オーバークールの原因はサーモスタット固着による「冷えすぎ」

オーバークールの原因のほとんどは、エンジンの水温を一定に保つ役割を担う「サーモスタット」の固着だ。
エンジンの冷却システムは、水温が低い状態ではサーモスタットに備わる弁を閉じて水温の上昇を促し、一定水温に達すると弁を開いて冷却水の温度を調整し、エンジンの温度を一定に保つ仕組みになっている。
つまりサーモスタットは、エンジンとラジエーターの間を取り持つ温度の調整役と言ってよいだろう。
固着や故障によりサーモスタットが開きっぱなしになってしまうと、ラジエーターで冷やされた冷却水が常にエンジンに送られることで水温が上がりづらくなり、暖機完了までの時間が延びる。
とくに水温が上がりづらい寒い時期は、走行風によって冷やされた冷却水がエンジンに流れ込むことで、走行中に水温がどんどん下がっていく場合もある。
以上がオーバークールの典型的な症状だ。この状態でも問題なく走行できてしまうため見落とされがちであるが、オーバークール状態でのエンジン稼働はクルマとドライバーにさまざまなデメリットをもたらす。
水温警告灯が消えないだけじゃない!水温が上がらないデメリット

オーバークールのもっとも顕著なデメリットは、車内ヒーター温度の低下と燃費の悪化だ。
クルマのヒーターはエンジンで温められた冷却水を熱源としているため、冷却水の温度が低ければヒーターから出る温風の温度も下がる。これにより室内が暖まりづらくなるうえ、フロントガラスの曇りや凍結も解消しづらくなる。
またエンジンが冷えた状態では、より早く水温を上げるためにエンジンコンピューターが燃料噴射量を増やすように制御するため、エンジン出力や燃費性能も低下してしまう。
水温上昇が鈍ることで増える暖機時間は、燃料を多く使う時間の増加につながり、暖機完了後であっても水温が一定以下まで下がると再び燃料の増量補正を行う。オーバークール状態は、ほぼ常にムダに燃料を使っている状態と言ってよいだろう。
さらに、燃料と空気の理想的な比率も崩れるうえ、シリンダー内の温度低下によりスパークプラグの着火性能低下も引き起こす。これらによるエンジン出力低下もオーバークール時の燃費悪化の要因だ。
症状の放置はエンジンの寿命を縮めることも

オーバークールのデメリットは燃費悪化やヒーター温度の低下だけにとどまらず、修理せずに長期間オーバークールの状態で走行し続けると、さまざまなトラブルを招く。
濃すぎる燃料とスパークプラグの着火ミスが続くと排気管内にあるO2センサーを汚し、さらなる燃料の増量を引き起こすほか、排ガス中に増えた未燃焼ガスが触媒装置を詰まらせる可能性も出てくる。
さらにオーバークールは、エンジン本体の寿命も縮めかねない。エンジンのピストンとシリンダーの隙間(ピストンクリアランス)は、金属熱膨張を加味して適正な温度での稼働で最適な数値になるよう設計されているため、オーバークールの状態ではピストンクリアランスが適正値より広くなり異音や異常摩耗が発生しやすい。
またピストンクリアランスが増加すると、エンジンオイルの燃焼量も増えることでオイルも減りやすくなるうえ、オイル上がりを助長してマフラーから白煙も出やすくなる。
燃焼室から漏れ出すブローバイガスの量も増加してエンジンオイルの劣化を促すほか、生じた固形物質が仮にオイルラインに詰まった場合、エンジンが壊れてしまい莫大な修理費用がかかる。
さらにエンジンバルブやシリンダー内にカーボンデポジットも堆積しやすくなり、慢性的なパワーダウンを招くばかりか、エンジンを破壊しかねないプレイグニッションの原因にもなりうる。
温度上昇によりエンジンの破損に直結する夏場のオーバーヒートとは異なり、オーバークールに陥ったからといってクルマがすぐに壊れることはない。しかし、目に見えない場所では確実にエンジン周りへダメージを蓄積させていく。水温計に異変を感じたら、なるべく早く点検をしてもらおう。故障や固着ならサーモスタットを交換するだけで修理可能だ。
