話題の軽商用車「ホンダN-VAN e:」がベースのルートシックス・シーク e:

優れた室内ユーティリティを確保しているモデルのひとつと言えば、ホンダ「N-VAN」。運転席付近を除く室内ほぼ全域の床がフラットになることで、多様な用途を可能にしているクルマだ。

だが、この「運転席付近を除く」というのが問題。運転席後方の床面はさほど長くなく、結局フラットな空間で寝られるのは大人1人。「キャリイ」や「アトレー」「ハイゼットバン」に比べると、車中泊という点ではあまり使い勝手のいいクルマと言えない。

そんな弱点を解決したキャンパーのひとつが、ルートシックスの「シーク」だ。シークはまず、運転席の回転機構を付けた上で、シートを倒した空間にベッドマットを展開。これで大人2名の就寝を可能にしたのである。さらに車内後部にホワイトウッド調の家具をインストールして、収納とテーブルの機能を付加している。

ホンダN-VANをベースにしたルートシックス・シーク。

加えて運転席の回転機構は、軽バン クラスでは異例の広さの対面型ダイネットをも可能にしたのだ。ちなみにテーブルは、車両の後部のレールに接続することで、車外でキャンプテーブルとして使うこともできる。

快適性を強化するオプションも設定されており、その筆頭がポップアップルーフだ。180×105cmの就寝空間を確保できるポップアップルーフの装着によって、全4名での車中泊ができるようになるのだ。

昨今の夏の暑さに対策できるオプションも万全だ。12Vクーラー+リチウムイオンバッテリーのインストールメニューが用意されているので、熱帯夜でも安心して寝ることができる。

シークに設定されている12Vクーラー。

東京都在住なら107万4000円、住宅設備の要件が整えば最大147万円の補助金

そんなシークに今回追加されたのが、N-VAN e:をベースにしたモデルだ。基本的な車内レイアウトや装備はN-VANベースのシークと一緒。それでいて、EVならではのメリットがいくつかある。

東京キャンピングカーショー2025で初お披露目された、N-VAN e:がベースのシーク e:。

我々ユーザーに最も大きなのが、国や行政からの助成金だ。例えば、東京都に在住の場合は国と都の助成金交付が107万4000円(令和7年7月現在)あるので、シーク e:のプライスである425万2600円からこの金額が差し引かれることになる。つまり300万円台で軽キャンが買えてしまうのだ。

加えて、EVは給電設備を持っているため、そのアウトプットターミナルから車中泊で使う電力を供給してもらうことができる。さらにポータブル電源を使えば、かなり強力な給電システムを持つことになるのだ。

1回の充電で245kmの走行が可能なN-VAN e:。AC外部給電器を普通充電ポートに差し込むと、AC100V電源を取り出すことができるのもアウトドアでは便利だ。
シークと同様、シーク e:も運転席の回転機構付き。ベッドモードにすると、助手席側210cm、運転席側180cmのスペースが確保できる。
EVになってもフロア高は低いまま。ガソリン車同様の多彩なレイアウトが可能となっている。

ただし、シーク e:には望めない装備が出てくるのも知ってほしい。それは12Vクーラー+リチウムイオンバッテリーとポップアップルーフの追加だ。これらを装備してしまうと重量がオーバーするため、構造変更を要することになる。仮に構造変更をしてしまうと、助成金の要件に触れてしまうため、107万4000円がもらえなくなってしまうのである。

パーキングクーラーが付けられないことをどうジャッジするかだが、「どうせ真夏は車中泊しないよ」という人や、エコフローなどのパーキングクーラーを買うからと割り切れるユーザーなら、シーク e:のメリットはかなり大きいはず。

天井の内部には5層の断熱加工が施されている。またLEDダウンライトも6個備わる。

107万4000円もあれば、かなり性能のいいポータブルクーラーが買えるはずだ。それにEVなので、クルマのインバーターエアコンを活用するという手もある。エンジンを稼働させないEVなら、道の駅などの施設でも他車に迷惑をかけることがない。

一充電の航続距離が245kmというN-VAN e:は、途中の充電は必要としても、レジャーユースに十分に使えるEVだ。また家に給電施設やソーラーパネルなどを付ければ、災害時のシェルターとして備えておくこともできる。ちなみに住宅設備の要件が整えば、最大147万円の助成金を受けることも可能だ。

世間ではイマイチ広がりを見せないEVだが、実は車中泊との親和性が高い。燃費を気にすることなく自由に旅できるという点でも、ぜひ注目したいキャンパーだ。