片側か両側か。利便性とコストの分かれ目

スライドドアの写真
ワンタッチで開いてくれる便利なスライドドア。

ミニバンや軽ハイトワゴンには、多くのモデルに電動スライドドアが採用されている。それはファミリー層を中心に支持を集め、利便性を象徴する装備のひとつとなった。

ワンタッチで開閉できる利便性はもちろん、狭い駐車場で隣のクルマにドアをぶつける心配がないという点も高く評価されている。

また、安全装備との連動によって挟み込み防止などの機能も備えていることから、子どもや高齢者の乗降サポートとしても有効である。

スライドドアが開いている写真
ファミリー層には人気な電動スライドドアだが。

しかし、便利な機能とはいえ、必ずしもすべてのユーザーにとって必要な装備とは限らない。たとえば、電動スライドドア搭載車のデメリットとしては、電動化に伴うモーターや配線の増設により車両価格が上昇し、車重増加による燃費の悪化につながる点が挙げられる。

さらに、モーターの経年劣化や配線の断線といった故障リスクもある。特に、冬季は気温低下でモーターの動作が遅くなり、スムーズに開かないケースも報告されている。

こうした構造上の課題を踏まえつつ、各メーカーは装備内容をグレードによって細かく差別化している。

ライフスタイルに合わせて選べる。

たとえば、トヨタ「シエンタ」では、グレードにより片側のみ電動とするタイプと、両側を電動化したタイプの2種が設定されている。そのうち、両側電動タイプは利便性が高い反面、価格は上昇する。

実用例でいうと、自宅の駐車場が壁際に寄っており片側しか開閉しない場合、片側電動タイプでも十分である。

販売店の写真
使い所によって選び方が変わる電動スライドドア。

また、実際の販売現場でも装備の必要性は需要により判断が分かれているといい、トヨタの販売店担当者は次のように話している。

「シエンタを検討されている方のなかで、スライドドアは片側電動でも十分というお客様は多いです。ご家庭によっては右側をあまり使わない場合もありますし、両側電動を選ぶと価格が上がるため、実際の利用頻度を考えて選ばれる方が多い印象です」

販売店に聞くと片側で良いという意見が多い。

このように、ユーザーからは利便性を求めて両側を選ぶか、必要最低限でコストを抑えるかが判断の分かれ目となっているようである。

また、シエンタの一部グレードでは、足先をかざすだけでドアを開閉できるハンズフリー機能も選択可能となっている。買い物帰りで両手がふさがっている際には便利な装備であるが、この機能も常に使うわけではない。

駐車環境やライフスタイルによって使用頻度が変わるため、「あると便利だが必須ではない」という評価が多いのが実情である。

シエンタが並んでいる写真
自身のライフスタイルによって選び方が変わる。

これに対して販売店の担当者は次のように話す。

「ハンズフリー機能は、あれば便利というお声が多いですね。ただ、実際に日常で頻繁に使う方はそれほど多くありません。買い物や送迎など、特定のシーンでは役立ちますが、オプション費用との兼ね合いで迷われるお客様が多い印象です」

スライドドアの写真
スライドドアをオフにして手動にすることも可能だという。

また、電動スライドドアは強制的にオフにすることも可能である。この機能は、長期間クルマを使用しない際のバッテリー保護や、子どもの誤操作防止、洗車・整備時の安全確保などを目的としている。

さらに、長期間クルマを使用しないときや、キャンプなどで電源を他の機器に使用する際など、電力消費を抑えたい場合にも有効である。ただし、この状態では単純にドア自体が重くなり、手動で開閉する際に大きな力が必要になる。

この点は「電動だからこそ軽く動く」という仕組みの裏返しであり、機構のメリットと負担が紙一重であることを示している。カタログ上は魅力的に見えるが、実際には「重い」「遅い」「壊れやすい」という不満も一定数存在する。

スライドドアスイッチの写真
メリット・デメリットがある電動スライドドア

このように、電動スライドドアは、小さな子どもがいる家庭や、毎日の送迎で頻繁に乗降するユーザーにとっては使い勝手の良い機能であるといえる。

一方で、必ずしもすべてのユーザーにとって最適な選択肢であるとは言い切れず、たとえば単身利用や週末ドライブ中心のユーザーにとっては、その利便性よりも、かえってコストや重量増加の方が負担となる場合もあるといえそうである。

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電動スライドドアは「必須装備」ではなく、「ライフスタイルに合わせて選ぶ機能」であるといえる。その選択の分岐点は、「利便性とコストのバランスをどう取るか」にある。

装備を増やすことが必ずしも快適さにつながるとは限らないため、日常の使い方を見極めたうえでその必要性を判断することが重要である。