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自衛隊新戦力図鑑戦闘機と一緒に戦う無人機の実現に向けて
11月中旬、都内にて防衛装備庁による技術シンポジウムが開催され、「遠隔操作型支援機技術の研究」で使用された無人実験機の実機が初めて展示された。この研究は、有人戦闘機と連携して飛行する無人機を実現するための技術的課題――具体的には、無人機の自律的な飛行経路生成技術と、有人機パイロットの負担が少ない遠隔操作技術、この2点に取り組むものだ。

まず、飛行経路生成技術は、無人機が自ら飛行経路を計算・生成し、最適なものを選択し、その経路に沿って飛行するための技術。これまで無人機の飛行制御では、事前に設定したウェイポイント(通過点)を辿る方法があったが、これでは空対空戦闘のような刻々と変化する状況には対応できない。そこで、必要な条件(たとえば僚機や目標機との相対的な位置や距離など)を指示することで、無人機自身に飛行経路を生成させた。無人機は幾通りもの経路を生成し、最適と判断した経路に沿って機体を制御する。

“自律的”と書くと、人工知能(AI)と思われるかもしれないが、これはプログラムと条件付けによるもので、AIは使用していない。一方でAI技術を無人機に適用するための研究は別に行なわれており、将来的には状況認識や行動判断についてAIの活用が想定されているようだ。

パイロットの負担が少ない操作方法は「音声」
次に遠隔操作技術だが、「ワークロード低減」――つまり人間の負担軽減が課題となっている。有人戦闘機パイロットは、当然ながら自機を操縦しなければいけないため、無人機への指示は負担の少ないものである必要がある。そこで本研究では音声入力による操作が研究されている。
試験飛行では、戦闘機ではなくヘリコプターを用いて、パイロットが無人機に対して、割り振られた固有の名前(例:アルファ1、アルファ2など)と、事前に登録した命令語句を組み合わせて、無人機を操作操作した。また、無人機からの情報・報告はウェアラブルなAR(拡張現実)メガネに投影することで、専用モニターなどを見る手間を省いている。

現在、日本は英伊と組んで次世代戦闘機計画「GCAP」を進めており、2035年の配備開始を目指している。将来の戦いにおいて無人機の活用は不可欠であり、単に数的劣勢を補うだけでなく、戦闘の様相を変えるゲームチェンジャーとなることが期待されている。本研究は、その実現に向けた確かな一歩であり、将来の航空戦力のかたちを大きく変えることになるだろう。
