1975年式マツダ・コスモAPリミテッド。

10月19日に埼玉県川島町で開催された「CAR FESTIVAL IN KAWAJIMA」には、あまりお目にかかることのない珍しいクルマがエントリーしていた。前回紹介したスバルR-2バンやマツダ・シャンテなどもそうだが、今回はロータリー車であるコスモAPを紹介したい。というのも、コスモが展示されることは少ないうえに、貴重な二桁ナンバーを維持しているからだ。

木製パネルを自作して雰囲気を変えた室内。

「練馬56」で始まるナンバープレートを見た時、「これはもしや新車からの1オーナー車?」と思い近付いてみた。この日は小雨が降ったり止んだりで生憎の空模様。そのためだろう、コスモの後ろに大きなパラソルを広げているオーナーを発見。近付いて声をかけようとすると、以前に取材したことがある仁平時光さんが奥様と座られていた。仁平さんには以前にフロンテクーペを取材させていただいた。その際にセルボも所有されていて拝見させていただいていた。だから「なぜコスモ?」と思い質問してみると「兄が乗っていたクルマなんです」との答え。

AT車だとメーターパネルにシフトインジケーターがある。

お兄さんもクルマ好きだったそうで、コスモAPが発売されるとすぐさまディーラーで契約。コスモの発売が1975年10月だったから、実は75年式のコスモは多くはない。発売と同時くらいに注文しないと年内の納車は難しかったはず。というのもコスモAPは前身であるコスモスポーツが1972年9月に生産を終了してからモデルチェンジすることなく途絶えていたから。その間、サバンナやカペラでロータリーエンジンは存続していたものの、排ガス規制やオイルショックなどによりロータリーエンジンには逆風が吹く時期だった。

エアコンを追加して真夏でも快適に乗ることができる。

だからロータリーエンジンを搭載するフラッグシップを待つファンも多かった。仁平さんのお兄さんもその一人だったのだろう。逆風が吹き荒れる中、マツダは排ガス再燃焼装備であるサーマルリアクターや2次エア供給機構を見直した低公害技術をREAPS(RE ANTI POLLUTION SYSTEM)と名付けた。この技術により燃費・排ガス性能ともに向上され、新型13Bエンジンを開発してコスモAPに搭載して発売されたのだ。

シフトノブとサイドブレーキレバーも塗装し直している。

コスモAPは4種類のグレードからスタートしたが、仁平さんのお兄さんは最上級グレードであるリミテッドを選ばれている。しかもボディカラーはサンライズレッド。これは当時のテレビCMに登場する仕様であり、とても話題となったもの。コスモスポーツとは違い高級スペシャルティカーといった風情で、6ライトのスタイリッシュなボディデザインも好評だった。

天張を外して自ら掃除してあるので非常にキレイ。

フロンテクーペとセルボを長く楽しまれてきた仁平さんだが、当時からお兄さんに言われてコスモの面倒も見てきた。まず変更したのはステアリングホイール。今も装着されているMOMO製のウッドタイプを選んだのだが、そのままだとあまり似合わないと感じた。そこで仁平さんはメーターパネルのウッドをステアリングと似た色に変更することにした。面積が広いため1枚板では難しく2枚になってしまったが、ニスを7回塗ることでステアリングと似た風情にすることに成功。さらにはシフトノブとサイドブレーキレバーも塗り直して光沢を維持させることにしたのだ。

風切り音が入るためウエザーストリップにゴムを追加して対処した。

さらには経年によりシートや天張が汚れてきた。そこでシートと天張を外して自宅の風呂場で洗濯してしまう。そのため今見ても清潔感溢れるインテリアとなっている。洗濯したシートには汚れの付着を予防するため、これまたお手製のカバーをかけている。自分でできることは何でもしてしまうのが仁平さんの流儀なのだ。

エンジンとミッションをFC3SサバンナRX-7のものに換装している。

現在74歳の仁平さんだからお兄さんはさらに高齢。そこでコスモを受け継ぐことになったのだが、その時点で走行距離は14万キロを超えていた。さすがに圧縮が低くなり本来のパワーを引き出せない。そこでオーバーホールするのかと思いきや、同じ13B型として継続生産されたFC3SサバンナRX-7のものに換装してしまうことを考えた。より新しいエンジンであれば性能・耐久性ともに引き上げられているはずだし、何より部品も確保しやすくなる。

載せ替えた日付を書き入れている。

さらに新しい(といってもFC3S用なので30年以上前のものだが)エンジンなのでエアコンも使える。補機類ごと移植して酷暑が続いた2025年の夏も快適に走らせることができたそうだ。ちなみに同じ型式のエンジンであれば載せ換えたとしても改造申請は不要。年式に合わせた排ガス装置が揃っていれば、そのまま継続車検を受けることができる。新車の頃から面倒を見てきたクルマなので、仁平さんの愛着もひとしお。今でもフロンテクーペとセルボは維持しているが、エアコンはおろかクーラーすら装備されていないので暑い時期はコスモばかり乗っているそうだ。

エンジンとミッションを変えたものの特徴的なマフラーは新車時のものを使っている。