道路交通法が定める「積載物のはみ出し」基準

日本の「道路交通法施行令」第22条第4号では、車両に積載する物の大きさや積載方法について明確な制限が定められている。これは道路交通の安全確保と車両の安定走行を目的としたものであり、特にはみ出し積載を行う際には厳守が求められる。

基本となる3つの上限値は以下の通り。

  • 前後方向のはみ出し:車体全長の10分の1(10%)以内
  • 左右方向のはみ出し:車体幅の10分の1(10%)以内
  • 高さの上限:普通自動車では地上から積載物の最上端まで3.8メートル以内(軽自動車・三輪車は2.5メートル以内)

2022年5月13日の法改正で、左右方向のはみ出しも10%まで認められるように緩和された。さらに、この改正では「車体の長さおよび幅の1.2倍」までであれば、制限外積載許可を申請せずに積載できる範囲が拡大されている。

つまり、

  • 「前後・左右のはみ出し10%以内」
  • 「全長・全幅が車両の1.2倍以内」

という2つの条件を同時に満たすことで、許可なしに合法的な積載が可能となった。

アウトドア装備で積載する際の実際の目安

アウトドア装備で積載する際の実際の目安

たとえば、全長4.0メートル・全幅1.7メートルの普通乗用車を想定してみる。

  • 前後方向:4.0m × 10% = 0.4m(40センチ)車体前後に最大約40センチまではみ出してもOK。
  • 左右方向:1.7m × 10% = 0.17m(17センチ)各側それぞれ最大17センチ以内のはみ出しが許容される。
  • 全体寸法の上限:車体全長 4.8m(=4.0m×1.2)以内/全幅 2.04m(=1.7m×1.2)以内であれば、許可不要。
  • 高さ方向:地上から3.8m以内(普通車の場合)。

ただし、立体駐車場やガソリンスタンドの屋根、トンネルなど、実際の走行環境ではさらに低い制限がある。積載前に必ず高さを測り、実走ルートで問題がないか確認したい。

違反となるケースとそのリスク

では、どのような積載が法律違反になるのだろうか。代表的なパターンを確認していく。

たとえば全長4mの車で前後に50cm以上出ている、はみ出し量が10%を超える場合はアウト。リアキャリアに長尺のボードや自転車を載せる場合は特に注意が必要だ。

次に車体全長4.0mの車で4.9mを超える積載、全幅1.7mで2.05mを超える積載は、制限外積載許可なしでは違反となる。

また積載物が後方視界をふさいだり、振動で落下・飛散するような状態は「積載方法違反」として処罰の対象となる。

荷物が脱落して事故を起こした場合は、道路交通法第75条の10(積載の制限)違反だけでなく、過失運転致傷罪などに問われる可能性もあるため注意が必要だ。

1.2倍を超える積載をする場合は、警察署で「制限外積載許可」を申請する必要がある。この手続きを怠ると、「積載物大きさ制限超過」または「積載方法違反」として反則金・違反点数の対象になる。

普通車の場合、反則金は6,000円前後、違反点数は1点が目安とされる。

安全に積むための基本ルールと走行時の注意点

前後左右のはみ出しは、車体の10%以内に収め、全体寸法は車体の1.2倍を超えないようにする。

安全に積むためのポイントとして押さえたいのは、数値上の基準と実際の走行バランスの両方だ。前後・左右のはみ出しはともに車体の10%以内に収め、全体寸法は車体の1.2倍を超えないようにすることが基本となる。

荷物はラッシングベルトなどで確実に固定し、走行中の振動や風圧で動かないようにする。運転席から後方視界を確保し、夜間は反射材や赤旗などで視認性を高めておくと安全性がぐっと上がる。

また、積載バランスが崩れるとハンドル操作や制動距離に影響が出る。重い荷物はできるだけ車体中央・低い位置に配置し、走行中は急ハンドルや急ブレーキを避けるよう心がけたい。

自由と安全、そのバランスを忘れずに

アウトドアやレジャーの自由を広げてくれるキャリア積載。しかし、その便利さの裏には、守るべきルールが存在する。数センチのはみ出しでも、視界を妨げたり、他車に危険を及ぼす可能性があるのが公道という場所である。

ルーフキャリアやリアキャリアは、単なる装備ではなく「責任を伴う装備」だ。前後・左右10%以内、そして全長・全幅1.2倍以内という数値は、安全を守るための許された自由の範囲でもある。

自然の中へ、未知の場所へ、愛車とともに出かける喜び。その一歩を踏み出す前に、もう一度積載を確認してみることを推奨する。

「少しくらい大丈夫」ではなく、「これで安全だ」と言い切れる準備をしてこそ、真に自由なドライブが待っている。