目次
EJ20らしからぬ美音を奏でる理論に基づいた匠のエキゾースト!
追求し続けるのは「F1マシンがモナコのトンネルを抜ける時のようなサウンド」
スポーツマフラーには様々な要素が求められる。排気効率やビジュアル、軽さやサウンドなどだ。チューニングフリークの中では憧れの存在とも言える“サクラム”のエキゾーストは、“良い音”に特化しているのが拘り。
長年に渡って培ってきたノウハウと、経験だけに頼らない理論に基づいた音作り。相反する要素を融合させているからこそ、多くのファンに愛されるマフラーを生み出し、そして孤高の存在感を保ち続けられているのであろう。
「EJ20は2.0Lターボエンジンの中でも、かなり優秀な部類に入ります」。そう話を切り出したのは、様々な車種のエキゾーストを手掛けてきた代表の宇野さんだ。
この世には、良い音が出せるクルマとそうでないクルマがあるという。目指しているのは「F1マシンがモナコのトンネルを抜ける時のようなサウンド」。その理想に少しでも近づけるようメイク&トライを続けてきた。
パイプとサイレンサー、テールエンドという構成要素はいわゆる一般的なスポーツマフラーと何ら変わりはない。しかし、そこから生み出されるエキゾーストは、もはや芸術とも呼べる音色を奏でる。まるで管楽器のようなサウンド…とでも言えようか。高回転の気持ち良さといったら、大げさでなく鳥肌が立つほどだ。
早速、サクラム謹製のWRX STI(GVB/VAB)用サイレンサーキットを見ていく。
画像はGVB用で、フロントパイプ、メインパイプ、左右のテールパイプという4分割構成のフルエキゾースト交換タイプとなる。なお、VAB用はホイールベースが長いため中間パイプが延長されているが、基本構造は同じだ。
吊り下げフックの台座の作りひとつを見ても、そのクオリティの高さが伺える。メインパイプは65φと十分な容量を確保する。
パイプとパイプの間に設けられるフランジも凝った造り。排気漏れが起きないようしっかりと結合される。熟練の職人による美しい溶接も必見。
65φのメインパイプから50.8φのパイプで左右のテールエンドへと分岐される。スムーズに排気が流れるように緩やかなカーブを描いていることが分かるだろう。
サイレンサーは全部で4つ設けられる。パイプ素材はSUS304ステンレスとなっており、タイコ内は熱収縮にも強い異なるステンレス材を使用する。
テールエンド手前に設けられたレゾネーターも音量調整の役割を担う。サイレンサー内の作りやパイプ長、そして取り回しなど、全ては美音を奏でるための設計だ。
テールエンドはラッパ形状の左右4本出し。今時のマフラーの中では大人しめのルックスと言える。ノーマル〜低回転の実用域は意外なほどに普通。それでいてアクセルを踏み込むと、圧倒的な美音を奏でる。そのギャップもたまらない。
2.0Lの水平対向4気筒エンジン、しかもターボ付きでこれほどまでの美音が出せる秘密は何か? 当然、一言で片づけられるようなものではないが、パイプの長さにもその秘密を紐解くひとつのキーワードが隠されている。
「排気は反射することで音のエネルギーが減衰し、やがては消えていきます。当然、長いパイプと短いパイプだと反射の回数は異なりますよね。音の速さは1秒間に340m。つまり1mのパイプなら170往復、2mなら85往復している。この振動が周波数(Hz)と呼ばれるもので、パイプの長さやサイレンサーのボリュームによって変わってくるんです。GVB/VAB用では6000rpm時に400Hzを目標として開発しました」と宇野さん。
つまり周波数分布まで考慮してマフラーを作り込んでいるのだが、さらに肝心というのが “倍音”と呼ばれるもの。これは名前の通り、基本となる周波数に対して倍数の周波数を指す。4000rpm時に200Hzなら6000rpm時に400Hz、8000rpm時に800Hzといった具合だ。サクラムではこの倍音を考慮して調律していく。そうすることで、排気音が途切れずに連続するような音色に生まれ変わるのだとか。
高回転型のEJ20は、この倍音がハッキリと出て、それぞれのピークも際立つという。だからこそ、まるでキッチリとバランス取りをしたレーシングエンジンのように、澱みのない美しいサウンドを奏でるのだ。
まさにこれぞ匠のマフラー。決して安い買い物ではない。しかし、官能的な音に拘りたいユーザーなら思い切ってみる価値はあると言える。
●取材協力: サクラム 埼玉県深谷市永田1098 TEL:048-584-7117
【関連リンク】
サクラム
http://www.saclam.com/