ランクル70の後席はコンパクトカー以下! ただし荷室の使い勝手はランクル250より有利か?

室内空間は圧倒的にランクル250の方が広い。後席の頭上空間は同じくらいだが、ランクル70の後席膝周りは一般的なコンパクトカーと比べても狭く、快適とは言い難い。

荷室空間に関しては、ランクル70が奥行き1035mm×幅mm1435×高さ970mmで、後席をタンブルさせたときの荷室最大床面長は1565mmとなる。対するランクル250は、奥行き1095mm×幅1130mm×高さ815mmで最大長は1625mmだ。両車のボディサイズは同じくらいだが、ランクル70の基本設計は40年前から変わっておらず、室内空間の広さは明らかにランクル250が勝る。

ただしランクル70は荷室の使い勝手に優れる。ランクル70は荷室のホイールハウスの張り出しが小さいため荷室最大幅の1555mmを目一杯使える利点がある。また、リアハッチはランクル250が一般的な上下開きであるのに対し、ランクル70のリアハッチは左右非対称の観音開きドアだ。ランクル250はリアハッチのガラス部分だけを開閉できるが、日常用途で荷室を使いやすいのはランクル70の方となるだろう。

ただしランクル70の内張りは簡素であり、遮音性は期待できないため車内に入り込むロードノイズも大きい。内外装の質感も以前のランクル70よりは向上しているものの、ランクル250とでは比べるまでもない。ランクル70は、あくまで悪路の移動と運搬に特化したモデルであり、後席はオマケと考えるべきだ。

トヨタ ランドクルーザー70 AX
ボディサイズ=全長4890mm×全幅1870mm×全高1920mm
ホイールベース=2730mm
車両重量=2300kg
タイヤサイズ=265/70R16(前後)

トヨタ ランドクルーザー250 GX
ボディサイズ=全長4925mm×全幅1940mm×全高1940mm
ホイールベース=2850mm
車両重量=2320kg
タイヤサイズ=245/70R18(前後)

卓越した悪路走破性能がランクル70の「ヘビーデューティ」たる所以

どちらも同型の2.8L4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載しており、スペックにも差はない。ただしランクル70は6速AT、ランクル250には8速ATが組み合わされる。それもあってWLTCモード平均燃費はランクル70が10.1km/L(AXグレード)、ランクル250(GXグレード)が11.0km/Lと、燃費性能にはわずかな差が付いている。

ランクル70に6速ATが搭載されたのは、おそらく過酷な環境下での耐久性を考慮した結果だろう。ランクル70はトランスミッションだけでなく、細かな箇所までより強靭な設計となっており、とくにサスペンションと駆動系がランクル250とは大きく異なる。

ランクル250のリアサスペンションは、悪路走行性能で定評あるリジッドアクスル式だが、フロントはオンロードでの乗り心地や操作性のために独立懸架式となっている。対する70は前後リジッドアクスルであり、リアサスペンションは一般的なコイルバネではなく、トラックのような板バネだ。

フルタイム4WDのランクル250に対し、ランクル70は堅牢なパートタイム4WDであり、前後にデフロックが備わるうえ前輪には動力伝達を切り離せるロッキングハブも備わる。さらにランクル70は珍しい存在になりつつある油圧パワーステアリングだ。ステアリングギア比はオフロード走行向けにスローな設定となっており、同じ舵角を得るためのハンドル操作量も多く、一般的な乗用車から乗り換えると操舵に違和感を覚えるはずだ。

トヨタ ランドクルーザー70 AX
エンジン形式=直列4気筒ディーゼルターボエンジン
排気量=2754cc
最高出力=204ps/3000-3400rpm
最大トルク=500Nm/1600-2800rpm
トランスミッション=6速AT
駆動方式=パートタイム4WD

トヨタ ランドクルーザー250 GX
エンジン形式=直列4気筒ディーゼルターボエンジン
排気量=2754cc
最高出力=204ps/3000-3400rpm
最大トルク=500Nm/1600-2800rpm
トランスミッション=8速AT
駆動方式=4WD

ランクル70は悪路の移動と運搬に特化したSUV!日常的に使うなら覚悟が必要

ランクル70は「AX」のワングレードであり、価格は480万円となる。ランクル250の最廉価グレード「GX」の価格は520万円だ。値段は同じくらいだが、ランクル70にはデフロックなどのオフロード装備が標準で備わるのに対し、ランクル250の下位グレードはオプションでも選べない。

「GX」をはじめとするランクル250の下位グレードは、日常で想定されうる悪路走行性能は備えているが、より過酷な道の走行やオフロード競技などの用途には適さない。そのためランクル250は「ライトデューティ」モデルに位置づけられる。

一方のランクル70は、快適性を犠牲にして悪路走行に特化させた「ヘビーデューティ」モデルであり、以前のモデルに比べて日常的な快適性は増しているが、依然として乗用に適したクルマではない。

ランクル70にアダプティブクルーズコントロールは備わらず、エアコンはマニュアルでスマートキーですらない。自動ブレーキなどの先進安全機能は備わるが車内機能や雰囲気はレトロどころか、ほぼ昭和時代のクルマそのものとなる。

オフロード走行が目的なら間違いなくランクル70は買い得だが、「レトロデザインのSUV」といった雰囲気だけで購入すると後悔しかねない。日常利用が主体ならランクル250の方が絶対的に快適だ。

車両本体価格