「砂箱」に入っているのは、滑り止め用の「砂」

自治体によっては、砂に凍結防止のための融雪剤が混ぜられている場合もある。

砂箱のなかには、2.5〜5mm大に砕かれた鋭利な砂が入っている。これらを雪や氷の表面に散布することで凹凸を形成し、タイヤとの摩擦力を高めて滑り止めとして用いることがその目的だ。

クルマの往来で磨かれた路面や、気温が低下して路面が完全に凍結したアイスバーン状態では、スタッドレスタイヤでも容易にスリップを起こすため、大粒の砂による路面摩擦の増大はグリップ確保の大きな助けとなる。

箱のなかには、砂が小分けの袋やペットボトルに詰められた状態で格納されていることが一般的だが、なかにはスコップで直接取り出す方式の場合もあり、自治体や道路管理者によって形式はさまざまだ。

砂箱の設置場所は、スリップ事故が発生しやすい急勾配の坂道、交差点の手前、カーブの入り口などが中心となる。北海道では街頭にも設置され、歩行者転倒防止のための歩道の滑り止めとしても砂箱が活用されている。

勝手に使っていいの? 砂箱の使い方を解説

砂箱は誰でも無料で利用できる。もちろん、使用にあたって誰かに断りを入れる必要もない。

砂箱は、路面凍結によりクルマが発進不能になった際や、勾配を登りきれない場合に運転者が自ら使用することを前提に配備されている。つまり、砂箱は誰でも利用可能であり、事前の許可申請や料金の支払いも不要だ。

使い方は単純で、砂箱から砂が入った袋やペットボトルを取り出し、タイヤが通過する進路に沿って中身を均等に撒くだけだ。ただし、砂を一箇所に固めるのではなく、路面を薄く覆うように広げることがコツとなる。散布量は、路面がうっすら黒くなる程度が適量と言えるだろう。

難所の手前で予防的に撒くのが効果的な使い方だが、実際に砂箱を頼るようなシーンでは坂道などで立ち往生してから使うケースの方が多いはずだ。

こうした場合は、駆動輪の直前だけでなく、そこから数メートル先まで連続して撒くことで、車両が動き出すために必要な勢いを得られやすくなる。

著しい路面凍結で交通の危険があると判断される場所には、対向車線や周辺に広く散布しておくことで、他のクルマのスリップや立ち往生を防げる。道路に砂を散布する際は、クルマの往来や転倒に注意しよう。

砂はタダで使えるけれど、ただの砂ではない

冬の間に砂が枯渇している箱を発見した際は、管轄する自治体や道路管理会社へ連絡して補充してもらおう。

砂箱の砂は、その辺の砂を詰めただけのものではない。滑り止め用砂として製造された製品だ。

その製造工程は、まず採石場で岩石を集め、破砕機で細かく粉砕して2.5〜5mmの砂が滑り止め用として選別される。

その後、洗浄・乾燥・袋詰めの工程を経て、地方自治体や道路管理会社の職員によって各砂箱へ補充される。札幌市では、車道と歩道を合わせて1シーズンで約7000tもの砂が消費されるとのことだ。

散布された砂は、暖かくなり雪が融けると道路脇へ堆積して粉塵となりやすいため、春先に清掃業者によって毎シーズン回収される。一度使って角が丸くなった砂は、滑り止め用の砂としては使えないため、ゴミの埋め立て最終処分場の覆土としてリサイクルされるのが一般的だ。

無料で使える滑り止め用砂は、多くの人の多くの手間がかかっている。だからといって砂の使用量を抑える必要はない。むしろ安全のために積極的に使用したい。

雪国の安全な交通は、こうした地道な維持管理と多くの人々の労力によって支えられていることを覚えておこう。