フロント周りの重量軽減を追求

街に溶け込むジェントルロータリー

3ドアファストバッククーペにロータリーエンジンを搭載し、卓越したパフォーマンスとコーナリング性能を高次元で両立したFRスポーツ…それがRX-7だ。

なかでも3代目FD3Sは、流線型のボディラインが生み出す美しい躍動感と、シーケンシャルツインターボ化された13B-REWによってパワーウエイトレシオ5kg/ps以下を実現。軽さとパワーを兼ね備えたピュアスポーツとして、多くのファンを魅了してきた。

そんなFD3Sに、免許取得前から強い憧れを抱いていたのがオーナーの太田さんだ。初めての愛車はFD3Sと決め、アルバイトで資金を積み上げ、社会人と同時に5型を手に入れた。それから20年以上、共に歩んできたかけがえのない存在である。

「当時は乗っているだけで満足できていたから、ホイール交換くらいで週末ドライブを楽しむ程度でした。ただ、トラブルでエンジン修理が必要になりまして。どうせなら速くしたいと思い、サイドポート加工にTO4Sタービンを組み合わせたチューニングをスタート。パワーアップしたことでサーキットも走るようになり、気づけば今の仕様に辿り着きました」。

経緯だけを見れば“速さ重視”のマシンにも思えるが、太田さんのコンセプトはあくまで「ジェントルチューンド」。見た目と走りを両立しながら、日常使いもこなせるバランスを追求している。

その象徴が、フロントセクションに特化した軽量化だ。低速域でも違いを体感できるよう徹底的に手を入れる一方で、インテリアには一切手を加えず快適性をキープ。アフラックスGT3のワイドボディキットを纏いながらも、あえてGTウイングは装着せず、5型純正ウイングで全体の美しさを引き立てる。

「走りはもちろん大事。でも、見た目のカッコ良さや快適性も妥協したくない。サーキットは年に数回で、メインはストリート。ゆっくり流す時間もあるから、マフラーも静かなチタン製を選んでいます」とは太田さん。

心臓部の13B-REWは、サイドポート仕様のFEEDニュルスペックにターボスマート製TS-1 5862を組み合わせ、470ps/52kgmを発揮。従来のTO4Sから変更されたこのタービンは、レスポンスと風量のバランスに優れ、軽量化によるエキマニへの負担軽減にも貢献する。

さらに、ウォータージャケット一体化やオフセットマウントラジエター、トリプルターン加工など、冷却系にも徹底的に手を入れる。ケブラーホースの採用も含め、機能性と希少性を両立したチョイスが光る。

足回りはFEED車高調「F09プロ魔王スペック」を軸に、ストリートからサーキットまで対応。ブレーキはフロントにエンドレスMONO4、リヤにはビッグローターを組み合わせ、制動力とルックスを両立する。。

ホイールはアドバンレーシングRS-DF。ストリートでは19インチ255幅、サーキットでは18インチ315幅と使い分けることで、ステージに応じた最適なパフォーマンスを引き出す。

インテリアは青を差し色にしたシンプルな仕上げ。エアコン吹き出し口やスピーカー周りにさりげなく個性を宿しつつ、快適な移動空間としての機能を重視する。ボディはスポット溶接増しやピラーバーで剛性を高めながらも、あくまで“乗れるチューニング”を貫いた。

派手さで主張するタイプではない。しかし、細部まで行き届いたアップデートによって完成度を高めたこのFD3Sは、走り・快適性・スタイルのすべてを高い次元で成立させている。

ストリートを主戦場に据えたジェントルロータリーは、今日も静かに、そして鋭く駆け抜けていく。

●取材協力:フジタエンジニアリング 大阪府堺市東区八下町1丁82-1 TEL:072-258-1313

「新車購入から30年余り」オーナーとチューナーが紡ぐFD3Sフルチューン最終章

新車から30年余り。パーツを変え、時代を越え、それでも変わらない真紅のFD3Sがある。オーナーとフジタエンジニアリングが積み重ねた時間は、衰えではなく進化を刻んだ。熟成という名の速さがここにある。

【関連リンク】
フジタエンジニアリング
http://www.fujita-eng.com