カローラとともに歴史を積み重ねてきた

ご存じの方も多いかと思うが、カローラクロスの生産は2025年5月よりトヨタ自動車東日本の岩手工場にて行なわれている。その岩手工場の敷地内にて、去る7月27日にカローラのオーナーズイベントである「COROLLA OFF-LINE MEETING 2025」が開催された。

会場に集まったのは約3倍の倍率の抽選を経て招待された約50組のカローラオーナーで、AE86レビンからカローラクロス、そしてGRカローラまでさまざまな世代のカローラが一堂に会した。

トヨタ自動車東日本は、関東自動車工業とセントラル自動車とトヨタ自動車東北の3社が2012年7月にひとつになって設立されたもので、東日本大震災の「一過性ではない復興」のために永続的に雇用を生み出し、東北の未来を創っていくことを大きな目的のひとつとしている。

前身である関東自動車工業の時代を含めれば、1960年代よりカローラの生産に携わっており、まさにカローラとともに歴史を積み重ねてきた存在と言えよう。

トヨタ自動車東日本の岩手工場。2025年5月より、カローラクロス(すべての日本市場向け車両と、海外市場向けの一部)の生産を行なっている。アクア、ヤリス、ヤリスクロス、レクサスLBXの生産も担っている。

会場には最新のカローラシリーズが並べられたメインステージのほか、ラジオ番組のスタジオ風ブースも設けられ、カローラの開発者を招いてのトークセッションが行なわれたり、その合間に音楽が流されたりと、ただ座って聞いているだけでも楽しめる構成だ。そしてカローラクロスの試乗ができるクローズドのコースも用意されていた。

開会式に登壇した岩手県の達増拓也知事。「トヨタ自動車東日本さんには、東日本大震災の復興に多大な支援をいただきました。世界に誇るカローラシリーズを岩手県で生産していることは大変光栄です」
開会の挨拶を述べたトヨタ自動車東日本の石川洋之社長。「我々はずっとカローラに携わってきました。そして今ここにいらっしゃるみなさまはカローラの育ての親であり、東北はカローラの故郷なのです」
ラジオ局風のブースでは会場内に向けて音楽を流したり、随時ナレーションを入れたり、開発者を招いてのトークショーを行なっている。会場を盛り上げ、参加者を飽きさせない、なかなか気の利いた演出だ。

若きカローラ・オーナーが多い!

そして会場の大部分を占めるオーナー用の駐車場には、招待された約50台のカローラがずらりと並べられている。特徴的だと感じたのは、どちらかと言えば新しい年代のモデルが多いということ。カローラスポーツ、GRカローラ、そしてカローラクロスの姿が目立つのだ。こういった単一モデルを対象としたオーナーズイベントではビンテージ系が幅を利かせることが多いが……。

会場にはAE86レビンや東京オリンピックのサポートカーといったレアな車両の姿もあり、来場者の視線を集めていた。

しかし取材を進めていくうちに合点がいった。参加者がとにかく若い人ばかりなのだ。で、主催者に問い合わせてみて驚いた。申し込みの時点での集計になるが、参加者のなんと47%が20代だというのだ! そして30代が19%、40代も同じく19%で、50代と60代はそれぞれ8%ずつしかいない。クルマ系のイベントとなると、40~60歳くらいの中高年世代が大はしゃぎするのが昨今の常なのに……。

会場で話を聞いた若者のひとりは「東北の人間なのでカローラクロスには親近感がありますし、フツーにかっこいいですから」と、地元愛とカローラクロスのデザインの魅力が絶妙に交錯して購入に至ったとのこと。ほかにも「次はGRカローラかGRヤリスが欲しいです」という前途有望な若人や、極め付けは「カローラセダンが最高です」と、昨今のSUVブームのなかで育ったおかげで一周回ってセダン好きになってしまった20代の青年もいた。

岩手工場の常設施設である結ギャラリーには、初代カローラの姿が!
結ギャラリー内に設けられた特設展示。カローラクロスの車体のあちこちに仕込まれた24個の「隠れロゴ」をすべて紹介している。なんともユルい企画だなぁなどと思いつつも、気がつけば筆者も夢中になって見入っていた……。
会場にはカローラシリーズのチーフエンジニアである福島徹さんの姿もあった。「私自身、子どもの頃に親がカローラに乗っていたので、このクルマには強い思い入れがあります。それだけにこうして若いオーナーやヤングファミリーのみなさんがカローラと触れ合っているのを見ると、かつての自分と重なって感慨深いですし、そんなお客さまのためにもっと頑張ろうという気持ちになりますね」

カローラと言えば泣く子も黙るグローバルカーだ。バイリンガルどころか数10カ国語を操り世界を飛び回るビジネスエリートであり、世界各地に生産拠点をもつことからも、どこか国籍不明というか、もはや国籍などという概念が意味をなさないような雰囲気も漂わせている。でも、そんな世界的な活躍も、生まれ故郷の支えがあってこそのものであるということを、東北のカローラファンの存在は示している。

それと同時に、60年もの伝統を誇る歴史的モデルであるカローラが、この令和の時代においても若者の心をしっかり掴んでいるということにトヨタの底力を感じないわけにはいかないのである。

参加者とトヨタの関係者が最新のカローラシリーズの前で集合写真。とにかく若い参加者が多いことがわかるだろう。