「兄弟車の微妙な違いを実車でマニアック検証!?」“ペルソナ1800タイプA”対“ユーノス300 1800タイプB”

細部に至る作り分けがバブルマツダならでは! 走りのフィーリングも予想以上に違っていた!

仕様が違う1.8Lモデルを比べてみる

今回のテーマは「ペルソナ対ユーノス300」だ。ペルソナは、インテリアデザインに凝りまくったセンターピラーレス4ドアハードトップで1988年に登場。そのユーノス版となる300は、1年後に発売された。

ペルソナ
ユーノス300

今回チャーターしたのは、2台とも上級2.0Lモデルでなく1.8Lモデル。しかも、ペルソナはファブリック内装タイプAの5速MT、対するユーノス300はレザー内装タイプBの4速ATと、クルマ自体が変態ならその組み合わせも変態という、まさかの異常事態である。

この2台、エンジンは同じF8系だが、ペルソナにはF8E型(97ps/14.6kgm)が、ユーノス300にはF8-DE型(115ps/16.0kgm)が搭載される。それぞれの違いを見ていこう。

まずはペルソナ。シリンダーごとに吸気側2本、排気側1本の3バルブを持つSOHCのF8E型。実用トルクを重視したエンジンで、取材車両は5速MTだったが、4速ATとのマッチングも良さそうだ。

ペルソナの5速MT。ギヤ比は1速から順に3.307、1.833、1.233、0.914、0.755、最終減速比は4.388となる。2.0Lモデルに対して、3~4速がハイギヤード化されると同時にファイナル比が低められている。

一方のユーノス300には、4バルブDOHCヘッドを持つF8-DE型が搭載される。カタログスペックではF8E型を18ps/1.4kgm上回り、それぞれ発生回転数も500rpm高まっているが、フィーリング的には実用エンジンの域を出てない。

ミッションは4速ATで1速から順に2.800、1.540、1.000、0.700というギヤ比を持つ。ファイナル比は3.842。ちなみに5速MTは1.8Lモデルも2.0Lモデルも同じなのがペルソナとの違いになる。

上記に加えて、ユーノス300は全グレード15インチホイール&タイヤに4輪ディスクブレーキを標準装備。つまり、ユーノス300はペルソナよりもスポーティな位置付けということが分かる。

ピラーレスハードトップの構造。ボディ剛性面や前後サイドウインドウ接合部からの水漏れといった心配がなくはないが、それよりサイドウインドウを降ろした時に、絶大な開放感を得られるのが魅力のピラーレスハードトップ。

本来は、前後方向においてルーフとサイドシルのほぼ真ん中を1本の柱(センターピラー)が通るのだが、ピラーレスはウエストラインから上の柱がなく、写真のようにリヤドアを取り付けるための柱がサイドシルから生えているだけ。板厚や複雑なプレスラインで剛性を持たせているのだろうが、見るからに不安な感じは否めない。

また、リヤドア下側の後端がリヤフェンダーアーチまで食い込んでいるのもデザイン上の特徴。写真はユーノス300だが、当然ペルソナも同じ構造だ。

ペルソナのインパネ周り。車名ロゴが入った縦長のセンターパッドを持つ3本ステアリングホイールが特徴。センターに設けられた3つのエアコン吹き出し口にはオートルーバー機構が付く。メータークラスター右側のサテライトスイッチには電動ミラー格納用も確認できるが、今時のプッシュ式でなくシーソー式となっている。

タイプAはシート表皮やドアトリムがファブリック。AT車になると、運転席にはビルトインタイプのセンターアームレストも備わる。

“インテリアイズム”とのテーマを掲げ、そこに開発の重点が置かれたペルソナだが、5ナンバーサイズセダンとしてのパッケージングに優れ、ラゲッジルームも実用的な容量を誇る。左手に見えるのは純正アクセサリーのトランクサイドボックス。価格は8400円。

ペルソナは全グレード14インチスチールホイールにフルホイールキャップが標準。車名のロゴが入るキャップはなかなかデザインにも凝っている。タイヤは標準185/70R14サイズのミネルバラジアル109を装着。

ユーノス300のインパネ周り。ダッシュボードやドアトリムの上部をブラック基調としたインテリア。本革巻き4本スポークステアリングと合わせて、ペルソナよりもグッとスポーティな印象を与える。ちなみに、ユーノス300もペルソナも一般的なグローブボックスを持たない。それだけ割り切ったインテリアデザインということだ。

シートもバケットタイプとなり、タイプBの内装はシート表皮やドアトリム、ダッシュボードの助手席側下部にまで本革があしらわれる。

本来1.8Lモデルのホイールはスチール製15インチにフルホイールキャップが標準だが、2.0Lモデル純正15インチアルミを装着。組み合わされるヨコハマDNA dBは純正同サイズの195/60R15だ。

ペルソナではオプション設定、ユーノス300では標準装備されたのが灰皿&シガーライター。1980年代末というとF1GPでもヨーロッパの一部の国ではタバコの広告が禁止になるなど、禁煙(嫌煙)運動の機運が高まってきた頃。当時のペルソナの資料を開くと、「社会情勢にいち早く対応して、マツダ車としては初めて灰皿、シガーライターをオプションにしています」という一文が確認できる。

当時のマツダはこんなところにも拘っていた! 注目はリヤサイドウインドウ後端の樹脂製化粧パネル。樹脂色の黒のままにしておけばパーツを共用できたのに、そこに“EUNOS”、“PERSONA”とロゴを入れてしまったものだから、それぞれ専用パーツになってしまった。考え方次第では、大いなる無駄である。

しかし、当時そのような感覚はまるでなく、きっと車種ごとに作り替えるのが当たり前だったのだと想像する。こういうところ、今の86&BRZにも少しは見習ってもらいたい。

スペックだけで比較するとユーノス300の方が良さげな感じだが、そうではないのが面白いところ。いざ乗り比べてみると印象が良かったのは実はペルソナで、ユーノス300よりもはるかに軽快に走ってくれた。

その一番の理由は車重。ベースは同じはずなのに、ミッションやら装備やらの違いでペルソナが1170kg、ユーノス300が1260kgと、何と90kgもペルソナの方が軽いという事実を、後からカタログを見て知った。ユーノス300の方がパワーはあっても重く、ミッションだって4速AT。逆にペルソナはパワーこそないものの軽く、5速MTが組み合わされていることでエンジンのスイートスポットを上手く使えるのだ。

それから、装着タイヤの違いも走りに影響を及ぼしている。ペルソナは185/70R14、ユーノス300は195/60R15。ハンドリングのしっかり感は断然ユーノス300だけど、正直パワーに対してややオーバーサイズで、安定しすぎな感じが否めない。

一方、ペルソナは絶対グリップで劣るにしてもハンドリングが軽く、タイヤに頼らずクルマ全体がバランスしながらコーナリングしていくよう。ワインディングを気持ち良く走りたいなら、ペルソナくらいがちょうど良いのだ。

■ペルソナ1800タイプA
車両型式:MA8P
全長×全幅×全高:4550×1695×1335mm
ホイールベース:2575mm
トレッド(F/R):1460/1465mm
車両重量:1170kg
エンジン型式:F8E
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ86.0×77.0mm
排気量:1789cc 圧縮比:8.8:1
最高出力:97ps/5500rpm
最大トルク:14.6kgm/4500rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR185/70R14

■ユーノス300 1800タイプB
車両型式:MA8PE
全長×全幅×全高:4550×1695×1335mm
ホイールベース:2575mm
トレッド(F/R):1460/1465mm
車両重量:1260kg
エンジン型式:F8-DE
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×77.0mm
排気量:1789cc 圧縮比:8.8:1
最高出力:115ps/6000rpm
最大トルク:16.0kgm/5000rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/60R15

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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