国産直6の時代:1G、1JZ、2ZJ、L、RB……

マツダが直列6気筒エンジン(ガソリンとディーゼル)を開発したことで、俄然注目を浴びている「直列6気筒」という気筒配置。「完全バランスエンジン」ということで、かつては高級車に採用されていた直6エンジンだが、衝突安全規制の強化、FF車の台頭などの要因で、徐々に廃れてV6へと切り替わっていった。

直列6気筒エンジンが優れている理由 メルセデスが直6を復活させたワケ BMWがこだわる根拠

振動特性に優れる直列6気筒。しかしレスシリンダー化と衝突安全対策の観点などから、ひとり気を吐くBMWを除き自動車用としてはもはや絶滅危惧種──と思われるなか、ダイムラーが直6エンジンを復活させてきた。あらためて、このエンジンの特徴とねらいを考えてみる。 TEXT:三浦祥兒(MIURA Shoji)

https://motor-fan.jp/tech/article/1802/

1980~2000年代までは
トヨタには
1G型2.0ℓ直列6気筒エンジン
1JZ型(2.5ℓ)/2JZ型(3.0ℓ)直列6気筒エンジンが
日産には
L型(2.0~2.8ℓ)直列6気筒エンジン
RB26型(2.6ℓ)直列6気筒エンジン
が存在した。
ここではA80型スープラが搭載していた2JZ-GTE型とR33スカイラインGT-Rが搭載していたRB25DETT型を取り上げてみよう。

A80型トヨタ・スープラ
RB26型を最初に搭載したR32型スカイラインGT-R

当時、国内には「280ps自主規制」という取り決め(法規制ではない)があったため、最高出力は280psで打ち止めだった。

2JZ-GTE型3.0ℓ直列6気筒ターボ

A80型トヨタ・スープラRZが搭載していた2JZ-GTE型のスペックは
型式:2JZ-GTE型3.0ℓ直列6気筒ターボ
排気量:2997cc
ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm
圧縮比:8.5
燃料供給:PFI(ポート噴射)
最高出力:280ps/5600rpm
最大トルク:451Nm/3600prm

というものだった。ボア×ストロークは86.0mm×86.0mmでスクエア。3気筒毎に1基のターボチャージャーを装備する「2ウェイツインターボ」で、低回転域ではひとつのターボチャージャーで過給し、中高回転域ではもうひとつのターボを使って過給するシステムだ。

RB26DETT型2.6ℓ直列6気筒ターボ

では、1989年デビューの日産スカイラインGT-Rに搭載されていた、これまた名機の誉れ高いRB26型エンジンはどうだろう。ほぼ最終形といっていいR34型 Mスペック(2001年)のスペックは

型式:RB26DETT型2.6ℓ直列6気筒ターボ
排気量:2568cc
ボア×ストローク:86.0mm×73.7mm
圧縮比:8.5
燃料供給:PFI(ポート噴射)
最高出力:280ps/5600rpm
最大トルク:392Nm/4400prm

エンジンブロックは鋳鉄、シリンダーヘッドはアルミ合金製だ。燃料はもちろんハイオクだ。ターボはやはり1-3番、4-6番気筒にそれぞれ付くツインターボ。R34型は軸受がボールベアリング式になっている。S/B比は0.86のショートストローク型だ。

さて、この2基の名エンジンをエンジンの排気量によさずトルク特性を横並びで評価するための指標であるBMEP(Brake Mean Effective Pressure)で見ていくとこうなる。

2JZ-GTE型:18.91bar
RB25DETT型:19.18bar

である。

最大トルク÷排気量×4π×10で求められ、単位は「bar」である。現代のエンジンではガソリンNAは10-13bar程度、ガソリンターボは18-24bar程度、ディーゼルターボでは、18から30barを超えるものまである。

20世紀のエンジンとしては、BMEP=19bar前後というのは、やはり高出力だったわけだ。

現代の直6は?

B58型3.0ℓ直6ターボ

では、現代のエンジンはどうだろう?
現行GRスープラRZが搭載するB58型3.0ℓ直列6気筒エンジンのスペックは

型式:B58型3.0ℓ直列6気筒ターボ
排気量:2998cc
ボア×ストローク:82.0mm×94.6mm
圧縮比:11.0
燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射)
最高出力:387ps/5800rpm
最大トルク:500Nm/1800-5000prm

現代のエンジンだからオールアルミ合金製。ターボはツインスクロール1基。S/B比は1.15のロングストロークのエンジンだ。圧縮比が11.0と高く設定できているのは、現代のターボエンジンの定番である直噴(DI)だから。BMEP=20.96barである。

このB58型が特段ハイパワーというわけでもない。
メルセデス・ベンツ M256型3.0ℓ直6ターボ:BMEP=21.79bar(435ps/520Nm)
ジャガーIngenium直6ターボ+電動スーパーチャージャー:BMEP:23.07bar(400ps/550Nm)

である。

メルセデスぼの3.0ℓ直6ガソリンターボのM256型
マツダと並んで最新直6エンジンとなるステランティスのHurricaneツインターボ ハイパワー版(HO)は最大トルク644NmでBMEPは27.04barにも達する。
時代は再び直6へ! マツダに続いてステランティスも直列6気筒「ハリケーン・ツインターボ」登場[内燃機関超基礎講座]

ステランティス(グループPSAとフィアット・クライスラー・オートモービルズが折半出資で合併して誕生した多国籍自動車メーカー)が直列6気筒ターボエンジンを開発する。ガソリンの直6エンジンは、BMW、ダイムラー、ジャガーランドローバー、マツダに続いての新開発直6エンジンとなる。

https://motor-fan.jp/tech/article/18911/

この20年間でエンジン技術は格段に進歩した。ダウンサイジング過給というトレンドがあり、ライトサイジングという揺れ戻しがあった。直噴技術も大きく進化している。B58型でいえば、最大過給圧は35MPa(350bar)にも達している。ターボチャージャーの進化も著しい。

出力もトルクも燃費もエミッションもすべて別世界になった現代の直6ターボ。V12や大排気量V8自然吸気エンジンが生き残りにくい時代、3.0ℓ直6ターボエンジンが、現代の内燃機関の頂点なのかもしれない。

次に姿を見せるのは、マツダの3.0ℓ直6SKYACTIV-Xと直6ターボ。どんなエンジンになるのか?