目次
セントラル最速シビックが筑波に挑む
K20A改2.4LエンジンでNAながら300馬力を発揮!
ホームコースであるセントラルサーキットでは、NA最速(1分16秒771)の座に君臨する“ASLAN SPIRIT EG6”。関西エリアで知らぬ者はいない有名マシンが、3年ぶりに筑波サーキットの“Attack筑波2023”へと参戦してきた。
ちなみに、これまでのベストタイムは2019年2月にマークした56秒380。2022年シーズンまでは筑波サーキットのタイムランキングトップ50に食い込んでいたものの、苛烈を極める昨今の筑波アタックにおいてはこれでも圏外となってしまっていた。
マシンメイクは大阪のホンダ系チューニングショップ“アスラン”が担当。不要な箇所を切り落とし、セミパイプフレーム化されたエンジンルームに収まるのは、B型エンジンではなくK型。それも戸田レーシングのキットを使ったK20A改2.4L仕様である。HONDATAで制御を行い、ピークパワーは300馬力に到達。燃料込み830kgという軽量ボディとの組み合わせは強烈だ。
「元々シビックにハマった理由が、サーキット走行会でターボ車と戦えるところだったんです。なので、タイムアタック専用と割り切った仕様であってもNAというのは外せない要素なんですよ」とは、オーナー兼ドライバーのTONさん。
クーリングチューンも独特だ。周回ではなく一発のタイムアタックに賭けるスプリント仕様のため、ラジエターはDC5型インテグラ純正を半分にカットした軽量コンパクトなタイプに変更し、オイルクーラーに至っては軽量化のために装着されていない。
非常に割り切ったスペックだが、エンジンは3シーズン目の現在でも快調そのもの。チューニング適性の高さだけでなく、耐久性の面でもK型は魅力的な存在というわけだ。
2023年シーズンに向けて新たに投入されたパーツのひとつが、クワイフ製の5速シーケンシャルミッション。電子制御式のパドルシフトを導入する車両が急増する中、十分なテスト時間が取れなかったこともあり今季はIパターンのままでの挑戦となった。
足回りの軸となる車高調は、スピリットをベースにASLANでオリジナルセッティングした特注モデルを採用。超ワイドトレッド仕様のFFということもあり、スプリングにはフロント70kg/mm、リヤ60kg/mmと超ハイレートをセットしている。
ホイールは18インチのボルクレーシングTE37SL(F12J R9.5J)で、タイヤにはアドバンA052(F295/35R18 R235/45R17)を組み合わせる。
ホイール&タイヤのサイズセレクトは独特だが、リヤにはさらに80mmのワイドトレッドスペーサーを装着してトレッドを大幅に拡大しているのだから驚かされる。これは、「コーナーの奥で旋回できる特性にしたい」というTONさんの思いを実現するための策だったりする。
室内はドンガラのシングルシート仕様で、強固なワンオフロールケージも装備。ペラペラなカーボン製ダッシュカバーにはAIMのデジタルダッシュがセットされ、電装品の配線を一元化できるPDMも搭載する。
ボルテックス製の大型リヤウイングも今季から投入されたアイテムだ。前後のワイドフェンダーは、「限界まで太いタイヤが履けるように」というオーダーで製作されたワンオフ仕様。フロントのアンダーパネルもボルテックス製で、フレームから延長されたステーを介して頑強な固定がなされている。
Attack筑波当日にマークしたタイムは、自己ベスト更新となる55秒240。再び35位でのランキング入りを果たした(2023年2月現在)ものの、まだまだ全てを出し尽くせた状態ではなかったという。
「同じNA・FFクラスで、アサイさん(GNR★RISEUP★APJ EK9)が55秒144をマークしているので正直悔しいです(笑) クルマの調子はかなり良いので、リメイクした現在の仕様に身体を慣らしていけばもっとタイムが出せるとは思います」とのこと。
底の見えない速さを持つEG6シビック。今後激化するであろう、アサイ選手とのNA頂上決戦の行方やいかに。
PHOTO:Daisuke YAMAMOTO (山本 大介)/金子信敏
●取材イベント:Attack筑波2023