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自衛隊新戦力図鑑

なぜ今、「自走迫撃砲」なのか?

まず、「迫撃砲」について簡単に解説しておきたい。大きく射程の長い「榴弾砲」を砲兵部隊(特科部隊)が使うのに対して、迫撃砲は歩兵部隊(普通科部隊)に配備されている。射程は短いが、歩兵部隊が自らの判断で使うことができる貴重な支援火力なのだ。

アメリカ海兵隊120mm迫撃砲「M327」の射撃。同じ砲を陸上自衛隊は「120mm迫撃砲RT」の名称で使用している。西側諸国では主に60mm、81mm、120mm口径の迫撃砲を使用している(写真/U.S. Marine Corps)
陸上自衛隊の120mm迫撃砲RT。高機動車によって牽引されている。120mmの砲は重量があるので移動は牽引式だ(写真/陸上自衛隊 水陸機動団Xより)

ロシアによるウクライナ侵攻や、中国の台頭など、近年は大国間戦争の可能性が高まっている。こうした戦争では、敵が高度な防空火力や電子戦能力を持つため、航空支援が使いづらく、地上部隊にとって身近な支援火力である迫撃砲の重要性が見直されている。また、小型飛行ドローンの普及により、敵から発見される危険性も増しており、砲の設置から射撃、そして撤収までを迅速に実行できる「自走迫撃砲」が特に注目されている。

陸上自衛隊が昨年導入した「24式機動120mm迫撃砲」。120mm迫撃砲RTと同系統の砲を車体後部に搭載している(写真/筆者)
新型装甲車「24式装輪装甲戦闘車」「24式機動120mm迫撃砲」が登場! さらに旧式装備にも再び脚光が? 令和7年度防衛省概算要求が公開

8月30日、防衛省は令和7年度(2025年度)の概算要求の概要を発表した。わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなかで、過去最高となる8兆5000億円に達する規模となった今回の予算案。陸上自衛隊では、以前より開発が進んでいた新型装甲車の制式名称が明らかとなった。 TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki)

https://motor-fan.jp/mf/article/258309

基本的に自走迫撃砲は比較的大型の車両が用いられてきた。発射時の反動を車体のサスペンションで受け止めるためだ。一方で、近年では軽量な4×4車両を使った自走迫撃砲システムも各国で開発されている。今回紹介するシンガポールのSTエンジニアリングが提供する「地上展開型先進迫撃砲システム(GDAMS)」も、そのひとつだ。

既存の車両や砲を組み合わせて自走砲化

STエンジニアリングはGDAMSの模型を、今年5月に幕張で開催された防衛装備展示会「DSEIジャパン」で展示した。GDAMSは、4×4車両の荷台部分に81mm/120mm口径の迫撃砲を搭載するもので、射撃時にはアームにより迫撃砲が自動的に展開して地面に設置される。射撃時の反動を地面が吸収してくれるので、軽量な4×4車両でも搭載可能なのだ。

DSEIジャパンで展示された「GDAMS」の模型。模型ではアメリカ軍の汎用高機動車HMMWV(ハンヴィー)をベースとして、後部に弾薬架と迫撃砲を搭載している(写真/筆者)

STエンジニアリングによれば砲の設置に必要な時間はわずか15秒と極めて短く、ネットワークによる味方部隊との情報共有やデジタル化された射撃統制システムにより、迅速で正確な射撃を可能としている。

射撃時にはアームが展開し、迫撃砲を地面に設置する。また、陸上自衛隊では120mm迫撃砲RTの運用を5名で行っているが、自動化を進めた「GDAMS」は2名でも運用可能だという(写真/STエンジニアリング)

また、GDAMSは「車両と砲を含めた商品」ではなく、既存の車両に、既存の迫撃砲を搭載する「システム」だ。陸上自衛隊であれば「高機動車に120mm迫撃砲RTを搭載することができる」とメーカーは説明している。これにより大型の専用車両を新規に調達するよりも安価で自走迫撃砲を導入することができるメリットがある。

冒頭でも述べたように、迫撃砲の射程は短いため、最前線の近くで、最前線の部隊と密接に連携して戦うことになる。そのため、より射程の長い榴弾砲よりも、柔軟性や迅速さが特に必要とされる。GDAMSのような簡易な自走迫撃砲システムの有効性は、ますます高まっていると言えるだろう。

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