グリルもローダウン化も素直にカッコいい

今回追加設定された新グレード「RS」は、ヴェゼルのなかで最上級グレードとなる。パワートレーンはe:HEVのみ。駆動方式はFFと4WDがある。今回の撮影会は、静的な外観・内装のデザインのみとなっている。
撮影にあたり、クルマに乗り込めるが、動かしはホンダスタッフのみが可能という限られた条件となっていた。したがって動的な報告はできないことはあらかじめお知らせしておく。

外観については撮影会の前に、すでにホンダから写真発表されていたので初見参という驚きもなく実車確認というカタチとなった。予告写真を見た際は、「ああ普通にグリルつけたのか、面白味ないなぁ」という感想だった。2代目ヴェゼルを初めて見たときは、同色グリルに戸惑った筆者のくせに、今ではオプションのグリルに変更している街中のヴェゼルを見ると「デザイナーの意図がわかっていないなぁ、グリル付けるなら他のクルマ買えばいいのに」などと勝手なことを思っている(それぞれの楽しみ方があるのはわかっていますので反論しないでくださいませ)。

で、RSの実車を見てどうだったかというと、素直にカッコ良いと思った。グリルのモールド形状に違いはあるが、発売とはならなかったヴェゼル・モデューロXに似ていると感じた。
RS専用の外観は、フロントグリル/フロントバンパーロワーグリル+専用バンパーモールディング/ドアロワーガーニッシュ/リヤバンパーモールディング/RSエンブレム/ベルリナブラック+ダーク切削クリアのアルミホイール/シャークフィンレスアンテナとなっている。これらZが割と丸みを帯びたスラント形状のバンパー形状に対しRSは少し角ばった形で大型化されている。

全幅は変わらないが、全長はe:HEV Z(4,340mm)に対しRSは4,385mmと45mm長くなっている。このバンパー形状の変更とともにカッコ良さに寄与しているのが、今回のRSのポイントであるローダウン化だ。RS専用ローダウンサスペンションで-15mm下げている。さらに屋根上のシャークフィンをなくしリヤガラスにプリントアンテナに変更したことで-30mmとZグレード1,590mmに対しRSは1,545mmと45mm全高を下げている。セダンやクーペをローダウンするのはカッコ良さへの常とう手段だが、SUVであるVEZELでもフチまで黒のフロントグリルとバンパー形状の変更も相まって下方向への安定感も増しローダウン化はカッコよく成功しているように思う。
ヴェゼルのタイヤはミシュラン・プライマシー4がベスト?

今回このローダウンし全高1,545mmを実現したことで高さ制限(1,550mm以下)の立体駐車場に入庫できるようになったこともホンダ側は大きなポイントと説明するのだが、筆者としてはいまひとつピントこない。撮影会場に立体駐車場を模したブースをわざわざ用意していたほどだが、都内在住の筆者であるが、e:HEV Zでも立体駐車場に入れられず困ったことがないからだ。昭和50年代以前の古い建物の立体駐車場は入らないことが多いように思うが、平成以降のマンションや建物なら1,600mm以下なら入るのではないか。まあホンダが声高に言うのだからまだまだ世の中には1,550mm以下じゃないと入らずSUVを買いたくても買えない方が多いということなのだろう。

ちなみにAIに聞いてみたところ1998年以降の機械式立体駐車場ならハイルーフ車に対応しているものが多いそうだ。
さて筆者が気になる装着タイヤ銘柄は、FF/4WDともミシュラン・プライマシー4だった。RS開発担当者によるとローダウンの専用サスペンション(スプリング高-15mm、ダンパー特性変更)にはこのタイヤがバランスよくチューニングもしやすかったということだ。RSのアルミホイールは、色付けが違うだけでZと同じもの。結局のところヴェゼルに一番合うタイヤはミシュラン・プライマシー4なんじゃないの!と筆者e:HEV Z FFにこのタイヤが付いてこなかったのが残念に思えてならなかった。

ローダウン化により操縦安定性と軽快性を向上させるため電動パワーステアリングは専用セッティングを施している。ハンドリングに振った部分があるなか、動力性能は変えた部分があるのか尋ねたが特にそれについては明確な話を引き出せなかった。カタログスペック上は、ZもRSも出力はまったく同じ、違いはローダウン化による空力の向上によりRSが0.1km/L燃費が良くなっているだけだ。撮影の占有時間が20分間と短いため深堀りできていないので、もしかしたら何かあったかもしれないが、室内撮影する際メーターパネルの表示切替の操作をしてみたが、RS専用のものが特にあるわけでもなさそうだった。
RSらしい走りは期待できるか?
できればSPORTSモードでは、XやZグレードよりもモーターの電池出力を開放してよりモーターによる加速感を味わうことができるセッティングになっていればうれしい。正直、現行ヴェゼルは先代ヴェゼルよりも瞬発力が劣っている。0-100km/hの到達時間が先代ヴェゼルが8秒弱だったのに対し、現行ヴェゼルは10秒弱とかなりかったるいのだ。
先代ヴェゼルにもRSグレードがあったが、こちらは1.5Lのターボ車で動力性能はシリーズ随一だった。現行CIVIC RSも1.5Lターボと走りに振られているがいずれもガソリン車だ。ヴェゼルと基本システムを同じとする現行FIT e:HEVにもRSがある。こちらはベースグレードにはないNORMAL/SPORT/ECONといったドライブモードがありRS特有の装備があるが、ヴェゼルにはすでにNORMAL/ SPORT/ECONのドライブモードが備えられているので、果たしてここに、RSならではのセッティングが施されているのか、期待したいところだ。近いうちに試乗会か広報車の用意がなされるであろうからいずれその答えがわかるはず、その機会が得られれば報告したい。

内装に関しては、黒にレッドステッチやラインを随所に使ったスポーツラインの王道的な仕上がりとなっていて好感が持てた。筆者自体は、黒内装が好きではなく、ヴェゼルならe:HEV Z PLaYパッケージの明るい内装色が本来好みではあるが、こちらのライトブルーの飾色ラインが気に入らず、内装ならXグレードのHuNTパッケージが好みでこれがZにあれば良かったのにと常々思っている。ことRSに関しては、グレードの性格上しっくりくる黒にレッドステッチが正解だろう。

今回の撮影会ではイメージカラーのプレミアムクリスタルレッド・メタリック、そしてシーベットブルー・パーツ、スレートグレー・パールの3色のRSが用意されていた。あくまで筆者の個人的な好みを云えば黒のフロントグリルが浮いて見えない濃い目のボディ色が合うように感じた。筆者VEZELのスレートグレー・パールはRSより、同色グリルのグレードの方が似合いこの色にして良かったと改めて思った。
ヴェゼルRS、魅力的だがちょっと高くない?

魅力的なRSの値段は、標準でHONDAコネクテッドナビが装着されているとはいえFFで374万8800円、4WDで396万8800円とBセグメントとしてはかなり高額だ。オプション品や諸経費を入れると400万円を超えてしまう。Cセグメントとクラスが違うもののライバル車となるカローラクロスGRスポーツは389万5000 円だ。こちらは下のグレードと搭載エンジンの変更など明らかに差別化しスポーツ向け装備を満載しており魅力的だ。これと比較するとヴェゼルRSはそこまでの違いをつけずにこの価格はちょっとどうなのと思うところも正直ある。
しかし、ヴェゼルに限らず最近のクルマの価格高騰は激しい。ヴェゼルも筆者がこの春購入した時にもすでに値上がりしていたが、RSの発表に合わせ既存のグレードもしれっとこの10月に値上げしている。筆者のヴェゼルe:HEV Z FFで319万8800円だったのが326万8100円と7万円弱高くなっている。円安による物価高騰で仕方ないが最近のHONDAはクルマ業界の値上げリーダーになっていないかと思う筆者であった。


マイナーチェンジ後のヴェゼル e:HEV、まさか“あの装備”がなくなっているとは! | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム