後席の広さはアルトが上、快適性と荷室の使い勝手はN-ONEに軍配

全高はN-ONEの方が20mmほど高いが、室内高はアルトの方が65mmも広く確保されており、後席空間は膝周り/頭上空間ともにアルトの方がわずかに余裕がある。しかしN-ONEは、後席中央床面には邪魔なセンタートンネルがないためアルトに比べて足元の開放感は高い。

それ以上に大きな違いはリアシートの作りだ。アルトの後席背もたれは左右一体式であり、スライドもリクライニング機構も備わらない。N-ONEにもスライド機構は備わらないが背もたれは左右独立しており、調整幅は少ないもののリクライニング機構も備わっている。後席の快適性が高いのはN-ONEの方だ。

荷室寸法はアルトが奥行き425mm×幅905mm×高さ710mmで、後席格納時の最大荷室長は1225mm。N-ONEは520mm×880mm×880mmで最大荷室長1350mmとなる。

左右の後席背もたれを独立格納できるN-ONEは、大きめの荷物を積載しながらでも3名乗車ができるほか、チップアップ機構も備わっているため後席座面を引き起こしてベビーカーを縦積みすることも可能だ。後席の広さではアルトに劣るものの、車内の快適性や使い勝手はN-ONEが圧倒的に勝る。

スズキ アルト HYBRID X
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1525mm
ホイールベース=2460mm
車両重量=710kg
タイヤサイズ=155/65R14(前後)

ホンダ N-ONE Original
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1545mm
ホイールベース=2520mm
車両重量=840kg
タイヤサイズ=155/65R14(前後)

燃費性能と加速性能はアルトが優れる

N-ONEの自然吸気エンジンは、可変バルブタイミング機構のほかバルブリフト機構も組み込まれた「i-VTEC」が搭載されており、アルトよりも低回転でより大きなトルクを発揮できる。

一方、アルトのハイブリッドグレードには最高出力2.6ps/最大トルク40Nmのモーターで加速を補うマイルドハイブリッドシステムが搭載されている点が強みであり、発進や加速時にはN-ONE以上の加速性能を発揮する。ただし、継続的に加速が続くシーンではエンジン出力が高いN-ONEの方が力強い加速の伸びを感じられるだろう。

マイルドハイブリッドシステムは燃費にも大きく影響する。両車のWLTCモード平均燃費はアルトが28.2km/L(HYBRID X)、N-ONEが23.0km/L(Original)と大きな差がある。また、非ハイブリッドモデルの燃費性能もN-ONEより上となる25.8km/L(L)だ。

しかし、車内の静粛性やボディの剛性感はN-ONEの方が高く、荒れた路面における車体の振る舞いもN-ONEが優れる。現行型となってアルトは乗り心地も飛躍的に向上したが、走りの上質感はN-ONEの方が上だ。ただしN-ONEは高速走行での安定性を高めているぶん、街乗りなど低速走行時はアルトより硬い乗り心地に感じられるかもしれない。

スズキ アルト HYBRID X
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=657cc
最高出力=49ps/6500rpm
最大トルク=58Nm/5000rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)

ホンダ N-ONE Original
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン
排気量=658cc
最高出力=58ps/7300rpm
最大トルク=65Nm/4800rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)

短距離移動なら安いアルト、長距離移動なら高いN-ONEがおすすめ

アルトの最上級グレード「ハイブリッド X」の価格は151万9100円、N-ONEの最廉価グレード「Original」は173万4700円だ。アルトは改良で各グレードごとに7万円〜9万円ほど値上げされたが、いまだに約21万円の価格差がある。

N-ONEの価格が高い理由は、実際に乗ってみれば納得するだろう。アルトより凝った機構のリアシート周りや、手触りのよいプライムスムースのコンビネーションシートに加え、乗り心地や静粛性も大きく異なる。さらにN-ONEは、アルトの最上級グレードにも備わらないアダプティブクルーズコントロールが全車標準装備だ。

唯一、N-ONEの「Original」は4WDを選ばなければシートヒーターが備わらない難点がある。対するアルトは、ほとんどのグレードで運転席と助手席にシートヒーターが標準装備だ。

さらにアルトは今回の改良で先進安全装備が最新バージョンにアップデートされ、安全性能の差も縮まった。またアルトはこの価格でも、N-ONEと同じくカーテンエアバッグが標準装備となっている。

セカンドカーとしてや、短距離移動のみに使うなら価格が安いアルトがおすすめだ。ファーストカーとして遠出もするならN-ONEを選ぶとよいだろう。両車の価格差は縮んだが、この関係性は変わっていないようだ。

車両本体価格