半身不随でもスポーツカーは楽しめる!
手動運転装置を駆使し、サーキットを疾走!
今回紹介するZ33型フェアレディZのオーナー・水さんは、下半身不随というハンデをものともせず、両腕だけでサーキット走行を楽しんでいる熱き走り屋だ。

「S15シルビアやRX-8といったマニュアル車を乗り継いできましたが、仕事中の事故で下半身の感覚を失ってしまったんです。当初はクルマを諦めるしかないと思いましたが、海外製の手動運転装置でマニュアル操作ができるものを見つけ、迷わず当時乗っていたRX-8に装着しました」と水さんは語る。
しかし、手動運転にも慣れ始めた頃に装置トラブルが発生。そこで相談したのが、幼なじみであり元D1ドライバーのガレージUG・吉岡さんだった。
吉岡さんが勧めたのは、車両価格が手頃でトルクフルな走りが楽しめるZ33のオートマ車への乗り替えだった。

「マニュアル車だと手動運転システムが複雑になり、トラブルのリスクも増えます。ATならシンプルで安定しており、Z33は基本性能の高さに加えて、万が一の車両ストップ時にもドライバーを守れるボディ剛性が備わっている。そこが決め手でした」と吉岡さん。
こうしてZ33で新たな走りを始めた水さんは、吉岡さんの影響を受けて徐々にチューニングにも着手。吉岡さんも手動運転で安全かつ速さを楽しめるよう、セットアップに細心の注意を払いながら、二人三脚で完成度を高めていった。

ハイカムの投入やECUの書き換えにより、Z33は300ps仕様へと進化。3.5L・V6ならではのトルクフルな特性を存分に味わえるマシンに仕上がった。現在は、FRスポーツらしいスライドコントロールを自在に楽しめる操作系の確立に取り組んでいるという。


というのも、手動運転装置はレバーの押し引きでアクセルとブレーキを操作するため、片手でステアリングを握らざるを得ない。そこで吉岡さんは、ステアリングにアクセル操作レバーを備えた新システムを導入し、スポーツ走行に最適な操作環境を模索している最中だ。

ボディには、スポーツ走行時の剛性と安全性を高めるダッシュ貫通ロールケージを装備。横Gがかかる中でも両腕の操作を安定させるため、フルバケットシートも採用した。ストリートからサーキットまで幅広く楽しめるオールラウンダー仕様だ。

パーツチョイスはZ33チューンのノウハウが豊富な吉岡さんに一任。ホイールは星形ツインスポークで深リムを備えた、326パワーのギャングスターをマッチングする。

足まわりはチャクリキダンパーを採用し、スプリングは普段使いとスポーツ走行を両立するフロント10kg/mm、リヤ6kg/mmでセットアップ。
また、レバー操作となるブレーキは減速Gの影響を受けやすいため、パッドには癖のない制動力が得られるエンドレスMX72をチョイス。

「Z33はノーマルでもトルクフルですし、チューニングで進化していく走りがとにかく楽しい。Z33に詳しい吉岡さんがいてくれるおかげで、安心してサーキットを走り込めます」と水さん。
両腕だけでZ33を操るその姿は、まさに“走りへの情熱”そのもの。これから二人がどんなZ33を作り上げていくのか、今後の進化に期待したい。
⚫︎取材協力:ガレージUG 島根県松江市東持田町332
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