緑と黄色のマークは、なぜ「若葉」なのか

「V字型」の左右対称デザインで「これから成長する存在」という意味が込められている

初心者マークの正式名称は「初心運転者標識」。道路交通法に基づき、普通免許を取得してから1年未満のドライバーに、表示を義務付けられている。原付や二輪の場合、表示は不要で初心者マークの表示義務は普通自動車に限定されている。

導入されたのは1972年で、当初は交通事故の多い若年層を対象に、安全運転を促す意図でスタートした。このマークの形状は、黄緑と黄色の組み合わせによる「V字型」の左右対称デザイン。通称「若葉マーク」とも呼ばれるこのマークには、「若葉=これから成長する存在」という意味が込められている。

黄緑は新芽の色、黄色は注意喚起の色として使われており、視認性と心理的効果を兼ね備えた配色を採用している。

表示義務の期間と正しい貼付位置

車両の前面と後面に、それぞれ見やすい位置で表示しなければならない。

表示義務の期間は、免許を取得した日から起算して1年間。たとえば2025年4月1日に免許を取得した場合、2026年4月1日まで(同日を含む)表示する義務がある。なお、免許停止処分を受けた場合には、停止期間分だけ義務期間が延長される。たとえば30日間の停止処分を受けた場合、合計で1年と30日間の表示が必要となるわけだ。

初心者マークは、車両の前面と後面に、それぞれ見やすい位置で表示しなければならない。

  • 前面:フロントガラス左上部やダッシュボードなど、運転者の視界を妨げない範囲で貼り付ける
  • 後面:リアガラスやトランク部分など、後続車から確認しやすい位置に貼付する

市販のマークには、吸盤式と磁石式の2種類があり、どちらを使用しても構わない。ただし、走行中に落下しないよう、確実に固定できるものを選ぶべきである。

また免許取得から1年以上経過していても、初心者マークを表示すること自体に違反はない。表示義務があるドライバーが装着していない場合は罰則対象だが、義務のない人が任意で装着しても処罰はされない。ただし、1年を過ぎたドライバーに対しては「初心運転者等保護義務違反」は適用されなくなるため、周囲の車両による幅寄せや割り込みに対する法的保護はなくなる点に注意が必要である。

それでも初心者マークは周囲に「運転に不慣れである」ことを示す有効なサインであり、不安のあるドライバーにとっては、安全確保の手段として継続表示を検討する価値がある。

表示義務違反の罰則

自動車運転免許取得直後に初心者マークの表示を怠ると、道路交通法違反となる。

初心者マークの表示を怠ると、道路交通法違反となり普通車の場合は反則金4,000円、違反点数1点が科される。また、マークが著しく汚れている、あるいは視認性に問題があるといった場合にも、適切に表示されていないと判断される可能性がある。

他人の車を運転するときも表示が必要で、初心者期間中は、たとえレンタカーや知人の車であっても、普通自動車を運転する際には初心者マークの表示しなければならない。同時に、他のドライバーにとっても「配慮すべき相手」であることを認識させる重要なサインであり、思いやりのある交通社会を実現するための装置ともいえる。

初心者マークを表示車両に対しては、他のドライバーは幅寄せや割り込みなどの行為をしてはならない。これに違反した場合、普通車であれば反則金6,000円、違反点数1点の罰則が科される。

世界の初心者マーク事情:国ごとに違うルールとマナー

イギリスは、運転免許を取得する前の仮免許期間中に赤いL字マーク(LLearner)を車両に表示する義務がある。

海外でも、日本の「初心者マーク」に相当する制度や仕組みは広く存在している。ただし、その形や法的義務の有無、運用の仕方は国ごとに異なる。

例えばイギリスでは、運転免許を取得する前の仮免許期間中に「Lプレート(Learner)」という赤いL字マークを車両に表示する義務がある。そして免許取得後は、任意で「Pプレート(Probationary)」という緑のPマークを付けることができ、周囲に「初心者である」ことを示す。

フランスでは、免許取得から最大3年間は「Aマーク(Apprenti:初心者)」を車両後方に表示する義務がある。これに加えて、高速道路などでは制限速度が通常よりも低く設定されるなど、初心者への安全配慮が制度として組み込まれている。

ドイツでは、車両に初心者マークを表示する義務はないが、免許取得後2年間の「試用期間」が設けられており、この期間中に一定の違反をすると免許停止や講習の受講が求められる。さらに、21歳未満の初心者には厳格な飲酒運転ゼロ容認ルールが適用される。

韓国ではかつて初心者マーク(青白の矢印型)を義務化していたが、1999年にその法律は廃止された。その理由は、初心者マークをつけた車に対する嫌がらせ(幅寄せ・あおり)が横行したこと、またマークをつけている車だからといって後続車に煽られる文化が定着したためである。

現在は表示義務は存在せず、初心者マークの掲示は自由となっている。SNSなどでは「無免許とほぼ同じ」「車を買ったのは間違いだった」など、おもしろ文言付きステッカーを自主的に貼るドライバーも多い。

一方、アメリカでは全国共通の初心者マークは存在しない。ただし、多くの州で段階的な免許制度が導入されており、「仮免許」や「学習者用ライセンス」の段階では運転に様々な条件が付けられる。補助的に「Student Driver(初心者運転中)」と記したステッカーを任意で表示することもある。

このように、世界各国においても初心者を対象とした配慮や注意喚起の仕組みは存在しており、形こそ違えど「運転に不慣れな者を周囲が理解し、寛容に接する」ことの重要性は共通しているといえる。