目次
ジオメトリーまで大きく変更して迫力の走りを徹底追及!
ルックスでもギャラリーの注目を集める仕様へ
コーナーを過激なアングルで飛び込む、いわゆる「ケツ進入」でギャラリーを沸かせまくっていたこのFD3S。しかし、それも少し前までの話だ。現在はフロントに18インチ、リヤには19インチを履かせたり、超ハイマウントなGTウイングを装着。まるでタイムアタック仕様のような、インパクト抜群のスタイルに変身していた。
そのため、得意のケツ進入はすっかり鳴りを潜め、割と普通の角度の走りに…。その原因は、タイヤの干渉を防ぐためのワイド化と、バネレートアップによってサスセッティングが激変してしまったことにある。
ケツ進入を狙って激しいアングルを付けるためには、車速の高さが重要だ。ところが、フロントのコントロール性が大きく下がった現仕様では、オーバースピードからの思い切った振り出しには不安が大きいのである。
そんなに苦労するなら、元の仕様に戻せば…と思ってしまうが、何事もマンネリは堕落に繋がり、挑戦こそ進化への道。新たな走りを求めてオーナーは日々研究中なのだ。細部を見ていこう。
まず13B-REWエンジンは「ポート加工すると耐久性が落ちるし、ただでさえ低いトルクが細くなる」という理由で内部は無加工。タービンはウエストゲート式のTO4Sで、ブースト圧1.0キロで約400psという仕様だ。
クーリングパートは、エアコンレスのVマウント仕様だ。銅3層ラジエターはサイドタンクが加工されていて、GC8のアッパーホースがピッタリだったという。L字アングルなどを使った自作とはいえ、かなり格安に作られている。真夏のサーキットでも水温は85度で安定するというから恐れ入る。
足回りは独特だ。フロントサスはGPスポーツのGマスターで、17インチから18インチへのサイズアップに伴いバネレートは20kg/mmを使用。フロントが逃げる感触が強いため、リバンプ側のストロークを稼いで粘りのある足を作れないかと4kg/mmのヘルパースプリングを入れてテスト中だ。ナックルはサトルワークス製を装備する。
切れ角アップに伴う干渉対策も万全だ。前側はリトラクタブルユニットを取り外してスペースを確保。後ろ側はボディを大胆にカットして1.3mm厚の鉄板で再溶接している。
さらに、フロントはロアアームの取り付け部を加工して、約15mm外側にオフセット。効果的には延長ロアアームと同じで、ネガティブキャンバーを付けているのだ。というのも、FD3Sはタイヤハウスを拡張してタイヤを逃がすと、今度はキャリパーがアームに当たるようになる。そのため、調整式アッパーマウントで内側に入れず、ロアアーム延長で外側に出すネガキャン化が必須なのだ。
一方のリヤは、305幅の19インチでも問題なく走れるように、タイヤハウス上部はサイクルフェンダー加工で逃げを作っている。効きにくいFD3Sのサイドブレーキ対策としてリヤブレーキは17インチ用を流用した。車高調はテイン、スプリングは12kg/mmを組む。
FD3Sの泣き所にひとつが、ドリフトの振動ですぐにクラックが入るPPF。強化PPFを使っても割れは解消できなかったそうだが、前後に鉄板の補強プレートを追加したところ完全に対策できたそう。
バーチカル式のハイマウントGTウイングは、10プライの厚みがある頑丈なFRPステーを製作。かなり重いのでアルミパイプでの補強が必須とのこと。その他、エクステリアはフォーサイトのフロントバンパー&サイドステップ、オリジナルワイドフェンダー(F30mm+50mm R50mm)、ユーラスエロボンtype1という構成だ。
ホイールはワークマイスター(F10.5J-20 R12J+5)、タイヤはフロントがNS-2(255/35-18)でリヤはヴェンタスS1evo(305/30-19)をセットする。
ルックスと走りのインパクトに拘るのは、大会に勝ちたいとか誰かを倒したいという欲望ではなく、走りを見たギャラリーに「スゲェ!」と思わせたいというスタンスだから。クルマも腕もコツコツ磨いて自分の理想を極めていく、ある意味“ドリフト・スローライフ”を始めたという心境そのものなのではないだろうか。(MAZDA 13B&ENGINE Technical handbook & DVD Vol.2より)
記事が選択されていません 記事が選択されていません