寒冷地仕様車とは低温/降雪対策されたクルマ

大容量バッテリーとエンジン冷却水の濃度調整はどの寒冷地仕様でも共通するが、その他の細かな仕様や装備はメーカーや車種によって大きく異なる。

「寒冷地仕様車」は、標準車に専用装備を追加することで、寒さや雪への対策を整えたクルマだ。

雪に強い4WDのオフロードSUVでも、専用の装備がなければ寒冷地仕様車とは言えない。雪に弱いFRスポーツカーでも、専用装備が整っていれば寒冷地仕様車だ。違いは車種そのものではなく、あくまで追加装備によるクルマの仕様を指す。

低温環境下ではバッテリーの性能が低下しやすいため、大容量バッテリーは冬場の安定したエンジンスタートに不可欠だ。車種によっては、セルモーターが低温始動性に優れたものに交換されている場合もある。

そのほか、クーラント(エンジン冷却水)の濃度を高めに設定することで凍結防止性能が強化されるほか、汚れやすい窓を頻繁に洗浄できるようにウォッシャータンクも大容量化されているのが一般的だ。

外装には、ワイパーブレードの凍り付きを防ぐための熱線入りフロントガラスやデアイサー機能、霜による後方視界不良を防ぐヒーテッドドアミラーなどの電熱装備が備わる場合が多い。

こうした装備による消費電力増加への備えとして、オルタネーター(発電機)の発電能力が高められている場合もある。

さらに車内暖房機能の強化や、悪天候時の被視認性を高めるリアフォグランプなどが追加される点も寒冷地仕様の特徴と言えるだろう。メーカーや車種によっては、ADASのセンサーに雪対策のカバーが備わる場合もある。

なお、スバルやホンダ、マツダは設計段階で寒冷地での使用を考慮した仕様となっており、寒冷地仕様に該当するオプションやグレードを設けていない車種が多い。スズキは、車種によって設定が大きく異なる傾向だ。輸入車は寒冷地仕様が標準と考えてよいだろう。

寒冷地仕様を選ぶメリットとデメリット 

寒冷地仕様を選ぶメリットは、冬季の安全性と利便性の向上だ。デメリットは標準車に比べて数万円引き上がる価格に加え、大容量バッテリー搭載などによりメンテナンス費用が若干増加する点だ。

寒冷地仕様車は、降雪地や寒冷地における冬季の安全性と利便性を高める機能が備わり、冬場の運転におけるストレスを大幅に軽減してくれる。日常的に雪が積もる地域では寒冷地仕様を選ぶのが安心といえるだろう。

とくに外気温がマイナス数十℃にまで低下する北海道の内陸部や、標高の高い地域では寒冷地装備が必須と言える。ただし、すべての降雪地や寒冷地で寒冷地装備が必須というわけでもない。

なにより価格が数万円ほど高くなる点は、寒冷地仕様の大きなデメリットだ。最低気温が頻繁にマイナス10℃を下回る地域でなければ、降雪地であっても寒冷地装備は不要と考えてよいだろう。

しかし比較的温暖な地域でも、寒冷地仕様車を選ぶメリットはある。

例えばトヨタのハイブリッド車などには、車内を素早く温められる電熱ヒーター(PTCヒーター)が追加される。またメーカーによっては、降雪地や寒冷地での仕様が想定される4WDグレードのみで暖房機能を充実させている場合も少なくない。

2WDではオプションとなるシートヒーターやステアリングヒーターが4WDでは標準装備であったり、後席の足元などに温風を届けるためのリアヒーターダクトが4WDにしか備わらない場合があるのが良い例だ。

後席を頻繁に利用する場合は、リアヒーターダクトの有無が快適性を大きく左右する。シートヒーターやステアリングヒーターはすぐに温まる電熱暖房であるうえ身体を直接温めるため、肌寒い時期はPTCヒーターよりも重宝する装備だ。

それほど寒くない地域であっても、寒冷地仕様や4WDを選ぶことで暖房機能が強化されるため冬季の快適性が格段に引き上がる。こうした装備の違いは、とくにコストの制約が大きい軽自動車やコンパクトカーで顕著だ。

寒がりな人には寒冷地仕様がおすすめ

寒冷地仕様に追加されるほとんどの装備は後付できないため、新車購入時にオーダーするのが得策だ。

追加される装備はメーカーや車種によって異なるが、寒冷地仕様車はエンジン始動性向上や快適性向上、安全性向上によって冬場の運転のストレスを大きく軽減してくれる。

降雪量が多い地域や最低気温がマイナス10℃を下回る地域、標高が高い地域に住んでいる人にとって、寒冷地仕様車は冬を安全で快適に乗り切るための「転ばぬ先の杖」と言ってもよいだろう。

それ以外の住まいであっても、観光やウィンタースポーツなどで頻繁に高山や雪山を訪れるユーザーなら、多少の価格差を考慮しても導入する価値は十分にある。寒がりの人や、メンテナンスに手間をかけたくない人にも寒冷地仕様車がおすすめだ。