
インテリア空間デザイン
落ち着いた表情で、クリーンで、広々とした開放感を持った室内。
車内全体が水平基調のデザインで囲まれていて、ベルトラインも低く、クォーオーターガラスも十分に広い。この広さ感は、ガラスルーフの効果も大きく、明るい広々とした室内は3列SUVとして素晴らしい空間を提供している。


インパネ
インパネは15.4インチの縦型センターモニターを中心に両サイドへワイドに広がり、ドアへと回り込む。ドライバーの前にあるメーターはワイドなスマホ大のコンパクトなメーターで、必要十分。そしてグラフィックの処理もスマートフォンを見慣れた感覚に近く、極めて現代的で、インパネのデザインとしてはこれまでの自動車デザインの「らしさ」を感じさせつつ、過去の当たり前の表現枠を確実に出た新しいものだ。

カラー
後半のCMFデザインの紹介の中で詳説するが、インパネ、ドアトリムともに色分けのゾーンがそのまま後方まで水平に回る。センターピラートリムの色分けも整理されており、造形と色分けの計画が破綻なくコントロールされていて、その整理され洗練度を高める感覚と仕上げの高さがいかにも北欧家具のようである。
少々残念なのはセンターコンソール前方のスマホ充電が1台分しかないところ。
シートデザイン
1列目のシートはゆったりとしたサイズだが、サポート性も十分。電動シートの操作性もダイヤル一つを回転したり前後、上下に押すことで可動でき、簡単で扱いやすい。

2列目は3人がけ。しかし実際に3人座ったとすると、中央に座る人はやや所在がないだろう。

3列目は2人。2列目のシートは簡単にたため、3列目へのアプローチも十分にある。3列目は身長170cm以下が推奨されており、その範囲内では特に目立って使いにくいことはないだろう。

また今回の加飾特徴である透過ウッドの木の色の彩度が抑えられており、この色気のなさも北欧的。ただし、車格にあった表現と作り込みは確実に施されている。ドアトリムのスピーカーメッシュグリルはやや見た目と触感が気になるところ。
金属処理としては繊細に仕上げてあるのだが、見た目の薄さ感と実際に触れた時の触感が気になり高価格帯のパーツに感じることできなかった。

CMFデザイン

ボディカラー
今回取材した車両は、ボディカラーに「フォレスト・レイク」、インテリアには「チャコール/カルダモン」を組み合わせた1台。EX90のボディカラーラインナップは、いずれも北欧の豊かな自然美と最先端の塗膜技術を融合させた象徴的な構成であり、色そのものがスカンジナビアラグジュアリーの世界観を雄弁に物語っている。なかでも「フォレスト・レイク」は、一見すると端正で静けさをたたえたダークグリーンメタリックだが、光を受けると底色から清涼なターコイズブルーが鮮やかに浮かび上がり、湖面の静寂と豊かな躍動感を同時に感じさせる。この複雑な塗膜の表情が、ボディ全体の無駄を削ぎ落とした硬質なフォルムと引き締まった塊感を強調し、現代的でメカニカルな気品へと昇華させているのである。



足元を支える22インチの大型ホイールは、空力を意識したフラットで未来的な造形が印象的。ポリッシュ仕上げのアルミニウム面と繊細なダイヤモンドカット加工、そしてコントラストを成すホワイトの樹脂パーツが調和し、足元にシャープで軽快な上質感を添えている。空力要求からフラッなデザインになりがちなホイールだが、面と色の明確な切り分けにより、大径でありながら重苦しさを感じさせず、モダンな構築美を醸し出す。

インテリア
インテリアのCMFに目を向けると、単なる素材の高級感にとどまらず、空間構造と素材が高度に融合した「北欧の洗練されたミニマリズム」を感じる。


内装色「チャコール×カルダモン」のコンビネーションは、深みのるダークトーンと温かみのあるアースカラーが上質な静寂感を生み出している。水平基調で構成された広々とした空間を、対比の効いた2色がほどよく引き締め、パーツの造形や素材の切り替えが自然に調和している。ドアを開けた瞬間に飛び込んでくる色と質感のバランス。この車もまさに、そんな一目で直感的な心地よさが伝わってくるインテリアを持っている。


また、先進技術の導入により操作パネル類は大幅に削ぎ落とされ、主に中央の大型モニターとドライバー正面の小さなメーターパネルという、極めてシンプルな造形に集約された。この余白が、インテリア全体のすっきりとした静寂感を際立たせている。
しかし単調な平面に陥ることなく、ドアパネルやセンターコンソールなどの要所では、有機的な曲面と計算された陰影(シェード)によって豊かな立体感を表現。引き算の美学の中に、フラッグシップにふさわしい重厚さと気品を共存させているのだ。


このインテリアは、反射を抑えたサテン調・艶消し調の表面仕上げ(マットフィニッシュ)が全般に貫かれています。これにより、彩度を抑えたニュートラルカラーの面構成に差し込む自然光のグラデーションが美しく映える計算がなされています。

シート
今回の取材車「Ultra Twin Motor Performance」では表皮材に本革のナッパレザーを使用しているが、他グレードでは本革に代わる主力素材として、ボルボ社独自で開発されたバイオベース/リサイクル素材(松樹脂やPETボトル由来)の、滑らかでマットな光沢感を備えた非本革マテリアル「Nordico(ノルディコ)」を採用している。また、もう一つの選択肢であるウールブレンド(Tailored Wool Blend)*は、混紡の織り目が生み出す触覚的な暖かみと上質なテキスタイル感触を提供し、温もりと先端技術が共存する新しいマテリアル表現を確立している。
*この表皮材は、動物福祉(動物が虐待されず快適な環境で育てられている、痛みを伴う処置を行っていない、など)とトレーサビリティ(調達ルートが原産地まで透明化されている)が認証された30%ウールと70%ポリエステルのテキスタイル。
室内空間
頭上に広がるパノラマガラスルーフは、フレームレスに近い美しく端正なトリム処理によって、ガラスとインテリアライニングが一体化しているかのような開放感をもたらしている。さらに、FSC認証材*ウッドパネルの透過光(バックライト)から広がるアンビエント照明は、これ見よがしな主張を抑え、まるで「北欧の夜の家から漏れ出る明かり」のように優しく包み込む。これらが一体となり、空間全体に温もりと静寂をたたえた、「上質な佇まい」を醸し出している。
*FSC/Forest Stewardship Council(森林管理協議会)認証材→「地球環境や地域の森林保護、働く人々の権利に配慮して正しく管理された森林から伐採された木材」のこと。




CMFが描く世界観を実現させるために、部品構成そのものを緻密に計画している点は、CMFデザイナーとプロダクトエンジニアの、初期段階からの強い連携があってこその結果だ。これはCMFデザイナーが誰しも描く理想であり、これを形にしていくこと自体が極めて価値のあることなのである。単に「色を塗り分ける」「素材を配置する」のではなく「構造としてカラーリングを完結させる」手法は、北欧デザインの機能美とミニマリズムの極致だと感じている。
EX90のCMFは、ラグジュアリーの概念を「高価な素材と希少性」「先進機能の誇示」から「空間全体の調和と倫理的な豊かさ(静寂感・居心地の良さ)」へとシフトさせた先進的な事例である。乗員の居心地と心の調和に価値を置くアプローチは、EV時代の新しい北欧デザイン哲学がしっかりと息づいているのを感じた。
