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これから10年、GT-Rと共に過ごすためのアプローチ
妥協点をどこに置くか、そして徹底したコンディション管理
新車から共に歩んできたり、念願果たして第二世代GT-Rを愛車に迎えたばかりだったりとオーナーの事情は様々だが、誰もが共通して抱えている不安は、年数の経過とともに低下していくコンディションだろう。
そこでGT-Rらしいパフォーマンスを引き出しつつ、この先10年安心して乗り続ける方策論を老舗チューナーとして名高いカンサイサービス向井代表に尋ねてみた。
「年数や距離を考えると、RB26DETTはチューニングレベルに関係なくリフレッシュを検討すべき時期。まだ大丈夫と思ってるうちに、ちょっとした補機類トラブルからエンジンブローへと繋がる最悪のパターンも多いからね」と熱く語る向井代表。
続けて「だからこそ乗り方やメンテ履歴などが不明な中古車を購入した場合は、最優先でコンディションチェックに取り組むべきです。その時点で全てに対応するには予算的に厳しくても、コンディション管理されたベアエンジンへ載せ換えという選択肢だってある、段階建てして将来を見通すだけでも安心感は大きく変わるよ」。
そんな向井代表の言葉通り、カンサイサービスでは独自の車両点検メニュー(3万3000円)を展開している。60項目以上にも渡る点検項目に加え、実走行チェックやパワーチェックまでパッケージングされたこの点検メニューは、GT-Rだけでなく多彩な車種で人気を集めてきたもの。
チューニングされた中古車購入後の仕様確認、なんとなく感じる違和感や異音の原因追及にも活用され、大きなトラブルへ発展する前に対処できたというケースも少なくないのだ。
さらにエンジンに関しても、ユーザーを待たせることなくオーバーホールや載せ換え作業へと取り組めるように、納期未定となりがちなRB26DETTの新品ブロックは常時5機ほどスタンバイ。N1ベアエンジン搭載時などに下取りしたコンディション管理万全のベアエンジン、生廃となったゲトラグミッションなども多数ストックし、GT-R乗りへのバックアップ体制を万全に整えている。
一方、エンジンのオーバーホールについては、多くのステージでたくさんの仕様を走らせてきた経験から、仕上がりのイメージやケーススタディができていることが大きなアドバンテージ。
特にストリート用のエンジンに関しては、クリアランスはやや狭め、慣らしをしっかりと行ってアタリをつけることで、滑らかでノイズの少ない快適なエンジンに仕上がるという。
製作においては、分解洗浄、加工、組み立てに他のショップでは考えられないほど時間をかける。設備や作業スペースは整っているカンサイサービスなので、短時間でカタチに仕上げるような組み方ももちろん可能だが、作業は計測や確認の繰返し。「こんなもんでしょ」というような作業は許さず、全ての工程で納得のいく作業を行う。
ちなみに、RB26エンジンを1機オーバーホール+ファインチューンを行うのに、実作業時間だけで10日以上かけるケースも少なくないという。
「技術を持って正確に、誠実に行うのは当たり前だけど大変。それでも、絶対にお客さんに納得してもらわなくてはいけないからね」。
気になる費用の方は、標準仕様コンプリートエンジ(2.6L/鍛造ピストンなど)で約150万円、2.8Lコンプリートエンジン(新品ブロック使用)で約250万円となっている。
また、GT-Rチューナーとして広く知られるカンサイサービスでは、エンジンだけでなくボディまで含めたフルリフレッシュのオーダーも多い。
ただし、向井代表は「理想を突き詰めたらキリがないし、費用だって当然かかる。多少の錆やエアコンの効きの悪さなどは“味のひとつ”と捕らえるなどしながら、まずはしっかり安心して走れるクルマ造りにお金をかけるべき」という考えだ。
「第二世代GT-Rに関しては、経験則からくる違いはあるだろうけど、特別なことはない。むしろ、ひたすら誠実に正確に、時間をかけて取り組むことが実はすごく難しいことかなぁ」。
何気なく発した向井代表のそんな言葉こそが、カンサイサービスというチューニングショップのスタンスそのものだ。
●取材協力:カンサイサービス 奈良県奈良市小倉町1080 TEL:0743-84-0126
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