マツダ CX-30の悩ましいエンジン選び


2019年に発売されたマツダ CX-30は、機械式立体駐車場に収まる全高に抑えつつ、マツダらしい美しいデザインと上質感を備えたコンパクトSUVだ。
プラットフォームは同社のCX-3と共通だが、ボディサイズはCX-30の方がやや大きい全長4395mm×全幅1795mm×全高1540mmであり、それを活かした伸びやかなエクステリアデザインと広い荷室空間、そしてモダンなインテリアデザインがCX-30の特徴となる。
CX-30の購入を検討する多くの人が直面する問題がエンジン選びだ。ガソリンモデルとディーゼルモデルでは基本的な外観や装備に大きな差はない。しかし、エンジンが異なることで、価格はもちろんクルマの用途までが変わってくる。
またガソリンモデルとディーゼルモデルでは用意されるグレードにも違いがあり、快適装備にも差が生じる。購入してから後悔しないためには、まずCX-30に搭載されるエンジンの特徴を知ることが大切だ。
加速性能とランニングコストに優れるのはディーゼルエンジン

CX-30に搭載されるエンジンは、マイルドハイブリッドシステムを搭載した排気量2.0Lガソリンエンジンの「e-SKYACTIV G 2.0」と、排気量1.8Lディーゼルターボエンジンの「SKYACTIV-D 1.8」の2種であり、トランスミッションはどちらも6速ATだ。
それぞれのエンジンスペックは、ガソリンエンジンが最高出力154psで、4000rpm時の最大トルクが199Nm。ディーゼルエンジンは最高出力は130psとやや低いものの、270Nmもの最大トルクを1600〜2600rpmの低回転で発揮する。
一般的にガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンに対して静粛性とアクセルレスポンスに優れている。一方、軽油を高圧縮燃焼させるディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも振動は大きいが、同等排気量のガソリンエンジンよりも大きなトルクを発揮できるため加速性能に優れる。この基本特性はCX-30も例に漏れない。
ただしCX-30のガソリンモデルでは、最大トルク49Nmのモーターアシストが介入するため、発進加速はディーゼルと同等とまではいかずとも十分力強く、回転上昇も滑らかだ。
その一方で燃費性能はディーゼルの方が優れる。FFモデル同士のWLTCモード平均燃費を比較するとガソリンが16.2km/Lでディーゼルが19.5km/Lとなり、市街地/郊外/高速走行燃費のいずれもガソリンを大きく上回る。しかもディーゼルはガソリンよりも燃料単価が安い軽油だ。
都市部で使うならガソリン、郊外や高速道路の移動が多いならディーゼル




ランニングコストに優れるのは明らかにディーゼルエンジンの方となる。
しかし、CX-30に限らずマツダのディーゼルエンジンは、短距離走行ばかりを繰り返すとエンジン吸気経路に「煤」が溜まりやすく、短距離の通勤や近所への買い物などにしか使わない乗り方だと特にエンジンの調子を崩しやすい。そのため、短距離走行が中心になりがちな都市部で使うことが多いならガソリンモデルが適している。
また、価格の安さもガソリンエンジンの利点だ。ガソリンモデルの価格は266万2000円〜341万円であるのに対し、ディーゼルモデルは303万4900円〜368万5000円とやや高めの価格設定となっている。
それに加え、ガソリンモデルにのみ用意されている最廉価グレード「20s iセレクション」は、10.25インチディスプレイや運転席パワーシート、シートヒーターなどが標準装備となっているうえ、同等の快適装備となるディーゼルモデルの中間グレード「XDブラックセレクション」と比べて約60万円も安い。外観装飾や安全装備にこだわりがなければガソリンモデルの「20s iセレクション」がおすすめだ。
マツダのディーゼルエンジンは確かに優れた性能を備えているが、「煤」の堆積問題から一度エンジンを始動したらエンジンが温まり切るまで長時間走行を続けられる環境が望ましい。郊外道路や高速道路を多用する使い方なら、ディーゼルエンジンのメリットを最大限に享受できるだろう。