再精製基油(RRBO)とは何か

Moty’sは主力製品のM110とM110LSPIにRRBOを使いリニューアルした。緑色の「RRBO」のロゴが再精製基油を使用している証だ。

Moty’sは、モータースポーツの持続的発展に資する環境性能向上を目的として、日本で初めて再精製基油を配合したレーシングエンジンオイルを開発した。

トライボジャパンの丸山雄一会長(左)とRRBOを供給するマレーシア最大級の総合廃棄物管理企業のペンタス・フローラ社のリム・エック・フウ代表(右)

そもそも、再精製基油とは何だろうか。英語で表記すると「Re-Refined Base Oil」となるRRBO=再精製基油とは、その名前のとおり、使用済みオイルを再精製したベースオイルだ。通常のベースオイル(バージンオイル)と同じように、回収した使用済みオイルに蒸留・精製を施し、再び製品化したものである。ろ過や脱水のみを行なった再処理油とは、まったく異なる存在だ。

トライボジャパンの佐藤剛久博士。

トライボジャパンの開発責任者でもある佐藤剛久博士(工学博士)によると、

「元々、潤滑油は原油から燃料をつくった時に副産物としてできるものなのです。いままではガソリンなどの燃料をたくさんつくらなければならなかった。そうすると潤滑油もたくさん出てくるから、石油会社は潤滑油製品を作ってきたわけです。しかし、電動化を中心として省燃費化が進み、ピーク時に比べると2割から3割も燃料の消費量は少なくなっていきます。それに対して潤滑油の需要はそこまで減らない。そうすると何が起きるか? 潤滑油を造るために、わざわざ石油から潤滑油をつくれるようにしていかなくてはいけない。燃料の副産物とはだんだん言えなくなってくるという現象が、すでに起き始めています。そうすると、使用した潤滑油を回収して再生することが、今までにも増して必要な社会情勢になっています」

使用済潤滑油回収(回収率)基油への再精製燃料処理
日本73万kL60万kL(82%)0万kL(0%)56万kL(93%)
米国525万kL356万kL(68%)182万kL(35%)146万kL(28%)
欧州207万kL170万kL(82%)111万kL(54%)40万kL(19%)
出展:令和3年度燃料安定供給対策に関する調査等事業(潤滑油の安定供給に向けた原料確保の多様化に関する調査・分析事業)調査報告書、2022年3月に記載のデータを基に作成

じつは、国際的に見るとRRBOの活用はすでに進んでいる。
たとえば欧州では、使用済潤滑油の回収率は82%、うちRRBOへの再精製は54%になる。日本の場合は、使用済潤滑油73万kLに対して回収率は82%と高いものの、RRBOへの再精製はゼロ。ほとんどが再生重油として燃料になっている。

Moty’sはこの現状を打破すべく、RRBOを使用したエンジンオイルの開発に乗り出したわけだ。

Moty’sがRRBO採用に踏み切った理由

トライボジャパンの丸山秀一会長は、RRBO採用に踏み切った理由を

トライボジャパンの丸山雄一会長

「北米、ヨーロッパ等においては、回収された潤滑油は再精製基油として生まれ変わり、バージン基油と同様に使用される。このマテリアルリサイクルは、もうすでに現実のものになろうとしています。この動きはアジアにおいても急速に進んでおり、日本だけが取り残されている。そのような状況下、日本においてモータースポーツに関わる企業として我々は、その技術の環境対策を牽引するという決意のもと、今回の決定を行いました。これらの選択は、資源の有効活用、廃棄物削減、そして環境負荷の低減につながるであろう、持続可能な未来への大きな一歩だと私は考えています」

と説明する。

マレーシア最大級の総合廃棄物管理企業であるペンタス・フローラ社

とはいえ、国内ではRRBOを製造する設備は整っていない。そこで、マレーシア最大級の総合廃棄物管理企業であるペンタス・フローラ社と協力してRRBOの輸入を開始した。日本に輸入したRRBOは、中外油化工業が貯蔵・製造する。

再精製基油(RRBO)を使用することに性能面の不安はないのか、という問いに対しては、ペンタス・フローラ社のRRBOは高度精製基油のカテゴリー(Gr.Ⅱ以上)に属する高性能基油であるため、バージン油由来の基油を使用した製品と同等だという。

通常鉱油(バージン油)高度精製基油(バージン油)再処理油ペンタスフローラ社製RRBO
硫黄分300ppm以上300ppm以下規定なし300ppm以下
飽和分90%以下90%以上規定なし90%以上
蒸発性BaseGoodPoorGood
粘度特性BaseGoodPoorGood
酸化安定性BaseGoodPoorGood
ペンタス・フローラ社のRRBOハ、すべての項目で高度精製基油(バージン油)と同等の性能を示し、API(American Petroleum Institute)規格を満たしている。

RRBOを使用することでどの程度の環境負荷低減効果があるかについて、佐藤博士は「CO₂削減効果の計算は、じつはかなり難しいが6割くらいになる(4割削減)」と説明した。

今回の製品のRRBO使用率は「5割以上」(佐藤博士)。そして、RRBOを使用したエンジンオイルを回収して再精製すれば、再びRRBOへ生まれ変わらせるとのことだ。
トライボジャパンとしては、将来的には国内の協力会社や関連パートナーと連携して、回収からRRBO製造までの循環型社会を構築していくことを目指すという。日本の使用済みオイルは世界的に見ても高品質で、再精製・再利用に適しているというから、ポテンシャルは十分ありそうだ。

RRBOを使用したレーシングエンジンオイルをテストした佐々木雅弘選手。「結果から言うと、いい意味で何も変化がありませんでした。性能は何ら引けを取らず、何も変わりません。そんなところで非常に僕はモータースポーツの未来の環境に対しての提案ができるような素晴らしいオイルだなと思いました」とコメントした。

Moty’sは、主力製品のM110、M110LSPIシリーズをRRBOを使った新世代エンジンオイルとして刷新する。コスト面では、バージンオイルよりRRBOの方がやや高いが、その分を製品価格には転嫁しないという。ここにもMoty’sの本気が感じられる。

Moty’sは、単にRRBOを使うだけではなく、「大量に」使っていかないと意味がないと考えている。今後、RRBOの使用を順次拡大していく方針だという。

新製品の発表は、大阪オートメッセ会期中にインテックス大阪で行なわれた。