背景

アルプスアルパインでは、次世代技術開発のため生産・評価設備の拡充が積極的に進められている。今回、その一環として竣工したのが EMC テストラボ新棟だ。自動車には、カーナビやエンジン、EV のモーターなど、電磁波を発する電子機器が数多く搭載されている。これらは車内外の電子機器と電磁波による干渉を起こし、誤作動を招くことで、重大な事故につながるリスクもある。こうしたリスクを排除し、自動車の安全性を確保するうえで、EMC試験は不可欠な評価プロセスの一つとなっている。

車載製品の開発を担ういわき開発センターでは 30年以上前からEMC試験の設備を備えていた。しかし、V2X※2技術の急速な進化に伴い、試験に求められる周波数帯は従来の2GHzから10GHz程度へと約5倍に拡大。それにより試験項目、設備、工数が増加し、従来の設備では数と質の面において将来的な対応に限界が見え始めていた。今回、EMC テストラボ新棟を設立することにより、今後の高度化する評価基準にも柔軟に対応できる環境が構築された。特にサウンドシステムやディスプレイ、インフォテイメント製品など、デジタルキャビンにつながる製品の評価が中心に行われ、次世代モビリティに向けた技術発展に貢献する。

特長

  1. 大型車載製品の評価に対応する EMC 試験室
    運転席前面の各種メーターやエアコンスイッチ、オーディオなどの一体化が進んでおり、それに伴いアルプスアルパインが扱う製品は大型化している。テストラボ新棟では、ピラーto ピラーディスプレイ※3 などの大型製品の評価も可能な電波暗室が新たに4基設置される。
  2. 環境にも人にも配慮した設計
    最新の空調設備を導入し、建屋には太陽光パネル設置を想定した省エネ設計。採光性にも優れ働く人々にとっても快適な空間が提供される。
  3. 災害に強い構造設計
    東日本大震災の経験を踏まえ、あらゆる自然災害に耐えうる強度設計が採用された。
左:車載用電波暗室、右:3m 電波暗室

【注釈】

※1 電磁適合性試験。電子機器が周囲に不要な電磁ノイズを出さず、また他の機器からの電磁ノイズ
にも影響されないことを確認する試験。
※2 Vehicle to X。自動車とあらゆるものをつなぐ技術。
※3 車のフロントガラスの両端にある柱から柱までを繋ぐ大型ディスプレイ