ハイテク満載のモンスターEVを世界最速で試す

フロントエンブレムは24金製・・・
近年、台頭が目覚ましい電気自動車(EV)。環境意識の高まりと技術の進歩により、EVが自動車市場の主役となる日は近いだろうが、それは決してエコカー的なものばかりではない。世界を見渡せば、スポーツ走行に“全振り”したいわゆるハイパーEVの開発に尽力するメーカーも少なくないからだ。

今回紹介するのは、そんなハイパーEV市場の最新最強モデル。中国のスマートフォンメーカーであるXiaomi(シャオミ)が開発した、SU7のハイパフォーマンスグレード「Ultra(ウルトラ)」だ。

動力源は独自のトライモーター式を採用。最高回転数2万7200rpmを誇るV8sをリヤ側に2つ、さらに最高回転数2万1000rpmのV6sをフロントにひとつ搭載することで、最高出力1548ps/最大トルク180.5kgmという尋常ならざるパワーを引き出している。

動力性能も凄まじく、0-100km/h加速1.97秒、0-300km/h加速15.07秒、最高速度350km/h…と、1000ps級のフルチューンGT-Rと同等以上のパフォーマンスを秘めているのだ。

また、EVのスポーツ走行において重要なバッテリー性能については、CATL製の第二世代Qilinバッテリーを世界初採用。これは、最大放電レート16C/最大放電電力1330kWを実現する最もパワフルな量産バッテリーパックだ。

超急速充電にも対応し、10%から80%までのチャージに要する時間はわずか11分。そして航続距離は630キロと、日常シーンでもストレスのないEV生活を楽しめるスペックが与えられている。

熱対策も完璧で、400Wのツイン冷却ファンや高出力ウォーターポンプ、そして28kWのパワーを有するパワートレイン冷却システムを合わせることによって熱ダレを抑制。ニュルブルクリンクのノルトシュライフェを、2ラップ全開でアタックできるクーリング性能を手にしている。

ブレーキシステムは、標準のSU7に搭載されているブレンボ製とは異なり、日本のアケボノ製を導入。フロント6ポット+430mmカーボンセラミックローター、リヤ4ポット+410mmカーボンセラミックローターという構成だ。


エクステリアは、市販モデルの「SU7 Max」をベースに、スペシャルなエアロボディキットを追加。ちなみに、リヤのアンダーディフューザーは速度に応じて角度が変わる自動可変式(任意に調整することも可能)を採用する。ボディサイズは全長5115mm×全幅1970mm×全高1465mm、ホイールベースは3000mmとなる。

フロントのエンブレムは何と24金製。理解に苦しむが、何かしらの対策を施さないと盗まれてしまう気がする…。

このハイパーEVの戦闘力を探るために、WEB OPTIONはインプレッションドライバーとして”スモーキー永田”を起用。世界最高速度違反保持者は、世界最高クラスの戦闘力を誇る電気自動車をどう評価するのか!?
スモーキー永田’s 全開インプレッション
「速すぎる…これまで体感したことがない加速フィーリングだよ!」
EVは日産のサクラに乗ったくらいで、スポーツタイプはこれが初体験。そもそも、このSU7ウルトラって中国国内でのデリバリーがスタートしたばかりで、まだ一般には出回ってないそうなんだ。そんな貴重なクルマに試乗できる機会を設けてくれた“MR.HIRO CAR STUDIO(ミスターヒロ)”には本当に感謝だね。

まず驚いたのがキー。カードタイプでBピラーにかざすだけで開くんだもん! 電化製品みたいで、ちょっとショックを受けちゃったよ…。

室内はシンプル&クリーンな印象。物理スイッチは最小限で、タッチパネル式のモニターで全てを操作する仕組みだ。EVだからエンジン音はないんだけど、往年のスポーツカー好きを満足させるためなのか、SU7ウルトラには擬似的に20種類くらいのエンジンサウンドを出すことができる音響システムが搭載されているんだ。V10や直6など色々変えてみたけど、どれもリアルだったよ。


シートは専用のカーボンバケットタイプなんだけど、実はこのシート、速度やGに応じてホールド性が変化する電動調整式だった。知らなかったからビックリしたよ(笑) イージードライブとスポーツ走行を両立させるための策としては最良だと思うけど、1500psという最高出力を前提にするならちょっと不安。重そうだし、フルバケに変えたいな。

デザインは好き嫌いがあるだろうけど、ポルシェに寄せすぎかなぁ。どうせだったら、第二世代GT-Rやセブンみたいな90年代の日本車に近づければ良いのに…。

で、肝心の走りに関してだけど、冗談抜きで“ヤバイ”の一言。加速Gがとんでもなくて、まるでジェット機。間違いなく1000psオーバーのR35GT-Rよりも速いよ。250km/h(試乗コースの限界速度)まで一瞬で加速するし、踏み続けたら余裕で320km/hを超えたと思う。

ボディや足回りも想像以上にしっかりしていた。路面のトレース能力が高いって表現が正しいのか、R35GT-Rのようにヘビーな重量を上手くグリップに変換しているなって感じ。ブレーキはカーボンセラミック特有のクセこそあるけど、剛性感のあるタッチは好きだね。

価格は日本円で1500〜1600万円くらいらしいんだけど、めちゃくちゃ安いと思う。中国製のEVって聞くと身構えちゃう人が多いと思うけど、乗ったらそんな考えはブッ飛ぶよはずだよ。とにかく強烈に速いから。
なんだか、時代が大きく変わってきているなぁ。ちょっと寂しい気持ちもあるけど、僕はこれからも内燃機関の可能性に挑んでいくつもり。このハイパーEVに負けないチューニングカーを作らなきゃね!

