
ヤマハ・YZF-R9 ABS……1,496,000円(消費税10%を含む)
MT-09ベースのCP3エンジンでYZF-R6級の性能を実現

YZF-R9 ABSは「Re-DNAed Supersport」をコンセプトに開発された新世代スーパースポーツである。MT-09で高い評価を得ている888cc水冷3気筒のCP3エンジンをベースに、スーパースポーツとしての性能を徹底追求した。
クロスプレーン・コンセプトを採用した3気筒エンジンは、燃焼トルクを効率良く引き出す設計思想により、トルクフルで余力のあるパワーを発揮する。電子制御スロットル「YCC-T」の採用で、きめ細やかな吸入空気量制御を実現している点も特筆すべきポイントだ。
低速域では排気音が心地よく、高速域では吸気音を強調するサウンドデザインも採用。エアクリーナーボックスの形状とカバーのフィンによって、トルク感と加速感を際立たせる工夫が施されている。



歴代最軽量9.7kgの新型アルミフレームを専用開発

YZF-R9専用に開発された重力鋳造アルミフレームは、ヤマハの歴代スーパースポーツであるYZF-R1やYZF-R6の中で最も軽い9.7kgを実現した。これは単なる軽量化だけでなく、低荷重域でのしなやかさと高荷重域での強度を両立させた結果である。
ベースモデルの2024年型MT-09と比較すると、ねじり剛性が18%、縦剛性が37%、横剛性が16%向上している。この大幅な剛性アップにより、サーキット走行での高い運動性能を確保しながら、軽量化も達成した点が画期的だ。
足つき性と快適性を重視したライディングポジション
スーパースポーツでありながら、幅広いライダーに対応できる乗りやすさも追求されている。ハンドルポジションからヒップポジションの距離を既存のYZF-Rシリーズよりも短くし、適度な前傾姿勢を実現した。
フートポジションを下げることで良好な足つき性を確保し、膝周りが窮屈にならない設計となっている。ハンドルクラウン下方にマウントするセパレートタイプのハンドルにより、スーパースポーツとして求められるフロント荷重を確保しつつ、日常的な扱いやすさも両立している。
KYB製新型サスペンションで緻密なセッティングが可能

フロントには2025年モデルのフラッグシップYZF-R1と同じ、インナー径43mm・ストローク量120mmの倒立式サスペンションを搭載している。減衰力は右が伸び側、左が圧側を受け持つ左右独立方式を採用し、圧側は高速と低速の2WAYセッティングが可能だ。
ベースバルブの追加により、シリンダー内の圧力を最適化し、ストローク時の応答性を高めている。リアには極低速減衰力発生構造を持つ新設計のリンク式モノクロスサスペンションを装備。イニシャル、伸び側減衰力、圧側減衰力、車高の調整機構を備える充実の仕様である。
フロントのアウターおよびリアのリザーバータンクには、外観品質と耐摩耗性に優れるカシマコートを施している点も高級感を演出している。
ウイングレット採用でYZF-R6を超える空力性能

風洞実験や流体解析を重ね、ヤマハスーパースポーツモデルの中で最も空気抵抗が少なかったYZF-R6より優れたCd・A値を達成した。この数値は車両の持つ空気抵抗係数に前面投影面積を乗じた係数で、低いほど空気抵抗を受けにくく最高速に有利となる。
ポジションランプ下部に採用されたウイングレットは、サーキット走行でのウィリー抑制ではなく、公道走行時の横風などの外乱抑制と旋回中の接地感向上を目的とした形状だ。直進時は6〜7%、旋回中はフロントMダクト下のスポイラーとの組み合わせで10%程度前輪揚力を抑制する効果がある。
車体の横方向と下方向へ熱を放出する機構も設置され、エンジンやラジエーターからの熱によるライダーへの影響を抑制しつつ、冷却性能にも貢献している。
充実の電子制御システム「YRC」を標準装備
ライダーが好みや路面状況に応じてエンジンフィーリングや各種電子デバイスの介入度を選択できる「YRC(Yamaha Ride Control)」を搭載している。プリセットされた3種のパターン(SPORT/STREET/RAIN)の他、2種のカスタマイズ枠(CUSTOM1〜2)、TRACKモードでは4種の枠(TRACK1〜4)から選択可能だ。
制御設定可能な項目は多岐にわたる。クルーズコントロールシステム、設定した速度に最高速度を制限できる「YVSL(ヤマハバリアブルスピードリミッター)」、トラクションコントロールシステムをはじめ、PWR(パワーデリバリーモード)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)などを装備している。
さらにQS(クイックシフター)は加減速時のアップ/ダウン共に対応。LC(ローンチコントロール)、EBM(エンジンブレーキマネージメント)、BC(ブレーキコントロール)、BSR(バックスリップレギュレータ)、ABSリアOFFなど、サーキット走行を本格的に楽しめる電子制御システムが充実している。
5インチTFTディスプレイとY-TRAC Revで走りを可視化

5インチのフルカラーTFTディスプレイを採用し、速度やデジタルバーによるタコメーター、燃料計、平均燃費、水温計、気温計、シフトインジケーターなどを表示する。操作はFPC(Flexible Printed Circuits)を組み込んだハンドルスイッチで直感的に行える。
表示パターンは4種のテーマとラップタイムをメインにしたTrackモードがあり、走行シチュエーションに応じて選択可能だ。専用アプリ「YAMAHA Motorcycle Connect(Y-Connect)」をインストールしたスマートフォンとペアリングすると、YRCセッティングや電話・メールの着信表示、スマートフォンの電池残量表示などが可能になる。
注目は10月14日にリリース予定の無料アプリ「Y-TRAC Rev」である。サーキット走行中のラップタイム表示、ピットクルーからの指示や情報を表示するバーチャルピットボード機能、車体のCANデータに基づいた走行データのスマートフォンやタブレットでの確認など、サーキット走行を本格的に楽しめる機能が満載だ。
無料ナビアプリ「Garmin StreetCross」をインストールしたスマートフォンと接続すれば、ディスプレイをナビ画面として使用することもできる。
YZF-Rシリーズの伝統を継承した新世代デザイン
フロントフェイスのMダクトや二眼ポジションランプ、サイドビューの水平を基調とした「ホリゾンタル・ムーブメント」など、YZF-RシリーズのDNAを継承しつつ、ウイングレットの採用など新世代Rとしての進化も感じさせるスタイリングである。
カラーリングは3色を用意した。YZF-Rのブランドを象徴するヤマハレーシングブルーを表現した「ブルー」、シリアスなスポーティネスを表現し幅広い層に向けた「マットダークグレー」、初代YZF-R1の白と赤のトーンを本モデルの造形と時代感にマッチするように仕上げた「ホワイト」である。
ブレンボ製モノブロックキャリパーなど上質な装備
ブレーキにはブレンボ製のモノブロックキャリパー「Stylema」を採用している。質感と剛性の高いアルミ鍛造のブレーキペダルとシフトペダル、良好な足つき性と乗降性を実現したシート、USB Type-C端子に対応した充電ソケットをシート下に設置するなど、細部まで配慮された装備が特徴だ。
フラッシャーは通常のフラッシャー機能とハザード時の点滅機能に加え、「二段階フラッシャー機能」「エマージェンシーストップシグナル」「消し忘れ機能」を搭載している。
YZF-R7の成功を受けて開発されたミドルスーパースポーツ
2022年2月に国内発売されたYZF-R7は、レーシングマシンを想起させるスタイリングそのままに、カジュアルにスポーツライディングを楽しめる新しいカテゴリーを生み出した。幅広い層に受け入れられ需要の高まりを見せている。
こうした時代の声に応え、ヤマハはスーパースポーツの理想を詰め込んだ新しいミドルクラス900ccの姿を追求した。600cc直列4気筒スーパースポーツYZF-R6に匹敵する性能を備えながら、幅広いスキルやステージに対応できる親しみやすさを併せ持つYZF-R9 ABSの誕生により、YZF-Rシリーズのラインアップがさらに充実することになる。
YZF-R9 ABSは、YSPおよびアドバンスディーラーのみで販売する「ヤマハモーターサイクル エクスクルーシブモデル」である。購入については公式Webサイト掲載の取扱店まで問い合わせが必要だ。価格は149万6000円(消費税10%を含む)、発売は2025年内を予定している。
「YZF-R9」フィーチャーマップ

「YZF-R9 ABS」主要仕様諸元
