緊急車両と一時停止免除の関係

緊急走行する救急車の写真
緊急車両が現れたら譲る体制に入る必要がある。

街中でサイレンを鳴らしながら走る救急車や消防車は、誰もが道を譲るべき存在である。だが、その走行をよく見ると横断歩道や交差点の手前で減速し、時には止まる姿が確認できる。本来なら最短で現場に向かうはずの緊急車両が、なぜそうした行動を取るのだろうか。

道路交通法第39条2項には「緊急自動車は、法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない」と定められている。つまり、信号や標識によって一時停止が必要とされる状況でも、緊急車両は停止義務を免除される立場にあるというわけだ。

しかし、実際の現場では緊急車両が横断歩道の手前で止まる場面も少なくない。結論から言えば、これは歩行者や周囲の安全を確保するためである。

緊急車両が現れたら譲る体制に入る必要がある。

同条文には、「他の交通に注意して徐行」する義務が規定されており、無条件で進入できるわけではない。さらに、横断歩道に歩行者が渡っていれば、徐行のみでは衝突の危険を回避できない。これは交差点で他のクルマが進入している場合も同様であり、衝突を避けるために停止が必要となる。

結果として「止まっているように見える」場面が生じているというわけだ。実際の所、救急車や消防車の向かう先には人命がかかっているため、一刻も早く到着しなければならない。

走行中の救急車の写真
緊急車両を見かけたら自身も譲るよう心がける必要がある。

しかし、その途中で事故を起こしてしまえば現場に到着できず、本来救えるはずの命を救えなくなるおそれがあることは、言うまでもない。そのため、緊急時であっても安全を最優先とする判断がなされ、場合によっては一時停止が選択されるのだ。

なお、緊急車両の行動原則を理解しておくことは一般ドライバーにも重要とされている。まず、サイレンが聞こえた場合は道路の左側に寄って停止し、進路を空けることが基本だ。

さらに、交差点付近では安易に進入せず、緊急車両の動きを優先することが求められるだろう。こうした協力が結果的に人命救助へと直結するのだ。

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緊急車両は法律上、一時停止の義務が免除されているが、現場では安全確保のために止まる場面がある。緊急であっても安全が最優先であるという意識が常に働いているのである。