速攻比較・三菱デリカミニ vs ホンダN-BOX JOY! アウトドア志向か日常志向か、選ぶならどっち？
PHOTO:中野幸次(NAKANO Kouji)/ MITSUBISHI/HONDA
三菱の新型デリカミニは、従来の軽スーパーハイトワゴンの親しみやすさを維持しつつも、よりデリカD:5譲りの力強さを前面に押し出したモデルへと進化しました。フロントウインドウの上端を約10センチ前方に移動させて立ち上がった造形とすることで、SUVらしい押し出し感を獲得。同時に視界も広がり、開放的なドライビングフィールを実現しています。直線を基調としたスクエアなフォルムは堂々とした存在感を放ち、軽自動車ながら“ミニ・デリカD:5”と呼びたくなるスタイリングに仕上げられています。
他方、ホンダN-BOX JOYも、ベースとなるN-BOXの親しみやすいキャラクターを活かしながら、SUV的な要素を巧みに取り入れています。専用デザインのバンパーやグリルをブラック基調でまとめ、アースカラーのボディやツートーンルーフを組み合わせることで、アウトドアシーンに映えるタフな雰囲気を演出。しかし全体としてはシンプルさを大切にしており、初めて軽自動車を購入する人にも抵抗感なく受け入れられるデザインが魅力です。
サイズ面ではN-BOX JOYは全長3395mm、全幅1475mm、全高1790mmという寸法で、ホイールベース2520mmによってゆとりある室内空間を確保しています。現状、新型デリカミニはサイズの詳細は示されていませんが、兄弟車である日産の新型ルークスのプロトタイプ車のデータから類推する限り、同様にスーパーハイトワゴンならではの広さを備えているものと思われます。両車ともに軽自動車規格の限界に近い設計を採用し、広々としたキャビンを実現していますが、内外装の作り込みに違いがあります。
新型デリカミニは撥水加工シートやソファ風の上級グレードシート、アームレストのソフトパッドなどを装備し、乗員が安心感を抱ける“守られた空間”を意識した質感を追求。対してN-BOX JOYはチェック柄の撥水シートや落ち着いたカラーリングでカジュアルかつ実用性重視のキャラクターを強調しています。
パワーユニットは両車とも660ccの自然吸気(NA)とターボを設定し、FFと4WDを選択可能です。新型デリカミニはあえてマイルドハイブリッドを採用せず、エンジン自体の効率向上で軽快さと低コストを両立。ターボ仕様では高速道路や坂道でも余裕のある走りを実現し、また、センターコンソールに配されたダイヤル式モードセレクトにより、パワー、エコ、ノーマル、グラベル、スノーといった5種類の走行モードを直感的に切り替えられ、雨天時の舗装路や未舗装路でも安心して運転できます。軽自動車でありながらSUVの走破性をイメージさせる点が特徴です。
他方、N-BOX JOYは燃費性能で優位に立ち、FFの自然吸気で21.3km/L、4WDで19.3km/L、ターボでもFFが20.2km/L、4WDで18.4km/Lという実用的な数値を達成。普段使いを前提としながら、必要に応じてレジャーにも対応できるバランス型の性格が光ります。
室内空間と利便性でも違いが見られます。新型デリカミニは助手席前の大型トレイやボックスティッシュを収められるアッパーグローブボックス、牛乳パックも入るドリンクホルダー、スマートフォンを立てかけて充電できるスライド式ホルダーなど、収納の工夫が充実。さらに、12.3インチと7インチのディスプレイを組み合わせた最新インフォテインメントシステムを搭載し、GoogleマップやGoogleアシスタントを利用できる点も軽自動車としては高評価でしょう。
N-BOX JOYも負けておらず、後席シートをダイブダウンさせて“ふらっとテラス”として活用できるほか、大容量アンダーボックスも備えています。ただし方向性は異なり、新型デリカミニが多機能なアウトドアギア的位置づけであるのに対し、N-BOX JOYは誰でも扱いやすい日常の道具という位置づけに寄せられています。
安全装備では、N-BOX JOYが全車標準でHonda SENSINGを搭載し、衝突軽減ブレーキ、アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援機能など先進運転支援を網羅。現状、新型デリカミニの安全装備関係の詳細は明らかになっていませんが、シンプルで信頼性の高いパワートレインと安心感あるキャビンデザインでユーザーの心理的安全性を重視しているようです。詳細が伏せられている現状では、安全技術の先進性では、ひとまずJOYが一歩リードしていますが、乗員の包まれるような安心感は新型デリカミニに軍配が上がると言えるのかもしれません。
価格帯にも両車の性格が反映されています。新型デリカミニは正式発売前ですが、約195万円～約295万円と発表されています。新たに上級の“DELIMARU Package”が追加されたこともあり、幅広い価格帯となっています。軽スーパーハイトワゴンの中でも比較的高めの設定ですが、その代わり、専用設計の内外装やSUV的な走行モード、豊富な収納などを備え、本格的にアウトドアを楽しむ人に向けた付加価値を提供しています。
他方、N-BOX JOYは189万9700円～232万4300円とやや抑えめで、燃費性能や先進安全装備を含めた総合力で幅広い層に訴求、価格と内容のバランスを重視する人に選びやすいモデルとなっています。
総じて、新型デリカミニは“小さくても本格的なSUVテイストを楽しみたい人”に向けた提案と言え、N-BOX JOYは“毎日の安心と快適さを大切にしながら、時にはアウトドアも楽しみたい人”に応える存在と言えるでしょう。似たようなコンセプトを掲げながらも、それぞれ異なる個性でユーザーを惹きつける2台といえるでしょう。
