空気が澄んで景色が美しい

冬の空気は湿度が低く、チリや水蒸気が少ないため、景色の透明度が一年で最も高くなる。山の稜線や遠くの街明かりまでくっきりと見え、まるで景色そのものが磨き上げられたように感じられるほどだ。

そんな澄んだ空気の中をオープンカーで走れば、頭上いっぱいに広がる冬の青空や、夜には手が届きそうなほど鮮明な星空をダイレクトに味わえる。

さらに、朝焼けや夕暮れ時の淡いグラデーションが車内へゆっくり流れ込んでくる感覚は、屋根を閉めた車では決して得られない。

冬特有のクリアな空気とオープンカーの開放感が重なり合うことで、走るたびに風景が体感する景色へと変わっていく。まさに冬ならではの特別なドライブ体験といえるだろう。

オープンカーは“冬でも寒くない”ように設計されている

ホンダのS2000には、腰下全体を暖めるエアコンのエアコンのオープンモードが装備されていた。

現代のオープンカーは、屋根を開けても寒さを感じにくいように細かな工夫が施されている。

強力なヒーターに加え、背中から身体を温めるシートヒーター、首元を心地よく温風で包み込むエアスカーフ、そして走行風の巻き込みを抑えるウインドディフレクターなど、冬季のオープンドライブを想定した装備が充実しているためだ。

こうした機能が組み合わさることで、気温が5〜10℃ほどの環境であっても、首元や背中、足元が効率よく温められ、屋根を開けて走っても快適に過ごせる。冬でも寒さに耐えるというイメージとは大きく異なり、むしろポカポカとした心地よさと澄んだ空気の爽快感を同時に味わえるのが、最新のオープンカーの魅力と言える。

夏よりも身体が快適

夏のオープンドライブは、想像以上に過酷だ。

直射日光をまともに受ければ車内温度は一気に上昇し、走行中はもちろん、信号待ちではあっという間に汗が噴き出してしまう。開放感よりも暑さが先に勝ってしまい、屋根を開けるどころではないという状況も珍しくない。

それに比べて冬のオープンドライブは、日差しによる気温の上がり方がゆるやかで、外気の冷たさと太陽の暖かさがちょうど良いバランスを保ってくれる。むしろ肌にあたる陽光が心地よく、寒さというよりぬくもりを感じる時間が多い。

特に日中の時間帯は、冷たい空気の中に太陽の暖かさが重なり、まるで自然のヒーターに包まれているかのような感覚が生まれる。オープンカーの魅力をもっとも快適に味わえるのは、実はこうした冬の晴れ間なのだ。

虫がいない・花粉が少ない・匂いも少ない

オープンカーの弱点としてよく指摘されるのが、走行中に虫が入り込んでしまうという問題だ。

しかし冬は虫がほとんど姿を見せないため、この悩みが一気に解消される。季節の中でも冬は、オープンカーにとって最もストレスのない時期と言っていい。

さらに、春先に訪れる花粉の飛散もなく、夏の草木の強い匂いや、梅雨時期のまとわりつくような湿気もない。冬の乾いた軽い空気は、風を切って走る際の心地よさを引き立て、オープンドライブの爽快感をよりいっそう際立たせてくれる。

余計な刺激や不快感が少ない冬の空気は、まさにオープンカーが本領を発揮するための理想的な環境といえる。

冬のオープンドライブで気をつけたいポイント

冬のオープンドライブで気をつけたいポイント

他の季節に比べ、冬の季節がオープンカーが適していることを伝えてきが、冬ならではの注意点も忘れてはいけない。

とくに山間部では路面が凍結している可能性があり、日中は問題なくても夕方以降になると気温が一気に下がり、急激に走行環境が変わることがある。また、屋根を開けたまま長時間走り続けると、どれだけ装備が整っていても身体が冷えやすくなるため、手袋やネックウォーマーなどの防寒対策は欠かせない。

冬でも快適だから大丈夫という油断は禁物で、状況次第では素直に屋根を閉める判断が重要だ。快適さと安全性を両立させるためには、その時々の気温や路面状況をしっかり見極めながら走ることが求められる。

冬こそ試したいオープンカーの魅力

寒い時期のオープン走行を、ぜひ一度試してみてほしい。

冬ならではの澄んだ空気や落ち着いた街の雰囲気は、屋根を開けてこそ味わえる魅力に満ちている。ただし、最初から無理をして長距離ドライブに挑むのは避けたい。身体が冷えれば集中力も奪われ、せっかくの体験が台無しになりかねないからである。

まずは近所をゆっくり走りながら、冬の風がどの程度肌に触れるのか、日差しがどのくらい暖かさを補ってくれるのかを確かめてみるのがよい。そこから、自分に必要な防寒具や快適に走るための工夫が自然と見えてくるはずだ。冬のオープンドライブを楽しむ鍵は、慣れるための小さな一歩からである。