-73-5507
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