暑すぎる夏、エアコンにより電費は7掛け以下に悪化した

2025年の夏は本当に暑かった。群馬県伊勢崎市で観測史上の最高気温41.8度を記録したニュースは本当にインパクトがあったし、数字以上に熱気を感じることも多かった。気温と地球温暖化が直接的に関係しているとはいえないが、それでも地球温暖化や気候変動といった社会課題を真剣に捉えるようになった人が増えたのではないだろうか。
この暑さはEVの航続距離にも悪影響を及ぼした。
EVの空調による消費電力増でいえば、暖房によるネガが取り沙汰されることが多い。たしかにヒーターを使うと、みるみる電力が減っていく。その点はEVのウィークポイントとして認識されているだろう。しかし、暖房についてはシートヒーターの活用や、暖かい服装を選ぶといった工夫で対応できる面もある。
しかし、暑さに対してはエアコンをガンガンにかける他に対策がないのも事実。つまり、気温が上がるほどエアコンによる消費電力は増えてしまう。過去に、初代リーフに乗っていた筆者の経験則としては、シートヒーターで凌いだ冬季と、エアコンをガンガンに使った夏季の平均的な電費は、いずれも7掛け程度に悪化するという認識だ。
しかし、2025年の夏は想定以上に暑かった。
結論からいえば、フィアット500eの電費はエアコンを使わない春季(3~5月)に比べて、4割~5割減へと大きく悪化した印象を受けた。
具体的には、4月頃には区間電費で11km/kWhといった数字を見ることも日常的だったが、8月になってエアコンを常時フル活用すると、短距離の街乗りでは電費が5km/kWhを切ることもあるほど。高速道路を走るようなシチュエーションでも6掛け程度まで悪化するイメージだった。
外気温計が40度を超えるような猛暑の日には、モータールームから盛大な冷却ファンのノイズが響くほどで、欧州コンパクトカーらしい騒々しさに苦笑したこともあった。


8月のある日、エアコン・オン/オフで電費を比較すると…。
もっとも、区間の電費は想像以上に悪化しても、航続距離の表示については15%減くらいだった。100%充電時の航続可能距離が300kmから250kmに減るといったイメージで、均すとそれほど電費は悪化していなかったのかもしれない。
そこで、8月のとある日に取材先へ向かう際に、往路はエアコンをオートに任せて、復路はオープン状態にしてエアコン・オフで走ってみることにした。往路と復路では渋滞具合も異なっていた影響もあって、同じルートを走ったわけではなく、比較できるほど条件が揃っていたとは言い難いが、参考までにその電費をお伝えしたい。
往路(エアコン・オン):5.8km/kWh
復路(オープン状態):8.9km/kWh


メーターの右上に表示されているように、走行モードはワンペダルで走る「RANGE」モードを選択。復路は保土ヶ谷バイパスを使ったこともあって、若干遠回りになった。平均速度がかなり異なるなど条件が異なることは承知の上で、エアコンによる電力消費は、電費を7掛け以下に悪化させるという肌感覚通りの数値となった。
余談ながら、外気温が35度以下で、太陽の光がソフトに感じる夕方以降であれば、フィアット500eをフルオープン状態(トップもサイドウインドウも全開)にすると、”順調に走っている”限りは暑さがさほど気にならない。
とくに日が暮れて以降の時間帯はオープンで走るのが快適だった。前後にクルマがいなければ、エンジンのような熱源をもたないEVはムワッとして熱気を感じることもないという発見もあった。
炎天下に駐車しているときも乗り込む前にキャンバストップを全開にすると室内の熱気が一気に抜けて、少しはマシになるのもオープンボディのメリットであると感じたこともあった。
ただし、ブラックのソフトトップは太陽光で熱くなりやすく、まだ断熱効果も通常のメタルルーフに比べれば不利だろうから、オープンボディを選ばなければ、これほどエアコン(冷房)による電費悪化に悩まされることはなかったのかしれないが…。
ところで、冒頭でも触れたように筆者にとってフィアット500eは2台目のEVで、過去に初代リーフに乗っていた。リーフの経験では、10月がEVの電費におけるベストシーズン。すでに、夏場であってもエアコンを使わなければ10km/kWhを超える区間電費をたたき出すフィアット500eが、どこまで電費を伸ばすのか非常に楽しみだ。次回は、EVのベストシーズンになるであろう10月を共に過ごした印象をお伝えしたいと思う。はたして、ベストシーズンのフィアット500eがどんな走りを感じさせてくれるのか、本当に楽しみだ。

