「存在感はまさしく世界最小のスーパーカー!」マニアックなオートザムAZ-1のOEM車『スズキ キャラ』に乗った!

アルトワークス譲りのF6Aは超パワフル!

日本独自の軽自動車規格が生んだ珍車

1990年代初め、バブル景気の勢いに乗って販売店5チャンネル化を展開したマツダ。その内の一つ、オートザムチャンネルで扱われたのが1992年に発売されたAZ-1だ。

軽規格で実現した本格的なリヤミッドシップ2シーター。エンジンはスズキから供給された660cc直3ターボのF6Aだ。ガルウイングドアを採用したその姿から、“世界最小のスーパーカー”と呼ばれた。

画像はAZ-1

そんなAZ-1にはOEM車が存在する。それがここで紹介するスズキキャラだ。外装におけるAZ-1との大きな違いはフォグランプを内蔵したフロントバンパーくらいなもので、後はエンブレムやマフラーメインサイレンサー直後に設けられたパネルが異なる程度だ。

実車を前にして思ったのは、全高が凄まじく低いこと。カタログ値1150mm、車高ダウンで実際には1100mm弱だろう。今時のZN8/ZD8より20cm近く低いのが驚異的。改めて細部を見ていく。

ステアリングホイールはアブフラッグ製Dシェイプ、シフトノブはRAZO製を装着。メーターは1万1000rpmフルスケールのタコメーターを中心に、左側にスピードメーター、右側に水温計と燃料計が並ぶ。ズボンの裾を引っかけてウインカーレバーを折ることがあるため、運転席に乗り込む時は注意が必要だ。

運転席、助手席共に樹脂製シェルで軽量に仕上げられたフルバケットシートを標準装備。運転席は前後スライドが可能だが、助手席はフロアに直接ボルト留めされた固定式というのが男らしい。ちなみに、運転席の背後にはスペア(テンパー)タイヤと車検証入れが備わる。

ドアパネルの構造上、10cm程しか開かないサイドウインドウ。高速道路の入口で通行券を取るためのチケットウインドウと呼ばれたが、そもそもポジションが低すぎて手が届かず、結局はドアを開けなければならなかったとも。

ラゲッジスペースと呼ぶには余りにも狭いフロントノーズ部にはウインドウウォッシャータンクや車載ジャッキが備わる。スペアタイヤもここに収まるはずだったが、前面衝突時に車内に飛び込むことから、運転席の後方に移設された。

ドアを跳ね上げ、高いサイドシルをまたいで運転席に滑り込む。フルバケットシートのホールド感は抜群で、フロアの上に直接座らされるようなポジションと目線の低さに驚くしかない。

背中越しのF6Aは低速域でも扱いやすく、パワーの盛り上がりを明確に感じられるのは4500rpm付近から。9000rpmから始まるレッドゾーンに対して余裕を持ち、タコメーター読み8000rpmを目安にシフトアップしていくと、コンパクトかつ軽いボディと低い目線との相乗効果によって、体感的な速さはなかなかのものだ。
それ以上にキャラで楽しいのはハンドリング。ステアリング操作に対するノーズの動きが想像を遥かに超えるクイックさで、自分が座っている車体中央付近を軸にクルマが軽快に向きを変えていく感覚だ。少しペースを上げて走る分には前輪の接地感に不安はなく、ノンパワステゆえのダイレクト感も十分。

しかし、路面が荒れていると簡単にステアリングを取られがちで、挙動も落ち着かなくなるなどナーバスな一面を見せる。取材車両は純正2インチアップのワイドなホイール&タイヤを履いていたため、その傾向がより強く出たと思われる。

スズキスポーツの大きなステッカーはワゴンR用を流用。マフラーもスズキスポーツ製に交換される。ホイールは15インチのワークマイスターS2R(F5.5J+40 R6.5J+32)で、165/50サイズのアースワンが組み合わされる。

意外だったのは、後輪駆動の軽自動車なのに小回りが利かないこと。最小回転半径はカタログ値4.7m。今時のアルトやN-ONEはFFなのに4.4~4.5mだったりする。キャラ(AZ-1)は、「ロックtoロック2.2回転のクイックなハンドリング」と言われるが、そもそも前輪の切れ角自体が小さかった…というのが真実なのだ。
もっとも、それで魅力が半減することはない。“世界最小のスーパーカー”は、独自の軽自動車枠があるガラパゴス日本でなければ絶対に生まれなかった1台なのだから。

「エンジンを捨てたモーター駆動のAZ-1!」これがチューニングの未来なのか? コンバートEVの可能性を探る

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