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発売翌月に登録された超初期型!
32年が経過した現在もその美しさは健在
栃木は高根沢に専用工場を建て、量産市販車としては世界初となるオールアルミ製モノコックボディを採用。そのリヤミッドにはNAながら280psを達成した3.0L・V6VTECエンジンが搭載され、開発段階で当時F1ドライバーだったアイルトン・セナや中嶋悟もテストに参加したという初代NSX。モデルデビューは1990年9月だ。
5速MT車800万円、4速AT車860万円という高額車両にも関わらず、世はバブル景気真っ只中。発売と同時に注文が殺到し、納車まで5年待ちとも8年待ちとも言われる程の人気を集めた。
作りやメカニズム、クオリティの高さなどは言うまでもなく、新車価格や付随する数々のエピソードに至るまで、まさに“国産車初のスーパーカー”と呼ぶに相応しい存在だったと言える。NA1は、それまでの国産車では成し得なかった未踏の領域へと到達した、日本の自動車史に残る金字塔なのだ。
取材車両は1990年10月登録、つまり発売翌月にナンバーが付いたⅠ型の超初期モノだ。しかも、ワンオーナー車。「何か雰囲気が違う…」と思ったら、本来ブラックアウトされるA/Bピラーとルーフがボディ同色であることに気が付いた。
「ホンダディーラーの知り合いに勧められて値引きゼロで買うたんやけど、2トーンのボディ色が嫌でな。納車されてすぐ、黒いところを赤く塗ってもらったんよ」とオーナーSさん。ガレージで眠っていた時期もあったため、走行距離はまだ4万km台。内外装の程度は抜群だ。
非常にライトだが、各部にはNSXのポテンシャルを高めるチューニングが施されている。機関系はエアクリーナーやエキゾーストマフラーを高効率タイプに交換した上で、軽量フライホイールに小径ディスクを組み合わせたOS技研のメタルツインプレートクラッチでエンジンレスポンスを引き上げている。
足回りは、エンドレスの車高調とOS技研のスーパーロックLSDでセットアップ(ファイナル4.4)。ホイールはボルクレーシングの中でも特に軽さを売りにしていたCE28Nで、標準のフロント15/リヤ16インチに対して、17/18インチへと2インチアップが図られた。スポークの隙間から覗くブレーキシステムは往年のトラストGREXだ。
室内はノーマルをキープ。ドアトリムにかけて連続性が持たされ、運転席と助手席を囲むようにデザインされたダッシュボードが特徴的だ。
純正シートはフルバケットのように見えるが、リクライニング機構を持ったセミバケットタイプ。前後スライドを合わせて電動調整式となる。
リヤミッドシップ車のフロントオーバーハング部はラゲッジスペースであることが多いが、NA1は使用時にエアを入れるスペースセイバータイヤを始め、ラジエターやブレーキマスターバック、ABSユニット、リレー&ヒューズボックスなどで一杯。しかし、エンジンルーム後方にゴルフバッグが2つ収まる独立したトランクスペースがあるため、問題なし。
自分が必要だと思った箇所には手を入れる。フルノーマル派を否定するつもりは全くないが、パフォーマンスをより引き出すためのチューニングが施されたNA1と、それを実際に行動に移したSさんは、やっぱりカッコ良い。
●取材協力:TEPPモータースポーツ 岡山県岡山市北区奥田本町9-3 TEL:086-201-8188
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