違いはドア枚数だけではない 静粛性や実用性が格段に向上

1970年に軽自動車としてスタートしたジムニーだが、ほどなくして輸出向けに800㏄エンジン搭載車がつくられ、それを国内向けに仕立て直した〝ジムニー8(エイト)〞が誕生。以降、88年〜93年の空白期間はあるものの、登録車版のジムニーはつくり続けられている。

エクステリア

ノマドはシエラよりも全長とホイールベースを340㎜延ばし、伸びやかなスタイリングを実現。最小回転半径は、シエラの4.9mに対して0.8mアップの5.7mになっている。最小回転半径はノマド・5.7m。

もともと軽ジムニーのボディとフレームをそのまま使い、ワイドトレッドのアクスルと大きな排気量のエンジンを搭載した成り立ちだったため、ボディタイプは長らく3ドア車のみだった。それが2023年に輸出向けに5ドア車がつくられ、25年に日本にも導入されて話題となったのは、多くの人の知るところだろう。念のため書いておくと、3ドア版のサブネームが〝シエラ〞で、5ドア版のそれが〝ノマド〞である。

乗降性

そう書くと「シエラを単純に長くしたのがノマド」と受け取られそうだが、実はキャラクターも結構違う。3ドア車はもともと4ナンバーバンとして誕生したため、5ナンバー化された後もリヤシートは簡素。座り心地よりも、折り畳んだ際にフラットになることが優先されており、それは現在のシエラにも継承されている。車中泊する際にも、凹凸を埋める程度で済む。一方のノマドは、新興国向けのファミリーカーとして誕生。後席は大人の長時間乗車にも耐えられるよう、クッションが厚くつくられており、背もたれは2段階のリクライニングができる。反面、背もたれを折り畳んでも水平にはならないし、ラゲッジフロアとの段差も残ってしまう。

インストルメントパネル

シエラから大きな変更はなく、機能的で操作性の高いつくりは健在。メーターのイラストも5ドア化され、ACC機能と後方誤発進抑制、一時停止標識の表示を追加。ノマドはオートエアコンと本革巻きステアリングを標準化する。

だから、車中泊できるようにするには、なにがしかの工夫が必要になる。もっとも、そうやって工夫するのもジムニーの楽しみ方のひとつ。背もたれさえ水平まで倒せれば(裏技は内緒)、ラゲッジフロアとの段差はアクセサリーで埋められる。ドライブフィールの面では、まずノマドの方が車内は静か。エンジンルームとキャビンを隔てる壁に貼った吸音材はシエラより厚く、フロアカーペットにも吸音フェルト一体式を採用。ルーフライニングの吸音材も面積を広げているため、後席乗員との会話も問題なくできる。

居住性

操縦安定性のキャラクターも結構違う。ホイールベースが短いシエラはお尻を中心に向きを変える感覚があるし、横風安定性なども「それなり」なので、いかにも特殊なクルマに乗っている感がある。一方でホイールベースが340㎜長く、車重も100㎏重いノマドは、動きが全体にゆったりしており、直進安定性も良好。リジッドアクスル式サスペンション特有の揺すられ感はあるものの、普通のクルマから乗り換えても違和感は少ない。

うれしい装備

フロア、座面ともに高めなので、助手席前の乗降グリップも使うと小柄な人でもスムーズに乗り込めるはず。悪路走破時などで大きな揺れに遭遇してもこの乗降グリップで身体を支えることができる。
5ドア化されたノマドは、シエラのクォーターウインドウに対し、リヤサイドウインドウを備える。前の2/3程度は開閉も可能で、開放感の高さに寄与するだけでなく、換気する際にも重宝する。
月間販売台数   2881台(24年11月~25年4月平均値)
現行型発表    18年7月( ジムニー ノマド追加 25年1月)
WLTCモード燃費  15.4㎞/ℓ※「JL」「JC」の5速MT車
 

ラゲッジルーム

ただし注意点もある。ひとつは5ドア化したノマドでも、乗車定員は4名であること。ふたつ目は、ノマドは最小回転半径が5.7mと、2リッターミニバン並みに大きいこと。ボディの見切りは良いし、フロントオーバーハングが短いので、もて余すことはないはずだが、慣れるまでは「思ったより小回りが利かないな」と感じるはずだ。三つ目は、燃費がコンパクトカーの水準に達していないこと。特にAT車はモード燃費の8掛けくらいとなるので、ガソリン高騰時代には少々痛い。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.168「2025-2026年 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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