学びと感動の2日間──「YRA ヤマハ バイクレッスン プレミアムツーリング」で見つける、新しいバイクの楽しみ方

■ YRAとは──ヤマハが提案する、安全で楽しいライディングのための学びの場

ヤマハと聞いて、音楽教室を思い浮かべる人も多いのではないだろうか? 元々ヤマハ発動機は、1955年に楽器メーカーのヤマハからオートバイ部門が分社化してできた会社。故に、その根底には共通するスピリットが流れているが、ヤマハが楽器を売るだけでなく、それを演奏して存分に楽しんでもらいたいという思いで始まった音楽教室同様に、ヤマハ発動機でもバイクやボートを売るだけでなく、気軽に使ってもらうためのレンタルシステムを展開しているほか、さらに踏み込んでバイクに正しく安全に楽しく乗ってもらうためのレッスンプログラム「YRA(Yamaha Riding Academy)」を世界的に運営してきた。余談に近いが、船外機を普及させるため日本の漁法をアフリカの漁村に伝えたという歴史もあるという。

YRAは、ヤマハ発動機販売(ヤマハ発動機グループ内の販売部門会社)が世界各地で展開するライディング教育プログラム。免許を所持するライダーたちが「もっと上手く」「もっと安全に」「もっと楽しく」走るためのスキルと知識を提供している。

その内容は、基本操作の確認から、安全なブレーキング、コーナリングの理論、危険回避のテクニックまで幅広い。単なる“教習”ではなく、“ヤマハらしい走る喜び”を体感できるプログラムとして長く続けられてきている。

今回開催された「プレミアムツーリング」は、一般的なYRAレッスンが主にクローズドコースを中心に行われるのに対し、「プレミアムツーリング」は実際の公道走行をメインに行われる。経験豊富なYRAインストラクターが同行し、ツーリング中にリアルな走行環境でライディングアドバイスを行うのが最大の特徴だ。

1泊2日の行程には、走行テクニックの向上だけでなく、ツーリングを楽しむ仕掛けが詰め込まれていた。

プレミアムツーリングへの参加者は、ビギナーまたはリターンライダーが対象で、過去にYRA参加経験したことが条件。開催地であるツーリングの聖地のひとつと言われる車山高原ビーナスラインへは、自家用車または茅野駅からの送迎バスで集合。会場には、振り返りレッスンと本番のツーリング用に主催者側が用意したヤマハMT-25が15台ずらりと並んでいる(今回は自身での車両持込み不可)。そう、行き帰りの高速道路、渋滞などを気にせず、ツーリングで走りたい道、つまり美味しい部分だけを楽しめるのが、まさにプレミアムなツーリングであり、大きな魅力のひとつでもある。

■ 現地に行けば安全に楽しめるプレミアムツーリング

初日はバイクに接し、動かし方を思い出して慣れてもらうことから始まった。

クローズドコースでのレッスンのため、MT-25は転倒してもダメージが少ないよう、エンジンガードが付けられ、ミラーは念の為外されている。車両そのものに限らず、こういった「もしも…」を想定し、あらかじめその対処を整えておくのは、個人では、まして経験値が低い初心者には無理と言っていい。

転んでも安心して練習できるのは嬉しい。

参加者は、YRAの経験があるが、普段からバイクに乗っている人は少ない。マシンチェックは運営サイドが入念に行ってくれているので安心して始められ、まずは、バイクに乗らずに押しての引き回し方、各種スイッチなどの操作系、エンジンの掛け方など、基本中の基本から教えてくれる。これには普段乗っていない人はもちろん、普段バイクに触れている人にも、改めて正しい操作方法、思わぬ気付きなどもあることだろう。

基本中の基本を確認したら、いよいよバイクに跨がってみる。単なる周回に慣れてきたら、ブレーキング、コーナリング、ギヤチェンジなどをイチから教わる。教習所と違って、できないことへのダメ出しや注意よりも、正しいやり方とできた事への褒め言葉が中心なので、参加者の向上心も高まっているのが表情から伝わってくる。

感心したのは平地での坂道発進の練習。インストラクターが手でバイクを後ろに引っ張るのに抵抗して発進させることで坂道発進を疑似体験できる。しかも、後ろに下がることもそのために倒れてしまう恐怖も感じさせることなく練習ができるわけだ。

後ろに引っ張ることで上りの坂道を想定した坂道発進練習

昭和の体育会系的な教習とは真逆の取り組みだ。

当日は濃霧のため、初日レッスン後の体験ショートツーリングは中止となったが、宿泊ホテルへの数百メートルは翌日の愛車を各自、公道を運転して向かった。

宿泊ホテルでは、入浴などひと休みした後、インストラクターや他の参加者と共に囲むディナータイム。バイク談義に花が咲くのはもちろん、これまでの旅の経験談などを披露し、交流を深めていた。

そしてここで、サプライズのプレゼント。オリジナルロゴ入りのキャップが参加者に手渡された。「ツーリング先ではヘルメットを脱いで髪型が崩れてしまう事も多い。そのため、ツーリングに慣れた人はキャップを持参する人が多いんですよ」とインストラクターから一言。一同納得とともに嬉しいプレゼントを各自受け取っていた。

インストラクター(左)からプレゼントのキャップを受け取る参加者

■ 同行するインストラクターがその場で教えてくれる贅沢

翌朝、前日の濃霧が嘘のように晴れ渡り、爽やかな秋風が心地よい、これ以上無いと言っていいくらいの絶好のツーリング日和となった。集合写真撮影の後、整備されたマシンに跨がりいよいよ出発。今回、抽選に当選した15名の参加者と7名のインストラクターは3グループに分けられ、1班で5名に前後2名のインストラクターが随行して一行は聖地ビーナスラインへとスタートした。

道の駅や広い駐車場のある休憩スポットで数回の休憩を取り、昼食会場となる古民家レストランへ。付近で捕れたと思われる鹿肉も使ったジビエ料理を堪能した後、午後は、さすがに秋の行楽シーズンど真ん中の三連休中日、道の駅美ヶ原高原は駐車困難と判断し別の場所で休憩を取るなどして、ゴールの霧ヶ峰ビーナスライン駐車場を経て、スタート地点のホテルへと全員無事帰還した。

その距離はおよそ150km弱。ほとんどが山道のワインディング。慣れた人にはそれほどではないだろうが、初心者には十分な距離だったようだ。中には「もう少し走りたかった」と思う参加者もいたようだが、それは絶好のコンディションでなおかつ安心、安全に走り終えた故に漏れる声。それは次回のツーリングへのモチベーションとなるに違いない。

今回の参加者は、普通に走ることすら不安な超初心者はおらず、インストラクター曰く「全員が(必要なシーンで)加速してくれた」とのことで、スムーズに進行することができたという。1度だけエンストからの立ち転けがあったというが、トラブルらしいトラブルはまったくなかったそうだ。

また参加者の多くは、カーブへの進入、ブレーキの掛け方とギヤチェンジのタイミングなどを、その場でインストラクターから学ぶことができたいう。これまで誰にも聞くことができなかったことがわかったことで、走りがスムーズになったとの声が多かった。

参加費用は8万円と一見高価に見えるが、1泊2日の宿泊と3食の食事付き、現地にバイクを運んでくれてそこで乗るだけの美味しいとこ取り、参加者のおよそ2名当たりに1人のインストラクターが常に付いてくれる行程を経験した参加者からは「安い」または「納得の価格」と感じたとの声が多かった。

■ バイクに“安心と上達”を──ヤマハが届ける、今の時代にあった最適なツーリング

この「プレミアムツーリング」を企画した、ヤマハ発動機カスタマーエクスペリエンス部の池田雅人さんは、「YRAを経験していただいたお客様への次のステップアップとして、これまで学んでいただいたレッスンによるバイクを動かすための基本の確認と、プラスしてしっかりしたツーリングの組み合わせは、今回が初めてだった第一回プレミアムツーリングでの経験を踏まえ、これで基本構成部分はイケると確信しました。今後は、九州や北海道なども視野に入れた全国各地にあるツーリングの聖地を舞台に、1泊2日に限らず、宿泊先、温泉なども厳選したさらなるプレミアムなツーリングへと展開できればと思います」と語る。

カスタマー・エクスペリエンス部の池田雅人さん

僕たち(60歳前後です)の若い頃は、とにかく免許が取れる年齢になったら免許を取得する。それだけでどこにだって行ける気がした、という時代とは今はワケが違う。先輩から「とにかく走れば良いんだよ!」と教わった(いや、それじゃあ教わってないな)という人間関係も今では望めないし、誰も望んでないだろう。

また、安全第一のメーカーが企画したような無難なツアーじゃ物足りないと以前なら思われたかもしれないが、今回のプレミアムツーリングを見る限り、距離やコース共に上級者でも不満が出るようなものではないと思った。なによりバイクを走れせることには言うまでもなく危険も伴うことを考慮せざるを得ないし、そうしたリスクを最小限に抑えてくれるのは、他に代え難い大きな魅力だ。

まさに、今の時代にも合致して「もっと上手く」「もっと安全に」「もっと楽しく」バイクを走らせることができる理想のツーリングプランが「YRAプレミアムツーリング」に他ならない。

今回は残念ながら同行取材であったが、次回、機会があれば今度はライダーとしてぜひ参加したい。そう強く感じた。

【YRA ヤマハ バイクレッスン プレミアムツーリング公式ページ】https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yra/otona/event-touring/

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