免許保有者だからこそ「運転適格性の欠如」が問われる

道路交通法第103条および第103条の2には、「免許を受けたものが自動車等の運転に関し、交通の危険を生じさせる行為があった場合、免許を停止あるいは取り消すことができる」といった旨が記されている。
ここでいう「自動車等」には軽車両である自転車や、特定小型原動機付自転車である電動キックボードも含まれる。また、「交通の危険を生じさせる状態」は「危険性帯有」と呼ばれており、免許の行政処分を決定するうえでの重要な判断基準にもなっている。
飲酒運転や悪質なひき逃げといった重大な違反行為は、例えそれが自転車の運転中であったとしても、運転者としての適格性を著しく欠く事実だ。
こうした運転適格性の欠如は、将来的に自動車等の運転においても交通の危険を生じさせる可能性が高いものとして、クルマの運転免許証にも影響する。
つまり自動車運転免許は、クルマやバイクが運転できる単純な許可証ではなく、車両全般を安全に運転する能力と意識を持った人物とみなす「運転適格証明書」でもあるということだ。
免許停止処分を受けた人が増加中!その背景にあるのは

現に、自転車の交通違反による自動車運転免許の停止処分件数は増加傾向にある。
直近では、2025年9月に飲酒をして自転車を運転していた広島の男性が検挙され免停処分を受けた。大阪では2025年1月〜9月まで、自転車の違反による免停が347件に上るとのことだ。
この背景には、2024年7月1日から導入された特定小型原動機付自転車の区分制度や、2024年11月の改正道交法施行により自転車の携帯電話使用(ながら運転)や酒気帯び運転の罰則整備が進められたことが影響しているとみられる。
これらの法改正に伴い、警察による危険運転への取締りが強化され、結果として自転車の重大な交通違反に対する処分件数が増加しているのだろう。
2026年4月から導入予定の自転車の交通反則通告制度(青切符)では、反則点数が付与されることはないため、運転免許への影響はない。
しかし、酒気帯び運転のような危険な行為が認められた場合は、この限りではない。免停処分を受けた場合、その期間は最長で180日間にも及ぶ。
自転車だけでなく特定小型原動機付自転車も要注意!

LUUPなどのシェアサービスなどに用いられる電動キックボードについても、酒気帯び運転などの違反行為を犯した場合、自転車と同様に自動車運転免許の停止対象だ。
スロットルをひねるだけで、それなりの速度が出てしまう電動キックボードは、自転車よりもさらに危険な乗り物になってしまう。
自転車を含め、現在のところ免許取り消しにまで至ったケースはないようだが、飲酒運転での人身事故や、その他の危険行為が何度も繰り返される場合は、免許取消処分が下される可能性は十分にある。
一見軽微な違反に思える「通行区分違反」も16類型ある危険行為のひとつに含まれており、繰り返し行われる場合は運転免許に影響がないとも言い切れない。
自転車はクルマよりも気軽に乗れる乗り物であるが交通ルールは共通であり、「自転車なら大丈夫」はすでに過去の話だ。運転免許保有者は、自転車に乗る際にもクルマの運転と同様に交通ルールの尊守が求められる。
