車重は約808kgまで削減、開繊ドライカーボンが変える軽快感

東京オートサロン2026の西ホールに、ひときわ存在感を放つ一台がある。ロータス エキシージをベースに、外装をフルドライカーボン化したロータス エキシージ(S2)だ。手がけたのはカーボンファクトリー・ケプラ。これまでメーカーOEMやレーシングカー向けのカーボン製作を主戦場としてきた、いわば裏方の職人集団である。東京オートサロンはもちろん、一般向けイベントへの本格出展は今回が初となる。

開繊プリプレグ製ドライカーボンでフル外装化されたロータス S2エキシージ。繊維の密度と面の揃い方が、通常のカーボンとは一線を画す。

そのケプラが持つカーボン成形技術をストリートユースに落とし込んだS2エキシージは、もともと軽さとダイレクトな操作性を武器とするミッドシップスポーツだ。ケプラはその本質を崩すことなく、ボンネット、フロント/リヤカウル、ドアインナーなど外装パネルをすべてカーボンへと置換。フェンダー幅などの主要寸法は純正サイズを維持しつつ、ロータスのイメージを損なわないよう、造形はプラス/マイナスで調整してオリジナル化している。見た目を変えるためではなく、機能を積み上げるための造形が徹底されていると言っていいだろう。その結果、純正FRPから約56kgの軽量化を達成。車重は約808kgまで削減され、純正比では約120kg以上軽くなった。

最大の特徴は、使用された素材にある。ケプラが採用したのは、一般流通がほぼ存在しない競技用途向けの“開繊プリプレグ”という素材だ。格子状に配された繊維は配列が均一で、余分な樹脂を避けられるため、見た目のフラット感が強く、樹脂のムダが少ない。貼り込みや成形の難易度は格段に高くなるが、その分、軽量で面剛性に優れる。薄くてもハリを保てるため、走行中にかかる荷重もしっかりと受け止める。競技用に向いた素材だが、ケプラはこれをストリートユースの外装に大胆に採用したわけだ。

繊維束を広げた“開繊”ならではのフラットな織り目。樹脂量を抑えつつ、均一な質感を実現している。

さらに、ケプラの強みは素材だけにとどまらない。設計、データ作成、金型製作、成形、焼成までを一貫して社内で完結する体制を構築している。金型は高鏡面まで徹底的に研磨され、クリア塗装を施さずとも完成品は鏡面のような光沢を放つ。「競技用カーボン=マット」という常識を覆すこの質感は、素材の力ではなく、工程管理と金型精度の積み重ねによって生み出されているのだ。

金型を徹底的に研磨することで、クリア塗装なしでも製品表面を鏡面で仕上げることが可能。

細部を見れば、その完成度はさらに際立つ。綾織カーボンとは異なり、誤魔化しの効かない格子柄だが、曲面で角度が変化しても歪みが生じないよう丁寧に張り込まれている。これは、一枚ごとの貼り込みを見越した設計と、職人の経験値がなければ成立しない仕事である。

純正外装と比較して約57kgの軽量化を達成。重量低減は、そのまま運動性能へと直結する。

造形面でも妥協はない。フロントバンパーは純正の3分割ダクトから大型の開口部へと変更され、ロータスらしいシンプルな表情を強調。ハードトップのダクト開口部にはRを与えることで、空気が壁に当たらずスムーズに流入する構造とした。さらに、フロントフェンダーやリヤにもダクトを設け、冷却性能と空力性能を意識した造形が加えられている。

競技素材が持つ性能と、成形技術による美観を同時に成立させる――。
極めて難度の高いテーマに対する明確な回答として、この一台は東京オートサロン2026におけるカーボン技術の現在地を示す存在と言っていいだろう。