「傷だらけの貴婦人」湾岸最高速ランナーと相思相愛の関係を続ける白銀のZ32

最高速に全てを賭けた男の愛機

堕とすか、堕とされるか。レヴォルフェS.A.の創業者である溝田功の愛機は、そんな全盛期の湾岸最高速に生きたZだ。アベレージ280km/hオーバーのバトルを征するために生まれ変わった貴婦人は、当時の面影を色濃く残したまま、本物特有のオーラを今なお放ち続ける。

「無茶させましたからね、ボロボロです。でも、たまに乗るとやっぱり好きだなって」

チューニングの歴史を紐解く時、絶対に避けては通れないジャンルがある。そう、最高速だ。90年代前半の“湾岸”全盛期には、週末ともなると東京湾の海岸線に沿って千葉〜東京〜神奈川を結ぶ60km弱の巨大ステージに最高速ランナー達が集結し、命がけのバトルを演じていた。

その中で様々なトレンドが生まれては消え、時代の変化に合わせてアプローチもモダナイズドされていったわけだが、この白銀のZ32は、そんな湾岸最高速シーンの記憶を色濃く残したチューンドと言っていいだろう。

全盛期の湾岸を駆け抜け、OPTION誌の最高速企画では328km/hという大記録をマーク。レヴォルフェS.A.というチューナーの名を全国区に伸し上げた原動力であり、ショップ創業者の溝田氏が新車から育て上げた大切な相棒だ。

飛び石の跡が接近戦の凄まじさを物語る。心臓部のVG30DETTは、コスワース製89φ鍛造ピストンで3.1L化。そこにワンオフEXマニを介してギャレット製GT25/28ハイブリッドタービンをツインで装着、ブースト1.5キロ時に600psを発揮する。

もちろん、シリンダーヘッドのポート研磨や各部バランス取りなど、エンジン内部の細かい部分までキッチリと仕上げられている。

リヤセクションは、76.3φの2本出しチタンマフラーをセンターに配置。カーボンで製作されたディフューザーが大きな威圧感を放つ。速度レンジの高いステージでは、安定性向上に絶大な効果を発揮する。

ワイド化されたフェンダーに収まるのは、ボルクレーシングTE37&アドバンA052だ。サイズは18インチで、フロント9.5Jに235幅、リヤ10.5Jに265幅を装着する。なお、キャリパーはブレンボ製へグレードアップし、フロントはF50タイプ、リヤがF360タイプとなっている。

HKSの60φメーターが並ぶスパルタンなコクピット。メーターは欧州仕様の280km/h仕様へと交換されている。ロールケージはクロモリ&ジュラルミンの11点式を装着し、剛性&乗員保護性能を確保。トランクにはエンジンルームより移設した軽量ドライバッテリーが搭載されている。

アブフラッグ製フロントディフューザーを加工し、カーボンリップを組み合わせたフロントバンパー。飛び石により剥がれた塗装が、このクルマの戦歴を物語る。ちなみに、ダクト付きボンネットは純正を加工したものだ。

ここまでのハイスペック仕様ながら、完全車検対応車という一面を併せ持っているのもこのチューンドの特徴。なお、車高に関しては90mmを確保していないが、法改正前に公認取得済みだ。

「ファイナルは昔ニスモから出ていたハイギヤードの3.3に変更して、レブは8000rpmに設定しています。トップエンドの伸びというよりは、超高速域での“追いかけっこ”で負けないよう、再加速性能に拘って作りましたね。もう古いですけど(笑)」と溝田氏。

フロントウインドウの中央に貼られたステッカーは、言わずと知れた伝説的最高速チーム『Mid Night』のもの。

確かに、各部のディティーリングは前時代的ではある。それでも、だ。スペックや攻撃的なルックスだけに留まらず、もっと根本的な部分…間近に接すれば、誰もが「雰囲気からして只者ではない」と思うに違いない。このZ32は、そういう類いの1台なのである。

現役引退後は、気分転換用のナイトドライブ仕様として第2の車生を送っているそうだが、溝田氏が時折見せる“彼女”への優しい表情から察するに、その関係は今現在も上手くいっているようだ。

「ずっと無茶させてきたので、もうボディはガタガタです。休ませないと。でも、コイツで出掛けたりすると、やっぱり良いなって思うんですよね」。

●取材協力:レヴォルフェ・エス・アー 神奈川県横浜市都筑区池辺町3960 TEL:045-929-6087

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http://www.revolfe.com/

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