クルマ×エアレースの「LEXUS PATHFINDER AIR RACING」

レクサスは2016年からエアレースパイロットの室屋義秀選手をサポートしており、2017年に技術交流会へと進展。2021年からは「LEXUS PATHFINDER AIR RACING」(レクサスパスファインダーエアレーシングチーム)が発足し、より相互の関連を強めている。

ちなみに、エアレースXマシンの開発に携わるレクサスのメンバーはトヨタの社員であり、普段は主に量産車に携わっている。この経験がきっとレクサス車やトヨタ車に活かされることになるのだろう。

『エアレースX』マシンのカーボンパーツもレクサス製

『エアレースX』で使用される飛行機は「エッジ540V3」と呼ばれるレース専用の軽飛行機で、改造はレギュレーションにより厳しく制限されている。参加各チームはレギュレーションで許される範囲で自陣営のマシンに改良を重ねており、それはレクサスパスファインダーエアレーシングチームも同様だ。

『エアレースX』第3戦の会場「グラングリーン大阪&グランフロント大阪」に展示されたレクサスパスファインダーエアレーシングチームのエッジ540V3。

特に、カーボン(CFRP)パーツはレクサス(トヨタ)内のかつてレクサスLFAを生産していた工場で作られており、クルマとエアレース機の繋がりを強く感じさせる部分である。

レクサス製CFRPパーツのひとつがエンジンカウル。カラーリングされているため一見カーボンには見えない。
エンジンカウルのインテークダクト(右)。
インテークダクト内はカーボン地が見える。

主翼端にある「ウイングレット」はレギュレーションで許された数少ない改造可能なパーツであり、レクサスパスファインダーエアレーシングチームはシーズン前からこのパーツの空力開発を進めていた。
残念ながら開幕戦には間に合わず、第2戦への投入を予告するのみだったが、実戦投入された第2戦では見事、室屋選手が優勝を飾っている。

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『エアレースX』第2戦告知。

飛行機の翼は翼端から後方に向けて空気の渦を発生しており、この渦が飛行機を後に引っ張る抵抗となる。ウイングレットはその渦大きさを抑え抵抗を減らす効果があるパーツで、燃費が重要な旅客機には多く取り入れられている。

小型ジェット旅客機エンブラエルE-170もウイングレットを備える。

新型のウイングレットは従来型より機体の安定性と直進安定性を高める方向にチューニングされたもので、この形状に落ち着くまでに何度もトライ&エラーを繰り返したそうだ。その甲斐もあって、第2戦ではコースとのマッチングも良好で好結果に繋がったという。

改良型のウイングレット。外装ではこの部分だけ無塗装でカーボン地剥き出しになっていた。
第1戦(2025年4月29日開催・ふくしまスカイパーク)の際の改良前のウイングレット。こちらは塗装されている。

ダウンフォースではなく抵抗を減らす空力セッティング

こうした『エアレースX』の知見はレクサスのクルマにも反映されている。もちろん、量産車にも活かされているのだが、何より特別仕様車に追加される空力パーツがわかりやすい存在だ。

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第1戦ではRZ450e“F SPORT Performance”が展示された。

第3戦会場には”EDGE””AVIATION”に続く3台目のレクサスLC”PINACCLE”が展示された。前2車よりは『エアレースX』感は押し出されていないものの、その空力パーツには確かに『エアレースX』の知見が盛り込まれている。

レクサスLC”PINNACLE”とレクサスパスファインダーエアレーシングチームのエッジ540V3。

そのパーツはやはりリヤウイング。ステーも含めフルCFRP製で、非常にシンプルな構成になっており、レクサスLCの流麗なスタイルを損なうことなくよりスポーティな雰囲気を演出している。

レクサスLC”PINNACLE”(LC500)は”朧銀”というマットシルバーのボディカラーも特徴。

ウイングはCFRP製の一枚板で形成されており、小さな下向きの翼端版まで一体となっている。このウイングはオートクレーブ整形により、重量はわずか1960g。控えめな翼断面形状によりダウンフォースは生み出すものの、その力はさほど大きくない。

“PINNACLE”のリヤウイング。一般的にはカーボンウイングに比べて極めて薄いのが特徴だ。

では、このウイングの空力的な狙いはどこにあるのだろうか?それは、前述の”ウイングレット”にある。”PINNACLE”のリヤウイングは、翼端の下向きのウイングレットが発生させる空気の渦により、クルマの側面で乱れる空気の流れを効率的に後方へ導く効果があるという。

翼端のウイングレット。運動性のみならず乗り心地も向上する。

これにより、リヤまわりが安定し、より落ち着いた挙動と直進安定性が得られるという。しかも、ウイングなどの空力パーツはある程度の速度域で空力パーツにそれなりに力がかからないと効果が出ないと思われがちだが、このウイングは40km/h程度からその効果を感じられるそうだ。

車両前方から見た”PINNACLE”のリヤウイング。車体とのクリアランスは少なめ。

この効果はまさにレクサスパスファインダーエアレーシングチームのエアレースXマシン開発から得た知見によるものだ。
なお、”PINNACLE”はLC500とLC500カブリオレが用意されたが、クーペとカブリオレで空力要件が異なるため、デザインラインは共通ながらその形状は微妙に異なっているそうだ。

単体で展示された”PINNACLE”のリヤウイング。当日は車両もパーツもLC500用で、LC500カブリオレとの違いを見ることができなかった。
レクサスパスファインダーエアレーシングチームのエアレースXマシンの改良ウイングレットもウイングと合わせて展示された。

エアレースXマシンと同様にレクサス(トヨタ)で製造されており、レクサスLFAの製造技術を受け継いだ職人が1枚1枚仕上げている逸品でもある。

“PINNACLE”は合計200台限定

レクサスLC”PINNACLE”はLC500とLC500カブリオレがそれぞれ100台ずつの200台限定で2025年7月24日に発表、抽選販売された。応募締め切りが8月7日、当選通知が8月18日のため、すでに完売していると思われるが、『エアレースX』第3戦は実車に触れることができる貴重な機会となった。

レクサスLC”PINNACLE”(LC500)

“PINNACLE”が設定されたのはLC500とそのカブリオレで、LC500hには用意されなかった。このことについて、レクサスのスタッフは「これから確実に減っていくであろう大排気量V8エンジンを搭載したモデルの”特別感”を強調するというコンセプトがあった」と語っていた。

レクサスLC”PINNACLE”(LC500)

『エアレースX』とのつながりがあるパーツは、ダウンフォースではなく整流のためのリヤウイング(ウイングレット)のみではあるが、特別仕様車として各所に手が入れられている。

フロントバンパーサイドに設置されたカナード。トヨタ車やレクサス車に装備されるヴォーテックスジェネレーターで、ウイングレットと合わせて整流効果を狙ったものかと思ったが、セオリー通りフロントのダウンフォースを増加させる空力パーツだそうだ。

“PINNACLE”の仕様や装備については以下の記事を参照していただくとして、『エアレースX』第3戦会場に展示された”PINNACLE”の写真をご覧いただこう。

LEXUS、「LC」を一部改良 ~同時に特別仕様車“PINNACLE"を設定~ | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

■改良内容 LCシリーズ全体に施された改良はごく小さい。 Always Onの考え方のもと、LCの開発コンセプトである「より鋭く、より優雅に」をさらに追求するということで、今回はドアストライカーの構造変更によって剛性感を […]

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レクサスLC一部改良と特別仕様車”PINNACLE”の詳細。

2026年シーズンに向けたマシン開発と新たな特別仕様車

レクサスパスファインダーエアレーシングチームと室屋選手は、残念ながら『エアレースX』2025シーズンではシリーズ2位に甘んじることになったが、2026年に向けてさらなるマシン開発を進めて行くことになる。

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『エアレースX』第3戦レポート。

その過程で得られるであろう新たな知見が盛り込まれたレクサスの量産車はもちろん、次なる『エアレースX』と関係の深い特別仕様車の登場にも期待したい。

ちなみに”PINNACLE”はLC500、LC500カブリオレともに1780万円という価格設定だった。